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Sea Labyrinth Online  作者: 山外大河
二章 浸食の聖域
21/21

8 安全圏内の死闘 下

「うおああああああああああああああああああああッ!」


 攻略組みの一人の大男が、背丈程あるハルバードをブレイククラブに向かって振り上げた。

 凄まじい衝撃音を周囲に響かせたその攻撃は、なんとブレイククラブを地上から浮かせることとなった。


「なんて攻撃力だ……ッ」


 恐らく攻撃力に大分ステータスポイントを振っている。死んだらお終いの中で、きっと攻撃は最大の防御という真っ直ぐな理念を貫いたのだろう。こうして見てみると、それは間違っていないと思えてくる。


「僕たちも続くぞ!」


 男に続いて、ハリスさん含めた四人がブレイククラブへの距離を詰め、既に正面にいたユカと共に、流れるように攻撃をヒットさせていく。

 そして攻撃をヒットさせた者が、順々に右方左方へとそれぞれ飛び……後方で詠唱(といっても、その硬直時間がそう呼ばれているだけで、実際は何も喋っていない)を行っていた魔術師二人と弓兵二人が、ブレイククラブに攻撃を打ち込む。

 ブレイククラブが三層のモンスターなだけあって、ケージの減りこそ少ないものの……彼らの動きは、もしこの世界が一つの物語なのだとすれば主人公なのだろうと感じさせた。


「すげえな……」


 俺は攻略組みが来た事により、一時的に後方へ引きつつそう呟く。

 これが……ずっと逃げてきた俺と、ずっと戦ってきたハリスさん達の差か。

 俺はHPケージが完全回復するのを横目で見ながら、刀を強く握り締めた。

 そうしていると、危ういところをハリスさん達に救われたチカも一時的に後退してきた。


「大丈夫?」


 ヨウスケが尋ねると、チカが息を切らしながら頷く。

 ヨウスケは本当によかったと言いたげな表情を作ると、すぐに正面を見据え……攻略組みの魔術師に合わせるように、ファイアボールの詠唱を始める。

 それを見て……俺は再びブレイククラブに向かって走り出した。

 正直に言って、攻略組みの面々に全てを任せたいという気分もある。これは否定しない。

 だけども、その攻略組みにとっても、やっぱり目の前のブレイククラブは上の層の敵……強敵なんだ。

 あの人達が俺達を助けてくれたように……俺達もまた、彼らを死なせるわけにはいかない。

 目の前の攻略組み達はこの第一層を……いや、SLOをクリアするための要なんだ。

 そして何より、まだユカが戦っている。それだけで戦う理由は十分にある!

 俺は攻略組みとブレイククラブとの戦いに混じる形で、人達浴びせる。もちろん大したダメージは与えられない。

 だけど……それでいい。

 強い敵には数で押せ。

 その数の中の一人になれたのなら……それでいい!


 そうして俺達は続けていく。

 絶え間無く攻撃し続け、時折攻撃を潜り抜けて放たれる攻撃を回避し、時折爪が掠って大きく削られるHPを、後退して回復し……そんな事をどれぐらいの時間続けたのだろう。

 それを確認している暇もなく……だがそれは数十分にも数時間にも思えた。

 そして、その時がやってくる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」


 俺はHPがほぼゼロとなっているブレイククラブ相手に、全力で刀を振りぬいた。

 俺の攻撃は、ブレイククラブに碌なダメージを与えられない。ただどれだけ硬い相手に攻撃をしても……かならず一ダメージは与えられる仕様となっている。

 そして俺の攻撃は……ブレイククラブのHPを完全に削り取った。

 アクアシープや弱き者の残骨のように、ブレイククラブは消滅する。それは、俺達の勝利という事を告げる、決定的な現象だった。

 経験値を所得し、レベルが上がったというメッセージが表示される。それは今の俺からすればとんでもない数値だったのだが、今はそんな事を気にしてはいられなかった。


「……ッ」


 思わず息を飲んだ。

 刀を持つ手が震える。いや、全身が震えてしまっている気がする。もう敵はいないのに。否、敵が居ないから。


 生き延びた。


 俺が今立っているという事は、そういう事である。三層という俺達からすれば遥かに高い所に生息するモンスターに襲われて……それでも生き残った。

 安心感。優越感。色々な感情が渦を巻くように形成されていき、気が付けば俺は、


「……倒……した……」


 そんな風に呟いていた。

 そしてそれがトリガーとなったように…・…周囲の、一緒に戦った仲間たちが歓声を上げ始める。


『いよっしゃああああああああああああああああああああああああああああ!』


 それはまるで、ボスを倒した時の様に……否、これは俺達にとって、ボス戦だったのかもしれない。

 圧倒的実力者を弱者が倒す。ジャイアントキリング。

 きっと俺達は本番……ボスを倒した時も、きっとこうして叫んでいるのではないだろうか。


「ユウキ君!」


 そう聞こえたかと思うと、突然ユカが抱きついてきた。


「ど、どどど、どうしたユ――」


「……よかったよ」


 ユカは涙声で俺の胸に顔を沈めて……一拍空けて言う。


「皆……生きてるよ……」


 本当に……良かったよ。

 周囲を見渡す。今この場でブレイククラブと戦った、総勢十三名。今現在もHPがレッドになっている人もいるが……死者は一人もいない。

 あの絶望的状況を……一人の死者も出さずに切り抜けられた。


「……そうだな」


 俺は軽く、ユカを抱きしめた。

 俺が出来たことなんて、大したことは無いだろう。

 結果的に俺がラストアタックという形になったものの、総ダメージ量はユカやハリスさん。攻略組の連中と比べると、本当に微量だと思う。

 だけども……喜んだっていいよな。

 全員生きている事を。

 その戦いで頑張れた事を。

 復活への一歩を……踏み出せた事を。


「ユカ。俺、今度は戦えたよ。前に進めた」


 ユカにしか聞こえない様な小さな声で、周りの歓声で掻き消されてしまうような小さな声で、俺はそう呟く。

 それがちゃんと聞こえていたのか、俺には良くわからないけれど、


「カッコよかったよ、ユウキ君」


 ユカは俺の胸から顔を起こし、涙を拭いながらそう小さな声でそう言ってくれた。

 その声が聞けたら……俺はまだきっと前に進める。進んでいくことができる。

 視線をちょっとだけ逸らす。

 そこにはニヤニヤしてこっちを見ているヨウスケと、薄っすらとした笑みを浮かべて、同じようにこちらを見ているチカが居た。

 なんだよその、応援してますみたいな視線は。

 もし俺の読み通りの事を考えているのだとすれば……その言葉、俺もお前らに返すぞ。

 ……手、繋いじゃってさ。


「とにかく、お疲れさま」


「ユカもお疲れ」


 そう言って俺達は笑いあった。

 そして俺は改めて思う。


 ……これからも頑張っていこうと。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ある程度の時間が経過した後、平常心を取り戻した俺は、ようやくある事に気がついた。


「な、なんだこのレベル……」


 俺のレベルが凄い事になっていた。

 俺の元々のレベルはたったの三。まだ一層の東フィールドで戦っている様なレベルである。

 それが……今はどうだ。


「じゅう……な……十七!?」


 たった一体。モンスターを倒しただけで、レベルが十二も上がっていた。

 たった一体倒しただけで。


「何が……起きてんだ……?」


 何度も言うが、倒したのはたった一体である。

 いくら上の層のモンスターで、経験地が多かったにしても、今戦っていた人数は十二人である。仮に均等に分配したとすれば、ここまでのレベルにはならない筈だ。

 つまりはこのレベルはいい意味での異常であり、俺はその異常に困惑せざるを得なかった。

 視線をヨウスケ達に向ける。ヨウスケ達も同じように驚愕しているようだった。だが俺やヨウスケ、チカを除いた攻略組みの面々は、俺達と比べると驚きは少ない様だった。


「な、おい……ユカ、レベルが……」


 俺は慌ててユカに尋ねる。この現象を最も理解しているのは、おそらくユカの筈だ。


「どの位上がったの?」


「じゅ、十五も上がってるんだけど……なんでこんなに……まさかバグか?」


 俺がそう尋ねると、ユカは落ち着いた様子で答える。


「SLOの経験地分配のシステムを考えると……きっとバグじゃないよ」


「違うのか?」


「うん。バグじゃない」


 と、ユカは改めて断言して、俺に詳細を教えてくれる。


「まずね、経験値は、そのモンスターに与えたダメージの割合で増減するんだ。例えば今の場合、私達もハリスさんたちも、パーティを組んで戦っていたから、互いのパーティの総ダメージ量を人数で割って割合を出して、その割合で経験値を分配するんだ。例えば経験値が千の敵を二パーティで倒したとして、片方が四割。片方が六割のダメージ量だった時、割り振られる経験値量は、四百と六百になるの」


「なるほど……」


 だけども……それだったら余計に変じゃないか。


「でも、そのシステムだったら、この経験値はおかしくないか? なんつーか、ブレイククラブの経験値がどれぐらいなのかは知らないから、単に俺が気にしすぎってことかもしれねえけど、俺達が奴に与えたダメージで、こんなに貰えるのが、なんというか……おかしい気がするんだ」


 戦闘の途中で、ハリスさん達が加勢してくれた訳だが、何度も言う通り、攻略組の方が俺達よりも強く、当然総ダメージ量も彼らの方が高いのだ。

 そうなってくれば、俺達に分配される経験値はもっと少ない筈なわけで。


「まあそれは基礎ポイントっていうか、経験値分配の土台なんだよ。ここから色々とオプションが入って増減するんだ」


「オプション?」


「そう。例えば、弱いパーティが、強いモンスターと必死に戦っていて、長い時間を駆けてHPを半分まで削ったとして、突然同じ人数の強いパーティが戦闘に混じってきて一気に残り半分を削って、経験値が各パーティに半分ずつ分配されたら……不公平じゃない?」


「まあ……確かに」


 苦労の度合が全然違うのに、それは不公平だ。


「だからね、まずモンスターとの戦闘時間で経験値の分配は大きく変動するの。今回、私達はハリスさん達が来るまでに結構な時間戦っていたからね。フィールドモンスターの場合、あれだけ戦っていれば、戦闘終了まで逃げなかった場合、まず経験値の半分が私達に分配される。まあ時間による分配はこれが最大限だね」


「は、半分って……」


 つまりは三層のモンスターの経験値の半分を、俺達四人で分けあったという事になる。

 しかも……これはまず、半分をわけあったというだけだ。


「まずって事は……残りの半分の一部も、俺達に入ってきてるのか?」


「そういう事。その半分を、最初に行ったダメージ量で分配するんだ」


 俺達が何割のダメージを与えたのかは分からないけど……仮に二割だとしても、ブレイククラブの経験値の六割が俺達に入ってきている事になる。

 それはとんでもない数値だ。


「だけど、だからってこんなにレベルが上がるものなのか?」


「これだけじゃならないよ。だからもう一つ、適用されるシステムがあるよんだ」


 そうしてユカは、そのシステム名を口にする。


「ジャイアントキリング……意味は分かるかな?」


 俺はユカの問いに頷く。

 言われただけで、なんとなくどういうシステムなのか分かった気がする。

 さっきも考えたことだが、この状況はジャイアントキリング。絶対的な弱者が絶対的な強者を倒すといった状況だ。

 それはつまり……うまくは言えないが、凄い事なのだ。それ相応の見返りがあっても良い筈だ。

 だからつまりジャイアントキリングとは、こういうシステムなのだろう。


「俺達弱者が強者であるブレイククラブを倒した。だからその見返りとして経験値のボーナスが付いた」


「正確には、ブレイククラブそのものの経験値量が増えるんだよ」


「つまり、仮に千だったとしたら、二千になるってことか」


「うん。そうなるね。だけども簡単な事じゃないんだ。発生条件が沢山ある。例えばレベルの高いパーティに、レベル一のプレイヤーが混じって、最上層のモンスターを倒したとしても、ジャイアントキリングは起こらない。ジャイアントキリングは戦闘において、一定以上の活躍をしないと発生しないんだ。だからこのプレイヤーに与えられる経験値は微々たるものになる」


「なんで? パーティに入ってたら、経験値は基本的に平等に分配されるんだろ? だったらジャイアントキリングが発生しなくても、そのレベル一プレイヤーには大量の経験値が入るんじゃないか?」


 恐らくは……一度の戦闘でとんでもないレベルに到達できるほどの経験値が。


「そうはならないんだ。レベルが違いすぎるメンバーでパーティを組んだ際、ボス戦や一部のモンスターを除いた戦闘で得られる経験値に制限が出るんだ。じゃないとゲームバランスが大きく崩れるから」


 まあ確かに……それじゃあまじめにコツコツとレベルを上げている人達が馬鹿を見る結果になる。


「じゃあ今の戦闘の場合、俺達の経験値には制限は掛らないのか?」


 俺とユカでは随分とレベルが離れていたからな。

 だけどもユカは俺の問いに首を振る。


「この位のレベル差じゃそれは無いよ。それに、そうなるレベルの差だったとしても制限は生まれてこない。パーティで一番レベルの高かった私が、そもそもブレイククラブと対になるようなレベルじゃ無かったから。そうなったら、パーティのレベル差による制限は無くなるよ。これで無くならなかったら、それこそ不公平だからね」


 確かに、それで制限があるようなら理不尽すぎる。


「で、他の条件ってのは?」


 俺はややズレてしまった話の軌道修正に掛った。

 するとまあ、簡単に話の道筋は元に戻り、ユカは俺の問いに答える。


「ジャイアントキリングの意味通りだよ。弱者である事がジャイアントキリングの条件。それも弱ければ弱い程補正は高くなる。だからだよ、ユウキ君のレベルが一気に上がったのは。三層のモンスター相手に、レベル三のプレイヤーが活躍するなんてあまりにも想定外で……その想定外に見合った経験値がユウキ君に入ったんだ」


 想定外……まあそうだろう。

 だれか強い奴とではなく……俺達は全員が一層で戦うのもやっとなレベルだったんだから。


「まあ細かいことを言えば、ラストアタックボーナスってのもあるんだけど、それはジャイアントキリングに比べたら微々たるものだよ。とにかくレベルアップおめでとう」


「ああ、ありがとう……で、ユカ。お前のレベルはどうなった?」


 とりあえず気になって尋ねてみた。


「ユウキ君と同じで、十七だよ」


「え……でもお前、俺よりもずっとレベル高かったのに……」


 ユカのレベルは十一だった。今のレベルを考えると、たったの六しか上がっていない事になる。まあレベルが六も上がる事も十分異常なのだが。


「言ったでしょ? ジャイアントキリング。私や他の攻略組の皆も、ジャイアントキリングの恩恵は受けているんだろうけど、やっぱりレベル3で倒すってのがイレギュラー過ぎたんだよ。だから追いついたんだよ」


 なるほど……だから、俺以外の誰も騒いでいないのか。

 俺程に一気に上がった人はいない。精々三層のモンスターを倒したのだから、この位は上がるだろうといった感情を抱く位だと思う。


「……って、ちょっと待てよ」


 俺達はブレイククラブの経験値を半分予め貰っている。そしてその残り半分を分配したわけだから、他の攻略組は必然的にユカよりも所得経験値が少ないという事になる。

 つまり……つまりだ。


「レベル十七って……今のSLOで最強なんじゃ……」


 さっきまで一端の雑魚プレイヤーだった俺が……そんな立ち位置に立っているんじゃないのか?


「多分……そう……なんじゃないかな」


 ユカも今その事に気づいたように、半信半疑っぽく静かにそう言う。

 嘘だろおい……マジかよ。


「お、おいユウキ! 俺レベル十六になってんだけど!」


 今更気付いたかの様に、ヨウスケが大きめな声で俺達にそう言いながら、チカとともに、こちらに小走りでやってきた。

 そしてその声は……どうやら、盛り上がっていて俺達の会話を耳にしていなかったと思われる攻略組の面々にも届いたようだった。


「レベル十六……本当かい?」


 ハリスさんがヨウスケにそう尋ねる。


「は、はい……十六です。ハリスさんは?」


「十四……なるほど、これが噂のジャイアントキリングって奴か」


 どうやらハリスさんはジャイアントキリングの事を知っているようだった。もしかしたら、公式サイトにでも乗っていたのかもしれないな。


「という事は、他の三人のレベルも同程度まで上がっているのか?」


「俺とユカは十七でした」


 俺が代表してそう答え、


「……私はヨウスケさんと同じで十六です」


 と、チカも俺達に続いて答えた。


「いや、あの、なんか……すみません」


 俺は沸きあがってきた罪悪感に揺さぶられ、正直に攻略組の面々にそう謝罪する。


「どうして謝るんだい?」


「いや、だって……なんかズルくないですか? 俺は攻略組がずっとレベルを上げている間……この街に引きこもっていたんですよ。それなのに、たった一回頑張っただけで、ずっと頑張ってた人を追い抜いてしまったのは、なんか申し訳なくて」


 本当に……申し訳なかった。

 俺がそう言うと、場に静寂が訪れた。

 その静寂は約十秒ほど続き……やがて打ち破られる。


 ……笑い声で。


「何言ってんだ小僧!」


 笑いながら、攻略組のハルバード使いの大男が、笑いながら俺の頭をバシンと叩く。


「な、なにすんですか……」


 俺は正直に言って、ものすごい痛かったので若干涙目になりながらその大男に視線を向けた。するとその大男はやっぱり笑ってこう言う。


「俺達は別にレベルを競ってんじゃねえだろ。だから歓迎するぜ最強。ようこそ攻略組へ」


 そう言って彼は俺に手を差し出す。握手しろという事だろうか。

 だとしたら俺に、断る理由は見つからない。

 俺は男の手を握り、周囲の攻略組にこう言ってやった。


「よろしくお願いします!」


 こうして俺は……いや、きっとヨウスケやチカも、名実共に、他のプレイヤーよりも少しだけ早く攻略組の一員となった。

 そして同時に……SLO最強プレイヤーに。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 こうして俺達は、各自ステータスボーナスの振り分けを始めた。


「なあ、ユウキ」


「なんだ?」


「なんというか、この残りステータスポイントの量……半端じゃないな」


「そうだな。あんだけレベル上がったんだし……」


「……とりあえず、変な所にスキルを振らないよう気を付けましょう」


「そうだね。ちゃんと考えて上げないと」


 そういう風に、各々色々と口にしながら、ステータスを上げていく。

 そして俺は今までの二度のレベルアップと同じようなステータスの上げ方を行っていく。

 そしてステータスを上げ終わり、ウインドウを消した時の事だった。


「グァ……ッ!」


 唐突に……一人の攻略組がそんな声を上げたのだ。

 俺達は慌ててその男に視線を向ける。

 さっきまでグリーンの満タンだったHPは……レッドに変わっていた。

 そうして俺達は一斉に周囲を警戒し……そして見た。見てしまった。

 なんとか肉眼で捉えられる様な位置に……ソイツは居たのだ。


「ブレイク……クラブ……ッ」


 一体じゃない。何体もが集まって群れを成している。

 そして……それ以外のモンスターも見受けられた。

 その内の数体が、両手が剣の刀身となった人魚で……地面から数十センチ浮いていた。


「ブレイド……マーメイド……だと……」


「ブレイドマーメイドって、βの時四層のクソ強い洞窟に居た奴じゃないかよ!」


 攻略組の誰かがそんな叫びを挙げる。

 そのブレイドマーメイドってのが、どれ程の強さなのかは分からない。

 だけど……ブレイククラブが一匹では無く、数体居る時点で、つまりはこういう事だった。


 どうしようもなく……絶体絶命。


 俺達は今レベルがある程度上がったが、それでもまだ十七である。俺達よりかはマシだったとはいえ、あまり有効な攻撃を与えられなかったさっきの時点の攻略組より……たったレベルが六高くなっただけなのだ。

 そんな状況で……多人数。しかも別モンスターまで出現。

 そしてこのどうしようもなく絶体絶命な状況下で、俺は……いや、この中の全員がこう思ったはずだ。


 ……もう始まりの街は駄目だ。


 モンスターを入れない安全圏内なんかじゃない。

 どうしようもない……危険地帯なんだと。

 今回は話も投稿期間も長くなりました。

 次回以降はもう少し早く投稿できるよう頑張ります。

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