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グリーンモンスター(3)

◆  ◆


「アルバガルドにおける魔法の定義というのは『体内を巡る魔力を解放し様々な現象を引き起こすこと』を差します。初めは一部の上級魔族やエルフ族にしか扱うことの出来ない魔法でしたが、膂力、魔力共に乏しいものの、どの種族よりも優れた知能と適応力を持つヒューマン族、すなわち人類が、少ない魔力量でも魔法を扱える手段を編み出しました。その一つが『呪文』ですの。引き起こす事象のイメージを言霊に乗せることで増幅させ、具象化する。彼らの素晴らしいところは、ごく一部の先天的に体内魔力量の優れた者にしか扱えなかった魔法を、学問として体系化させたところですわね。これにより、どんな者でも修練次第では魔法が習得できるようになりました。この呪文、初めこそ膨大な詠唱が必要でしたが、魔法学者達の弛まぬ研究と研鑽の結果、少ない文字数で魔法を発動させることが出来るようになりました。それが『簡略呪文』ですわ。現代的に例えるならパソコンのショートカットキーのようなものでしょうか。習得した魔法を、少ないワードで想起し発動させる。先程大魔王様が発動させた爆発系呪文『ゲオ』も『簡略呪文』に分類されますわ」


「成る程、わからん」


「うー、大魔王様ったら」


 急に長々とファンタジーチックな説明が始まったから、居る世界を間違えたかと思ったぜ。不出来な生徒を見て悲しむ教師のような目でこちらを見やる江原に、俺は肩をすくめてみせる。


「だから大魔王と呼ぶな。そんな魔法の仕組みよりも、これから先、大手レンタルビデオチェーン店の名前を口に出す度に爆発を起こしてしまう自分の行く末の方が知りたいね」


 このままじゃもうTATSUYAにしか行けなくなってしまう。家の近所にないんだよなぁ。


「それに関しては大丈夫ですわ。恐らく前世の記憶が蘇った反動で、そのレンタルショップの名前と呪文が混同され誤作動を起こしただけ。きちんと把握、認識して口に出せさえすればもう暴発はしないはずです」


「本当か?」


「ええ」


 ホッと胸を撫で下ろす。冗談めかして現実逃避していたものの、日常生活に支障をきたしてしまいそうな案件に内心ビクビクしていたから。それが分かっただけでも江原には感謝だ。直接伝えると面倒くさい展開になるのは明白なので口には出さないが。


「しかし凄いな、別世界の知識までしっかり記憶してるなんて。俺は漠然とした夢をみただけだったのに」


「そんなことないですよ。私はかつての魔力は引き継いでおりませんし、この知識も大魔王様の魔法を見たら突然思い出したんですの。ですから、ゲオ以外の呪文については、現時点では何も」


「となると、またうっかりで魔法が発動しちまう可能性もあるってわけか。気を付けないとな……ところで」


「はい?」


 俺の隣を歩きながら、キョトンとした表情をこちらに向けてくる後輩を、ジト目で睨めつける。ここは俺の家へと向かう通学路の途中の道だ。あの後、人の目に付くのを恐れた俺達は、急いで学校を後にした。うっかり花壇をそのままにしてきてしまったが幼稚ないたずらとして園芸部なんかが処理してくれるだろう。うちの高校に園芸部があったかは定かではないが。


「どこまでついてくるつもりだ? こっちは君の家の方向じゃないだろ」


「決まってますわ、大魔王様の向かうところならば私は地獄の果てまでついて行きます!」


 なんとなく予想していた返答に、俺は若干の苛立ちを抑えながら後頭部をガリガリと掻いた。あの花壇に頭痛の種でも蒔いてくりゃよかったかな。


「まっすぐ帰れ。お家の人が心配するぞ」


「ご心配なく。後で迎えの者を来させますわ」


 なんでもないような顔で来させますわ、ときましたわ。ガチでブルジョアジー、ガチブル。むっちゃ強そう。じゃなくて。


「あ、そう。じゃあ今呼びなさいよ」


「もう少し、大魔王様とお話したいのです」


「だったらここで話したらいいんでないかな」


 投げやりに答えると、江原は頬を染めながら人差し指をつんつんと人差し指を突き合わせる。


「大魔王様のお家に行ってみたいなぁ、なんて」


「だが断る」


「酷い……やることやったらポイ捨てするんですのね!?」


 ふるふると目尻に涙を溜めて俺を見上げる江原。わかったこれ嘘泣きだこえー女こえー。


「誤解を招く表現をするな! ただ話をしただけだろ!」


「後輩が先輩の家にお邪魔するのがそんなにいけないことですの?」


 ここぞとばかりに先輩後輩出してきた! したたかだなおい!


「別に悪いこととは言わんが……あれだ、部屋汚いし俺一人暮らしだから。年頃の女の子がそんなとこに行くのも危険だろ?」


「大丈夫! どんなに汚くても私の大魔王様に対する忠誠心は揺らぎません。お部屋のお片づけくらい私がしますわ! それに一人暮らしはむしろ好都合……」


「あれ? 今好都合って言った? 言ったよね?」


「さぁ参りましょう! 大魔王様の住まいはどちらですの? こっちですの!?」


「俺の元部下ならさぁ、少しくらい俺の言うことを聞いてくれよぉ!」


 抵抗むなしく俺は、「お話なら大魔王様のお家でゆっくりじっくりねっとり聞きますわにゅふふ」などと言う江原に強引に腕を引かれ、引きずられる様に我が家へと向かうこととなった。


◆  ◆


「お邪魔します。あらあらまあまあ」


 玄関から縦長に伸びる長方形、台所とリビングが一緒くたになった何の変哲もないアパートの一室を、まるで宝箱を見つけたかのような瞳で見つめる江原に苦笑しながら、俺はくの字に折れ曲がったドアを靴箱に立てかけた。


「まぁ大変! お部屋に物が散乱してますわ! もしや、何者かがお部屋に侵入して……!」


「ただ散らかってるだけだ」


「そうなのですの? では、私にお任せを! たちどころにピカピカにしてみせますわ!」


「いやいいって」


 流石に客人に、それも今日知り合ったばかりの女の子に部屋の片付けをしてもらうのは気が引ける。まぁしてくれるんならそれは非常にありがたいが。別に見られて困るものもないし、ホントだよ?


「やらせて下さいまし! 大魔王様の身の回りを清めるのも配下の努めですわ」


 俺の静止も聞かずに江原は部屋に散らばった衣服を拾い集める。仕方なく俺も鞄を放って、江原を手伝うことにした。


「前世はともかく今は只の同校生だろ……おい俺のトランクスを懐にしまうな」


「てへぺろっ」


 てへぺろっじゃねえよ。本当に油断も隙もねえ。これが魔王バラスモかよ、にわかには信じ難いな。


――――――


「ちょっと片付けただけで大分違うなー。ありがとな、江原」


「うふふ。当然のことをしただけですわ」


 ごぅんごぅんと、久々に稼働する洗濯機の駆動音を聞きながら、出しっぱなしの炬燵の電源を入れる。台所で料理をする江原を横目で見ながら突っ伏す。今日は本当に疲れた。


「悪いな、飯まで作ってもらっちゃって」


 思わず声に気だるさが滲んでしまう。ぼんやりと今の状況を考えてみる。一人暮らしの男子高校生の家に、美少女の後輩が訪れ、掃除、洗濯、更には飯まで作ってくれる。男なら誰しも夢見るシチュエーションなのだろうが、どうも実感が湧かん。そもそも江原が好意を寄せているのは大魔王ソーマであり、相馬あすらじゃない。多少の記憶はある気がするが、それが本当に自分のものかは分からない。他人の褌で相撲を取ってる感じは否めないんだよなあ。


「うふふ。その言葉をいただけるだけで私は充分ですわ、それと便座カバー」


「そうか――って、そのポケットからはみ出たもんはなんだ返せこら」


 自前のエプロンのポケットには俺のトイレに付いていたと思しき便座カバーがはみ出ていた。ダメだこいつ早くなんとかしないと。立ち上がって引き抜こうとすると江原が嬌声を上げて飛び退る。


「あぁん、殺生ですわ大魔王様」


「あぁんじゃねえよ、ふざけんな! 朝トイレに行く度にヒエェってなるだろが!」


「私の懐で温めたものを毎朝お届けいたしますわ」


「斜め上の忠誠心過ぎる!?」


 信長もドン引きだろ。いや、秀吉が可愛いかったらアリなのか、バカとテストが絡んできそうな話だな。それ以上いけない。


 そんなこんなで完成した夕飯を一人で啄む。江原は食わないのかと聞いたところ、家に帰ればあるとのこと。せっかく家内の者が作って待っている物を残すのは偲びないそうだ。電波で変態な部分を除けば基本的には良い娘なんだよなあ。黙々と食べていると、江原が逡巡しながらこちらの顔色をうかがっていた。


「……何だよ? 顔になんかついてるか?」


 顔を見られながら食事ってし辛いな。俺が誰かと食事する習慣がないのも理由なんだろうけど、なんだか気恥ずかしい。


「いえ……ただお口に合うかなって」


「ん? ああ。美味いよ、冷蔵庫にあった適当な食材でここまで作れるなんて凄いな」


「本当ですかっ!?」


 率直な味の感想を述べると、江原は顔を輝かせ満面の笑みを咲かせる。事実、江原の料理は美味かった。このキャベツの包み蒸しなんか絶品だし、まだ寒い今の季節、付け合せの豚汁が嬉しい。ポテトサラダもコンビニ物とは比べ物にならないくらい美味い。全体的に健康志向で肉が少ないのが寂しいが、男子高校生の胃袋を満足させるには充分なボリュームだ。


「うん。俺も一人暮らしだからちょくちょく自炊するけど、このクオリティの物は作れないよ。これ、タレとかソースとかも手作りだろ? うん、美味い。最近は出来合いの物ばっか食ってたしこういうのマジで嬉しい……どうした? 耳真っ赤だぞ?」


「えと……そこまで明け透けに褒められると恐れ多いというか、恥ず、恥ずかしいといいますか……」


「ふーん」


 よく分からんが、女の子って大変なんだな。その後あっという間に完食した俺は、残った食器に向かって慇懃に手を合わせた。


「美味かった。ご馳走様」


「お粗末様でした」


 江原が入れてくれたお茶に口を付け一息つく。彼女はテーブルの上を食器を丁寧に重ね流し場へと持っていき、洗い始めた。本当によく出来た娘だなー。


 満腹のもたらす幸福感に浸り適当にゴロゴロして時間を潰していた俺だが、ここらで本題を切り出そうと、おもむろに江原に話しかけた。


「あのさ、俺と話したいことがあるって言ってたけど、何?」


「そうでしたわ。大魔王様のお家に来られた喜びですっかり忘れていました。お聞きしたいことがありましたの」


「聞きたいこと?」


 食器を洗い終えた江原は純白のエプロンの前掛けで濡れた手を吹きながら、炬燵を挟んで俺の対面に座る。さっきまでとは違う神妙な雰囲気に、俺も起き上がり姿勢を正して向き合った。


「相馬あすら様、貴方は私の直感通り、大魔王様の生まれ変わりでしたわ。この現代社会において魔法までも引き継いで降臨なさいました。なのに貴方はそれを喜びもせず、行使なさろうともしていないご様子。むしろ忌避している様に見えました。どうしてですの? 世界を征服出来る程の力を得たというのに」


「降臨って……更に征服ときたか。大袈裟だなぁ。魔法っつってもそんな大したもんじゃないだろ。確かに危険だったけど、現代の兵器とかにゃ勝てんだろ」


「大袈裟ではありませんわ。大魔王様の魔力をもってすれば、一人で国を滅ぼすことも可能。覚えてないのですか? かつて貴方様の魔法により、地図から姿を消した島もありますのよ」


「……マジ?」


「マジですわ」


 江原の表情は真剣で、冗談を言ってるようには見えない。島を消すって、やんちゃってレベルじゃねえぞ。もうね極悪。そりゃそうか、大魔王だもんな。


「大魔王、魔法、ね……確かに凄い力なんだろうけど、別に要らないっす」


「っ! どうしてですの!?」


 適当に、コンビニでパン温めますかって言われたのを拒否するような、そんな軽い感じで答える俺に、江原はひどく驚いた。


「だって履歴書に書けないだろ」


「……は?」


 江原の口がポカンと開く。驚きが呆れに変わっていた。


「経歴の欄に『元大魔王』とは書けないだろ? 書類審査で落とされるに決まってる。面接で『特技は何ですか?』って聞かれた時に、爆発系呪文『ゲオ』が使えますとか答えてみろ。鼻で笑われるわ」


 いいんですか? 使っちゃいますよ? ま、使ったら現社会的に終わりだけどな。


 俺の話を冗談と思ったのか、江原がジト目で睨んでくる。


「……真面目に答えて下さいまし」


「真面目も真面目、大真面目だよ。俺が求めるのは平凡な日常だ。世界征服なんて興味ないね」


 小さい頃から思っていた。王道RPGに出てくる魔王ってのは大体ラスボスだ。世界に危険を及ぼす存在で、勇者の敵で、皆から恐れられ怖がられている存在。魔王が倒されないと、平和は訪れない。魔王がいなくならなきゃエンディングは迎えられない。勇者に『倒される』ためだけの存在。そんなものに誰がなりたいと思うか。


「俺がなりたいのは殺伐とした封建社会の長でも、弱肉強食の頂点でもない。安定した中小企業の部長クラスだ。たまの休日、家族を焼肉食べ放題に連れてってやれる大黒柱だ」


「……随分と所帯じみた野心を抱かれましたわね。そんな大魔王様も素敵ですけれど」


 江原は小さくため息をつくようにはにかむ。かつての俺をよく知る彼女には物足りない返答だったみたいだ。昔の俺なら世界征服を企むのだろうか。その答えは定かじゃないが、今の俺は違う。これだけはっきりしてれば十分だろ。


「というわけだ。江原も俺に変な忠誠を誓わず今まで通りの生活をしたらいい」


「そういうわけには参りませんわ! どんなに時が経ち世界が変わろうと私は貴方様の下僕! 一生お側におります!」


「ぐわあ!」


 身を乗り出すようにして俺に抱きつく江原。強引に引き剥がそうとしても離れない。お、おっ、胸が! 普通に苦しい! 柔らか地獄!


「お側に置いて下さいましぃ! 奴隷でもいいですからぁ! 性奴隷でもいいですからぁ!」


「ブッ飛びすぎだろ! ソ、ソーマに忠誠を誓っていたのはバラスモだろう!? 俺はもう大魔王ソーマじゃない。君も魔王バラスモじゃない。『江原すもも』だ! 君がしたいことを優先させればいい!」


「私の、したいこと……?」


 不意に抱擁を緩め、俺の顔を見上げる江原。吸い込まれそうな程美しい碧眼に涙を浮かべ、じっと見つめてくる。するとシミ一つない真白の頬がみるみる赤くなっていく。


「どした? 熱でもあるんじゃないのか?」


 心配して額に触れると、江原は小さな悲鳴を上げ、脱兎の如く俺の上から飛び退き、黄緑色のツインテをこねくり回しながら何やら小さな声でぶつぶつと呟き出した。


「私は江原すもも……もうバラスモではない……部下でも配下でも下僕でもない、ということはっ、私が大魔王様のお嫁さんになることも、かか可能なのでしょうか……!?」


「おい大丈夫か?」


「ひゃひゃひゃひゃい!? 何でもありませんわ大魔王様!」


「? ならいいけど。その大魔王様ってのはやめてくれないか。もうお互い魔王じゃないんだし」


「あっ……でもなんとお呼びしたらいいのか」


「苗字でも名前でも好きに呼べばいい」


 そう言うと、江原はしばらく黙考して、ためらいがちに。


「あ、あすら様……」


「あー、うん。じゃあそれで」


 様付もやめてもらいたかったが、お互いの折衷点ということにしておこう。女子の後輩に下の名前で呼ばれるなんて初めてかもしれん。中々感慨深い。何青春ポイントくらいだ?


「では! あ、あすら様も私のことを、すももと呼んで下さいまし……」


「了解。改めてよろしく。すもも」


「……っ! はいっ! よろしくお願いしますわ!」


 こうして、俺とすももは大魔王と魔王の関係から、先輩と後輩の関係へとシフトチェンジしたのであった。めでたしめでたし。


――――――


「今日は色々ありがとな」


「いえこちらこそ遅くまでお邪魔してすみません」


 程なくして迎えの車が来たというので玄関まですももを見送る。ちらりとアパートの下を覗くと長いリムジンが停まっているのが見える。マジでお嬢様だな。つうか、どうやってここまで入って来たんだ?


「何かあればすぐに連絡してくださいね? 真夜中だろうと駆けつけますわ!」


「何事もないことを祈るばからだよ。じゃ、またな……」


 ぐっと両手で握りこぶしを作る頼もしい後輩に苦笑しつつ、玄関の扉を閉めようとして。


「あードアの修理頼まないとなぁ。夜寒いぞこりゃ」


 全く余計な出費は勘弁願いたいぜなどと愚痴っていると、すももが何でもないような顔で申し出た。


「応急処置で宜しければ私がして差し上げましょうか?」


「え? 板金工でも呼ぶの? 流石にそこまでしてもらうのは――」


「いえ、これくらいならば曲がったところを手で戻せば大丈夫です」


「手でって、無理でしょ~そんなこと出来るのはハルクく、ら、い……」


 まるで飴細工を扱う様にひしゃげたドアを軽々と戻していくすもも。俺が朝触った時はビクともしなかったのに。俺がアホヅラで唖然としているのに気づいたすももが笑顔で説明してくれた。


「お伝えしていませんでしたが、どうやら私、魔王時代の腕力を引き継いでいるみたいですの」


「へー、そうなんだ……」


「よし、大分戻りましたわ! ではでは、また明日学校で! ごきげんよう!」


 元気よく手を振り駆けていくすももを見送り、そっと扉に目をやると、ぐにゃぐにゃだった部分が綺麗に伸ばされアパートの欄干に立てかけられていた。背筋ピーン。すももは怒らせちゃいけないな、うん。


 適当に玄関にドアをはめ込み、部屋最奥のベッドに仰向けに倒れこむ。朝はどうなることかと思ったが、意外とどうにかなったな。いや本当にキツいのはこれからか。分からないことが多すぎる。


 何故いきなりかつての記憶が戻ったのか。記憶が戻ったのは俺達だけなのか。もしかしたら勇者も同じ時代に生まれ変わってるかもしれない。接触は避けたい。どうしたら引き継いだものを捨てることができる? 俺の魔法も、すももの腕力もそうだ。過ぎたるは及ばざるが如し。突出しすぎた能力は持つ者を不幸にする。問題は山積みだ。山積みなのだが。


「眠い。泥の様に寝たい……あ、いけね、ビデオ返しに行かなきゃ。ゲ――」


 言いかけて飲み込む。今朝の情景がフラッシュバックする。もう爆発騒ぎはうんざりだ。俺は目を瞑り静かに深呼吸した。通い慣れたレンタルショップ。その内装をイメージする。


「……ふぅー……『ゲオ』に行こう」


 静かに目を開ける。何も起きない。何も爆発しない。よし。さあ、行こう。確か今日は旧作半額だ。



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