2-1rep
魔王城へと続く、果てしなき北の大地。
魔法都市を追い出された私たちが歩む道は、あまりに過酷だった。
「うぉぉぉぉ! 肉だ! 肉が食いてぇ! 焼けた赤身の肉を貪りてぇぇぇ!!」
先頭を歩くガストンさんが、魔物の咆哮もかくやという雄叫びを上げる。
「あの……」
「確かに。そろそろプロテインの粉も底を突きそうです。これは死活問題ですね」
バジルさんが、空になった大きな袋を悲しげに揺らす。
「そろそろ……」
「うん、それは不味いね。カタボってしまう……。筋肉がしぼむ恐怖は、死の恐怖よりも重い」
リーダーのアドニスさんが、深刻な顔で自分の大胸筋の状態をチェックしている。
「……私をパスしながら歩くのを、やめてください……。中身が、ヴォエッ!」
私は今、アドニスさんとガストンさんの間で、放物線を描きながら空を舞っていた。
「あぁごめんごめん! 食料も減ってきて負荷が足りないから、ついモヤシちゃんを 『メディシンボール』 みたいに扱ってしまったよ」
アドニスさんが、私を軽々と片手でキャッチしながら爽やかに笑う。
「おい豆苗! 勿体ないから吐くなよな! お前の中身が出ちまったら、さらに軽くなってトレーニングにならねぇだろ!」
「ティミ嬢、本当に申し訳ないが……今の我々には、絶望的に『重さ』が足りないのですよ」
……うぉえ。
こんな痩せっぽちの私をボール代わりにしてキャッチボールをしたところで、彼らのバルクには微々たる負荷にしかならないはずなのに。
「でも、そろそろ何かで稼がないと、路銀も少ないし……」
そう、この頃には、私はこの「筋肉の暴走列車」のブレーキ役として、財布の管理を任されるようになっていた。えっへん。
とりあえず、私たちは食料と「重さ」を求めて、近くの宿場町へと滑り込んだ。
そこで私の目に飛び込んできたのは、あまりにも不吉な看板だった。
【健康少女フィジークコンテスト:開催!】
賞金:銀貨5,000枚 & 高級プロテイン3ヶ月分
参加資格:BIG3(スクワット・ベンチプレス・デッドリフト)の合計が200kg以上であること
嫌な予感がして、恐る恐る後ろを振り返る。
そこには、スクワットの神様が降臨したかのような、三人のマッスルコーチたちの「六つの瞳」が、ギラギラと私を見下ろしていた。
「…………」
お父さん、お母さん。
「 参加資格」という名の、新たな地獄の門が開こうとしています。
やっぱり、私は選択を間違えたのかもしれません。




