第4舞 球技大会前のちょっとしたひととき
「えっとー、俺らが出なきゃいけない種目はー」
球技大会の実行委員が、黒板に種目を書き出した。
中間テストが終わると、次の行事は球技大会である。
中間テストでは1位というとんでもない順位を叩き出した竜生は、どの種目に出ようか迷っていた。
中間テストでは全教科の点数の平均が17点というとんでもない点数を叩き出した稜は、何故か竜生たちのクラスに居た。
中間テストでは何故か順位表に名前がなかったが実は全教科満点をとっていたサクラは、ボーッと竜生を眺めていた。
それぞれ無事(?)に中間テストを乗り越えた3人は、
「竜生ー何に出んのー?」
「帰れよ、稜。空に還れよ」
「え?!竜生がひどいよーサクラチャーン……。あ、そーいやサクラチャンは何に出んの?」
「ワタシは何にも出ませんよ」
「いやいや、全員参加だよ?!」
そんなやり取りを続けていた。
「ハイ、早い者勝ちな!まず……ソフトボール出たい人!」
実行委員が声を張り上げると、野球部を中心として数人の手があがった。
「竜生ーマジで何に出んのー」
稜はまだ諦めておらず、しつこく竜生に尋ねていた。
「んー…バスケにしようかな……」
竜生がそう答えると、
「絶対?絶対だな!変えるなよ!よし、俺もバスケにしよーっと」
稜はそう言って、自分の教室へ帰っていった。
静かになったので、竜生はサクラに話しかけた。
「サクラは何に出るの?」
「ワタシは…何にも出ません」
「でも、全員参加だけど……」
「夏目様、黒板をご覧になってください」
サクラがそう言ったので、竜生が黒板を見ると、女子の種目はすべて埋まっていた。
「え、え、何で?!」
「どうやら、初めからワタシはカウントされていないようです」
サクラはまずクラスメイトとして認識されていないので、種目の人数にもカウントされていなかった。
「いいの?サクラ」
「何がですか?」
サクラは無表情のまま、心底不思議そうな雰囲気を醸し出した。
「何がって……球技大会、出たくないの?」
「…出たくないわけではありませんが」
サクラの表情が珍しくピクッと動いた。
「ワタシは、普通の方より……その…力が強いので……加減も出来ないから………。それに、ワタシが出場している間に夏目様に危険なことが起こっては、ワタシの存在意義が解らなくなりますので……」
サクラは少し寂しそうに言った。