孤児
どたばたして全然話が書けない滝峰つづりです。
明日の投稿も夜になるかと……。申し訳ないです。
「ディーネはどうして魔術師になろうと思ったの?」
僕は空を見上げながら質問してみた。
魔術師は傭兵、ハンター、兵士と並んで死亡率が高いことで有名な仕事だ。
その育成をする学園にすら依頼がくるほど魔術師の需要は極めて高い。こうやって魔術師の学生に依頼を受けさせることで実践経験を積ませることもしばしば。
優秀な成績を残した魔術師は三代先まで贅沢できるほどのお金を得ると謳われるが、魔術師の九割はその道の半ばで死亡する。
そんなシビアな未来しかない魔術師を選んだディーネの理由を少し聞いてみたかったのだ。
「……少年、個人的な質問をするときは自分のことを先に話すのがマナー」
一日中眠たげに垂れていた目が急に、若干だが鋭く僕を射抜く。その瞳に若干気圧されながら僕は口を開いた。
「実はさ、僕が魔術師になりたい理由……ないんだ。だから知りたいし気になる」
「……なんでこの学園に?」
今度はディーネが興味をもったようで、少しばかり目の色が変わった。
「個人的な質問をするときは自分のことを先に話すのがマナーじゃなかったっけ?」
「……少年、何を言っているの? 相手の情報を少しでも多く取り入れ自分の情報は漏れを少なくする。これは教科書にも戦術書にものらない当然のこと」
ころりと掌をかえすディーネにちょっぴり青筋がたったのは秘密。
「別に隠すほどのことでもないし言っても良いけど、そのかわりディーネの魔術師になりたい理由を教えてよね」
「……約束する」
僕が条件を提示するとディーネは快く首をたてに振る。
「どこから話そうか――そうだ! 僕が孤児院で育ったって昔からにしよう」
「……少年は孤児?」
「そう、僕は産まれてすぐから四、五歳までは小さな孤児院で育ったんだよ」
あの日は雨の日だったっけ、あの日の黒いレースのついた日傘のような傘を忘れたことはない。
「……孤児院を出た理由が分からない」
「単に親が出来ただけさ。親が誰かのヒントを出すならディーネもフェイもシロも会ったことはある人」
「……愕然としてる」
「もっと出すと、僕の入学に直接的に関係してる。むしろ理由と言っても差し支えがないよ」
しばらく沈黙があり、考えていることがよくわかる。やがておずおずとディーネが口にした言葉は――
「……――学園長?」
正解だった。
隠すつもりもなかったけど僕はこの学園の長の血の繋がらない息子。そんな風には見えないように学園長と僕、互いが互いに干渉してないから知らなくて当然だけどね。