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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ハハッハハッハハ

作者: らり
掲載日:2026/07/21

アルスは戦場だった魔王城の玉座の間で、一人でずっと笑っていた。


彼の足元には、細切れになった魔王の死体。

そしてその横には、旅を共にした仲間たちの生首が転がっている。

しかし、アルスの瞳に映る彼らは、皆一様に笑顔で拍手を送ってくれているように見えた。


「みんな、お疲れ様。俺は一足先に実家に帰るよ」


アルスは仲間たちの首から丁寧に装備を剥ぎ取り、カバンに詰め込んだ。

これを村へのお土産にするのだ。

彼にとって、世界はすでに眩いほどの幸福に満ちていた。


帰郷の道中、アルスはすれ違う人々を眺めながら確信を深めていく。

行き交う旅人も、街の門番も、みんなアルスを見て顔を歪めていた。

怯え、震え、ある者は腰を抜かして悲鳴を上げている。

だが、アルスの歪んだ脳内では、それがすべて「英雄を称える大歓声と満面の笑顔」に変換されていた。


「ありがとう! みんな、平和になって良かったね!」


アルスは血まみれの剣をぶんぶんと振り回した。

引きつった笑みを浮かべる民衆に手を振り返しながら、スキップ混じりで故郷へと急いだ。

彼の頭の中では、陽気な祝祭の音楽がずっと鳴り響いていた。


夕暮れ時、懐かしい故郷の村が見えてきた。

村の入り口には、アルスの帰りを待ちわびていた村人たちが集まっている。


「あ、アルスが帰ってきた……!」

「おい、あの格好、何なんだよ……」


村人たちは恐怖に顔を青ざめさせ、後ずさりした。

アルスの身体は、魔王の呪いと浴び続けた返り血のせいで、どす黒い瘴気を放っていた。

目の焦点は完全に合っておらず、口元だけが耳元まで裂けるかのように吊り上がっている。


「ただいま! みんな、待たせてごめんね!」


アルスが駆け寄ると、村人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。

しかし、アルスの目には、彼らが自分を歓迎して嬉しそうに駆け寄ってきているように見えていた。


「ハハハ! 恥ずかしいな、そんなに歓迎しないでよ!」


アルスは優しく抱きつくつもりで、逃げ遅れた村人の首を掴んだ。

指先に信じられないほどの魔力がこもり、肉の爆ぜる音が響く。


「ぎゃあああああ!」

「わあ、みんな本当に大興奮だ!」


耳を突き刺す悲鳴は、アルスの耳には「万歳三唱」のコーラスにしか聞こえない。

彼は実家のドアを勢いよく蹴り開けた。


「お母さん! ただいま!」


奥の台所から、年老いた母親が震えながら姿を現した。

息子の異様な姿、そして外から聞こえる凄惨な悲鳴に、母親は腰を抜かして床にへたり込む。


「ア、アルス……? あんた、その目は……その身体は……」


母親の顔は恐怖で涙と鼻水に塗れ、絶望に歪んでいた。

しかし、アルスの狂った視界に映る母親は、涙を流して自分の無事を喜ぶ、世界で一番優しい聖母の笑顔だった。


「おかえりって言ってるんだね、お母さん。うん、ただいま!」


アルスは母親に近づき、愛おしそうにその両肩を掴んだ。

しかし、彼の狂気はすでに肉体の制御すら失わせている。

アルスの手が触れた瞬間、母親の肩の骨がバキバキと音を立てて砕けた。


「ひぐっ……あ、ああ、痛い、痛い裏ッ……! アルス、やめて、私はお前の母親だよ……!」


母親は激痛に狂いながら、必死に息子を見上げた。

その必死の拒絶の表情を見た瞬間、アルスの脳内で、何かが決定的に弾けた。


「……あれ? お母さん」


アルスの笑顔が、ぴたりと止まる。


「なんでそんなに嬉そうなの? 魔王が死んだのが、そんなに嬉しいの?」

「あ、アルス……?」

「俺が死に物狂いで戦っている間、ここでぬくぬくと待っていただけのくせに」


アルスの瞳から完全に光が消えた。

彼の脳内で、母親の表情が、自分をあざ笑う「魔王の嘲笑」へと変貌していく。


「お前も魔王だったんだね」

「え……? あ、あ……」

「俺を騙して、ここに誘い込んで、殺そうとしたんだろ!? 殺してやる、魔王め! よくも俺の母親に化けたなあああ!!」


アルスは狂乱の絶叫を上げながら、腰の鉄の剣を抜いた。

我が子を制止しようと伸ばされた母親の手を、容赦なく斬り飛ばす。


「ギャアああああああ!!」

「死ね! 死ね! 死ねええええ!!」


アルスは馬乗りになり、すでに抵抗できなくなった母親の胸を、何度も、何度も、肉の塊になるまで剣で突き刺し続けた。

返り血が彼の顔を赤く染めていく。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


数十回刺したところで、ようやくアルスは手を止めた。

ゼーゼーと荒い息を吐きながら、ふと、目の前の死体を見る。


狂気のフィルターが、一瞬だけ外れた。


そこに横たわっていたのは、魔王の化け物などではない。

自分が世界で一番愛し、守りたかった、ただの年老いた母親の無惨な死骸だった。


「……お母、さん?」


アルスは自分の両手を見た。

母親の血で真っ赤に染まった手。

その皮膚の隙間から、黒い魔王の瘴気がジワジワと染み出してくる。


「ああ、そっか」


アルスはすべてを理解した。

歪んだ笑みが、再びその顔に戻ってくる。


「俺が、お母さんを殺したんだ。……じゃあ、俺が魔王だね」


実家から一歩外へ出ると、怯えきった村人たちが遠巻きに彼を見ていた。

新しく誕生した魔王アルスは、ボロボロの剣を肩に担ぎ、村人たちに向かって最高の笑顔を向けた。


「みんな、ただいま。今から、全員殺してあげるね」


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