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Sea Labyrinth Online  作者: 山外大河
一章 ゲームの始まり
2/21

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 ここから本編となります。

 二千三十年、七月二十一日。この日は高校の夏休み開始日であると同時に、待ちに待ったVRMMO。≪Sea Labyrinth Online≫の正式サービス開始日でもあった。


「ようやくやってきたぞ……SLO!」


 俺はゲーム開始地点である、始まりの街の最南東。召喚の台座で、思ったことをそのまま口にする。

 Sea Labyrinth Online。通称SLOは、VRMMO初となる、海を舞台にした作品という事で、発売直後に完売する程の人気っぷりだった。

 海底から地上に向かって、何層にも渡って広がっているフロアを登り、地上を目指す。

 下から上へと登る事自体はテンプレなのだが、やはり海の中が舞台という珍しさが、コレ程の人気を集めたようだ。

 ちなみに全世界同時販売で、初回ロッドは十万足らず。明らかに需要と供給のバランスがぶち壊れているその生産数は、一度に百万単位のプレイヤーが登録を行うことによるサーバーダウンを防ぐ為という目的があるらしい。まあいくらなんでも少なすぎな訳だが。


「……一生分の運使いきっちまったかな」


 俺が此処に居るという事は、即ち初回ロッドを購入出来たという事だ。今回販売はネットのみで、抽選だったわけだが、その抽選が当たった時は、思わずテンション上がって、別室に居た親父に「うるせえ!」と怒鳴られた程だった。まあ当時の俺にとっては、些細な事でしか無かったわけだが。


「にしても……βの連中が言ってた通り、グラフィックがハンパねえな。これマジでプログラムかよ」


 正面にみえる町並みは、RPGの定番ともいえる中世風の建物が立ち並んでいる。まるで自分がタイムスリップでもしたのではないかと思うほど、クオリティーが高いもので、上層階があるにも関わらず、空もしっかりと再現されていた。

 そして何より凄いのは……俺の立ている後ろの光景だ。


「うーん。このグラフィックだけで、一体どれだけの製作期間を費やしたんだろうか」


 俺は後ろを振り返り、見た光景についてそうコメントした。

 目の前に映っているのは、白い砂浜。青い海。そして海底の景色だ。

 SLOの舞台は、何度も言うが海底だ。

 俺が今立っているのは、物語の舞台となる≪海の聖域≫と呼ばれる、海底に沈んでいる海底の陸地。

 直径五十キロはあろう海の聖域を、設定では結界と紹された透明なガラスの様な物が囲んでいる。

 ちなみに、召喚の台座のすぐ後ろの海は、奥行き百五十メートル程で、その果てに結界が貼られているもんだから、仮に泳いだとしたら、自分は水面に浮いているのに、目の前には海の底の景色が広がっているという、奇怪な現象が起こるはずだ。


「さてと」


 いつまでも景色を眺めていても仕方がない。俺は別にこの風景を見に来たわけじゃないのだ。


「試しにソロで狩りでもやってみますか!」


 パーティーを組んで遊ぶのも絶対に楽しい。だけどまずは一人で狩るのも、また違った楽しさがあるはず。

 そう考えながら、召喚の台座を下り、歩き出したその時だった。


「おーい。山本ー」


 後ろから……聞きなれた声が、俺のリアルネームで呼んできやがった。

 振り返ると、やっぱり知った顔。

 谷洋介。俺のクラスメイトで、俺と同じく偶然SLOの購入に成功した男子生徒だ。


「待てよ山本。俺達一緒に狩りに行く約束してただろー。勝手に待ち合わせ場所からはなれぶふぇら!」


 駆け寄ってきた洋介……いや、ゲーム内アバターの名ではヨウスケの首に、勢いよくエルボーを喰らわせた。

 そしてそのままロック。


「ちょ、うぉい! ギブ! ギブギブ! 何怒ってんだ山本!」


「さあ問題です。俺は何故キレてるでしょう」


「え……あ、その……昨日遊びに行った時、冷蔵庫のプリン勝手に食ってごめん」


「アレお前かよ! 衝撃の事実が此処で発覚したよ!」


 てっきり母さんだと思ったのに……食ったのお前かあああああああああああッ!


「何故だ! 何故人の家の冷蔵庫を勝手に開けた!」


「そこに冷蔵庫があるからだ」


「ここ一番のいい顔で言っても、やってること最悪だぞお前!」


 ……はあ。とりあえずログアウトしたら、母さんに謝っとこう。

 俺はホールドを解いて、そう心中で誓う。

 とまあプリンの事は置いて置いて。


「とりあえずさ……お前は本名で俺の名前を呼ぶのは止めろ。ネットの常識だぞ?」


 個人情報は漏らしていいもんじゃない。

 まあ、容姿が現実と同じな時点で、個人情報も何もないと思うが。


「悪かったよ。えーっと、お前のアバター名は……ユウキ。結局現実と変わらねえじゃねえかよ」


「……お前もな」


 正直いい名前が思いつかなかったのだ。

 まあ、自身の耳でしっかりと言葉を聞くVRMMOで、作ったばかりの名前を呼ばれても、反応出来る自身はねえし……寧ろこういう名前で良かったのかもしれないな。


「で、お前は初期装備とか何選んだ?」


 俺はネットマナー講座を中断し、そんな質問をヨウスケにした。


「俺はカタナ選んだんだけど……まさか被てねえだろうな」


 初期状態では、武器はアイテムボックスに入った状態で、装備はしていない。だからこうして口頭で聞かないと分からない訳だ。


「俺はショートソード……といっても、使ってみて、別の奴に変えるかもしれないけど」


「まあレベルアップ時のポイント分配とかがあるから、レベル2に上がる前には固定しておいたほうがいいと思うぜ? その武器にあったステータスの上げ方や、覚えるべきスキルとかがあるわけだし」


 いい例が、俺の使うカタナの様な近接武器と、魔法使い用の杖みたいなものだ。魔法使いに筋力は殆どいらないし、逆もしかり。だからステータスを上昇させる前の、早い段階から、武器は固定しないといけない。


 ステータスをリセットできるアイテムがあると、βの情報に書いてあったが、激レアアイテムらしいし、期待しない方がいいからな。


「まあ、とりあえずだ……狩り行こうぜ」


 俺は早く狩りがしたい為、せかす様にそう提案する……が、ヨウスケは右手の平を俺に向け、こう言う。


「まて……もう一人パーティメンバーを増やそう」


「いや、二人で十分じゃねえか?」


「いや、三人は欲しい」


「なんで?」


「なんとなくだ!」


 オイオイ……特に理由ねえのかよ。


「まあ……分かったよ。確かに俺ら初心者な訳だし、もう一人位いた方が安心かもな」


「よし! じゃあ可愛い女の子を探しに行こう! すぐ行こう!」


 うん。全然何となくじゃないな。お前ただ単に、パーティに可愛い女の子入れたいだけだろ。

 俺はため息を付きながら、心の中でそうツッコむ。


「ああ! 出会いがほしい!」


 とりあえず……お前はSLOにログインするのではなく、出会い系サイトにログインするべきではないだろうか。お勧めはしないが。


「じゃ、探しに行こうぜ!」


「お、おう」


 まあ……確かに可愛い女の子は居るに越したことは無いもんな。乗ってやるよ、今回は。

 そう心で呟きながら、俺は歩き出したヨウスケの後を追った。

 完全に説明回になってしまいました。

 次回からはテンポ良く行きます。

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