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落ちこぼれ魔術師  作者: 滝峰 つづり
落ちこぼれ魔術師の旅立ち
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無形魔術師

 はい、なんだかんだでお久しぶりの滝峰つづりです。


 えー……一時迷走しておりました私ですが、またぼちぼち更新をしていきたいと思いますので、新しい読者の皆様も私の別の作品も読んでみて下さい!




 また、この作品はなろう作家の(ばつ)さんの新作と読者数を競っております。

 その辺も踏まえて頑張って行きたいと思っております!


 ではまたいつかノシ

 澄みきった青い空、少し湿った土の臭い、風になびく背の低い草たち。

 近くの森では鳥が鳴き、少し遠くで終業を告げるチャイムが聞こえた。


 僕はこういう落ち着いた場所が好きだ。小さい頃から度々つまらない授業を抜け出して、近くの原っぱや森の木の上などに寝転がりぼーっとする。最近では抜け出す授業が増えてきたかもしれない。


「……次はたしか魔術基礎Ⅱだっけ」


 よし、サボろう。

 目を閉じ、睡眠の準備に入る。


 魔術の座学は嫌いだ。理論とか概念とか延々と聞かされて楽しいはずがない。僕なら蟻の観察する方がまだましだと思うね!


 ――魔術――

 大地の力であるマナを用いて無から有を生み出すことの総称。例えるなら対象を発火させたり風を一ヶ所に集中させることで対象を細切れにするなどの超常的な能力。


 簡単にまとめればこんなものだ。魔術を扱える人も限られるし、能力の伸びもある程度生まれつきで決まってる。力に恵まれた者は大抵偉そうに振る舞うし、力の弱い者、無い者は縮こまってその場をしのぐしかできない。

 これが今の世界の在り方。間違ってると思っても変えることのできない現実だからそこはもう諦めている。


「やっぱりここにいたー」


 いい感じにうとうとしてた僕は、聞きなれた声のせいで薄れかけの意識が戻ってきてしまった。

 仕方なしに体を起こしてあくびを一つ。


「なんというか君もよく堂々と授業サボれるよね。そんなんじゃ評定が悲惨なことになっちゃうよ?」

「いいんだよ、どうせ無理やり入れられた学園だし他人の評価なんて気にしない」


 あくびでできた涙を拭いて声のする方へ顔を向ける。


 そこには白いローブを羽織った少女が立っており、呆れたようにため息をついていた。


「相変わらずだねクロ」

「そっちこそ暇してるよなシロ」


 シロ――学園では珍しい白髪で、整った顔をした学園一の秀才。名前からたまに兄妹(きょうだい)と間違われるが僕らにはなんの接点もない。

 しいて言えば顔見知り、クラスメイトといったところだろう。


「で、シロは僕を授業に引っ張りに来たのか?」

「概ねそんなところだね」

「魔術基礎は嫌いだからパスで」

「君って奴は……。ほら、次の授業が終われば昼休みだし頑張って出てみようよー」


 うーむ、このお節介さはどうにかならないものか……。


「ね、ね、あと一時間の我慢だからさ?」

「やだ」


 一蹴するとしゅんと仔犬みたいにうなだれるシロ。しかし、しばらくするとこちらの顔をちらちらうかがい始めた。

 その顔には『一時間だよ?』『もう少し頑張ろ?』的な念が凄い込もっており、はなっから諦めるなんて選択肢はないようだ。


「………………わかった、次の授業出るよ」

「やった♪ じゃ、一緒に行こう!」


 そんなのこちらが折れるしかないじゃないか。


 重い腰を上げ、黒いローブのフードを深く被る。そしてかるく伸びをしてからシロの横に並んで歩いた。




 魔術関連の学園は広い。十年と少しこの学園で過ごしているが今でも知らない教室があるほどには広い。

 そんな中でも比較的よく通る僕のクラスまでの廊下を歩いていると、周りの生徒がこちらを見ながらヒソヒソと耳打ちし始めた。


「……やっぱり目立つよな」


 ぼそりとこぼし、フードをさらに深く被る。


「え? なんで?」


 そりゃシロが有名人だからだろ。学園ーの秀才で美人、さらに珍しい髪の色ときた。これが目立たないはずがない。


「いや、なんでもない行こうか」

「そうだね。あ、教室わかる?」

「最近顔だしてないからってバカにしてるね」


 ばれちゃったと小さな舌を見せ、小悪魔っぽく笑うシロ。


 おっと、余計にフードが脱げないな。今脱げば間違いなく嫉妬の嵐だ。シロと歩くときはこれだから困る。


 なんだかんだでようやく教室に入り、自分の席に着く。腐れ縁なのかここでも隣にはシロがいる。

 始業のチャイムが鳴り、教諭が入ってきて僕の存在に気が付くとまず驚いて、そして一番に僕を指名する。たまに顔を出したときによく起こることだ。


「珍しくクロくんがいるので、クロくんに質問しましょう。魔術には大きく分けると二つありますがそれは何と何でしょう」


 そして明らかに子供でも解ける常識問題を出す。

 クラスの大半がクスクス嘲笑いながら僕を見る。だからこの時間は好きじゃないんだ。


法式魔術(ほうしきまじゅつ)無形魔術(むけいまじゅつ)の二つです。多くの魔術師は法式魔術を扱い、無形魔術を扱う魔術師はかなり少数です。また、無形魔術師は法式魔術を理解することが出来ません」

「はい、良くできました。無形魔術師でもこの程度の常識は理解できているようで先生は安心しました」


 とたん沸き上がる嗤いに眉をしかめ、席に座る。


 僕はその二つの魔術のうち、残念なことに無形魔術を扱う、一般には落ちこぼれの部類の魔術師である。

 そしてこの授業は法式魔術の座学なので、授業の内容は全く理解出来ない。これも悔しいが事実なのだ。

 シロが見せ物のために僕を授業に引っ張り出した訳でないのは知っているがやはりこんな授業を受けたいとは思えない。


 ――やはりこんな差別間違ってるよな、シロ。



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