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Sea Labyrinth Online  作者: 山外大河
一章 ゲームの始まり
8/21

7 決意と結果

「――殺せない」


 俺は俯いて拳を握りしめ、静かにそう呟いた。


「無理だ……殺せねえよ! 殺せるわけねえだろうが! 俺は一緒に狩りに行ったお前を友達だと思ってるし、だからこそ殺したくない!」


 だけど……それだけじゃない。


「第一……お前じゃない、知らない誰かでも……俺は殺せねえよ……人を殺すなんて……ただの高校生に出来るわけねえじゃねえか……」


 それが出来る奴が居れば……きっとソイツの心は歪んでいる。壊れている。

 たとえソレが自分や他の誰かを救う為だとしても……きっとそうだ。


「じゃあ……クリアを目指すの? 死んじゃうかもしれないのに……」


「……決心が付き次第な」


 それさえ付けば、きっと俺は生き残るために戦える。

 ……でもだ。

 本当に決心は付くのだろうか。

 自分が……他のログインしている何万のプレイヤーが助かる道を捨てたというのに……俺にもう一つの道を歩む勇気はあるのだろうか。

 ふと、リュークさんが消えてしまった時の事を思い出す。

 リュークさんは……死んだんだ。

 きっと攻略にでれば、もっとたくさんの人が死ぬ。もしかすると俺も死ぬ。

 本当に……俺はそんな状況下で戦えるのか?

 この選択で良かったのか? 勇気を振り絞るのは此処だったんじゃないか?

 もしかすると俺は……とんでもない選択ミスをしているんじゃないか?


 ……いや。


 きっと間違っていない筈だ。俺は間違っていない。間違ったことなんて一つもしていない。

 俺はそう自分に言い聞かせ、そして少しでも前向きに考えようと気持ちを切り替える。

 一つの選択肢を潰した者として……たとえ決心がつかなくても、今できる最善の手は打っておきたい。


「ユカ、ちょっといいか」


「……どうしたのかな」


「ユカは……匿名でシステムメッセージを流したりできるか?」


「うん……できるけど」


「分かった。じゃあコレをシステムメッセージで流してくれ」


 そうして、俺は今できる最善の手を口にする。


「SLOがデスゲームになった事。脱出するにはゲームをクリアするしかないこと。コレを流してくれ」


 コレが最善の手だ。

 これを聞いたプレイヤーがどんな反応をするかはさておき、まず今このSLOが置かれている状況。コレを把握することが、まずやらなくちゃいけない第一歩なんだ。


「パニックに……ならないかな」


「何もかもが不確定な今よりもよっぽど良い筈だ」


 俺がそう言うと、ユウは再びウインドウをいじり始める。

 そして暫くすると、システムメッセージが目の前に現れた。


『現在SLOはデスゲーム、及びログアウト不可となっております。脱出するには最上層を目指す必要があり、それ以外の方法。即ち外部からの救出の可能性は薄いです』


 実に淡々とした文章。

 だけどこの文章を呼んだ人達はどんな反応を見せるのだろうか。

 これを見て、自分の兄の死が確定してしまったチカは……どんな反応を見せるのだろうか。


「終わったよ、ユウキ君」


「うん、知ってる」


 知っているから……俺はその場に座り込んだ。

 しばらく此処に居たかった。

 ユカ以外の誰もいない……システムメッセージを見たプレイヤーが誰もいないこの空間に居たかった。

 自分の下した決断で……人が苦しむのはあまり見たくは無かった。

 しばらくして、隣にユカが座ってきて、こう言う。


「ごめんね、ユウキ君」


 小さな声で俺に謝罪する。


「なんであんなバグに気付かなかったんだろ……ソレさえ気付いて居れば、こんな結果にはならなかったのに……ユウキ君にあんな決断を迫らなくてもよかったのに……」


「あんまり自分を責めるなよ。確かにお前はバグを見逃したかもしれないけど、元を正せば、お前一人に管理を押しつけていたSLOの開発者が悪いと思う。第一、ミスなんて誰にだってあるんだ。ソレが大きいか小さいかの違いだけで、根本的な事自体は変わらないよ」


 俺は慰める様にそう言ってやった。

 だって……あまりにも可哀そうだった。

 背負っている物は、俺が下した決断どころの物じゃない。今このSLOが置かれている状況全てなんだから。

 俺でよければ……少しは助けになってあげたい。


「ありがと……ユウキ君は優しいね」


「そうかな」


「そうだよ」


 そう言われると……こんな状況でも照れるな。


「私ね……思うんだ」


 ユカはすっかり暗くなった空を見上げて言う。


「私があの時声を掛けたのが、ユウキ君達で良かった」


「そっか……」


 俺はなんと返せばいいか分からず、そう短く返した。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 大体小一時間程あの場所に居ただろうか。

 静かな場所で、適当な話をし……ほんの少しだけど、俺達は今の状況に落ちついてきた。

 だけど……それはあくまで俺達の話だ。


「ぁ……」


 始まりの街の中心部に俺達二人は帰ってきたが、目に映った光景に思わずそんな声を漏らした。

 予想はしていた筈だ。だけど実際に目にすると、想像を軽く凌駕した。


 発狂する者が居た。

 泣きじゃくる者が居た。

 嘘だ嘘だと暗示を掛ける者も居た。


 ある程度落ち着いたプレイヤーも多くいる。だけどここまで精神状態に異常をきたした人間が居れば、っもう十分にパニック状態だった。


「やっぱり……酷いね」


「ああ」


 俺が決断した結果がコレだ。


「ユカ……さっきの話、分かってるな?」


「うん、分かってる」


 此処に来る途中、ユカも理解しているだろうけど、こう釘を指しておいた。

 絶対に自分がプログラムな事。自分を殺せば世界が戻る事。コレらを絶対に言わない約束だ。

 もし言ってしまえばどうなるかは……考えなくても分かる。


「それならいいよ」


 俺がそう返した時……俺の隣を走って横切るプレイヤーが居た。


「チカ……ッ!」


 ふらふらな感じで無我夢中に走っているのが分かった。

 きっとリュークさんの事で取り乱しているんだ。すぐに理解できた。

 理解できたからこそ、俺達はチカを追いかけようとする……しかしソレよりも早く。


「待って! チカちゃん!」


 俺達の隣を……ヨウスケが走り抜けていった。

 大体状況は把握した。

 錯乱したチカをヨウスケが何とかしようとしている。


「俺達も行こう、チカ!」


「……うん」


 俺達は今度こそヨウスケとチカを追う為、その場から走り出した。

  

 話のキリ的に、今回は短めとなりました。

 予定では、あと2、3話で一章終わる予定です。

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