第7話 雷神の娘
はじめまして。筑紫隼人です。
本作は戦国時代の九州を舞台にした歴史小説です。
主人公は「西国無双」と呼ばれた武将、立花宗茂。
島津・龍造寺・大友が争った九州戦国史を中心に描いていきます。
史実をベースにしつつ、人物の会話や心理描写は創作も交えて書いています。
歴史好きの方に楽しんでいただければ嬉しいです。
立花城の広間に家臣たちが並んでいた。
上座に座るのは雷神。
立花道雪。
その前に若い武将がいる。
立花統虎だった。
道雪が言った。
「今日から立花の当主はお前だ」
広間が静まり返る。
統虎は頭を下げた。
「承知しました」
道雪は続けた。
「そして」
「誾千代の夫でもある」
その言葉で空気が変わった。
襖が開く。
入ってきたのは
立花誾千代だった。
鎧姿。
槍を持つ女城主。
誾千代は統虎を見る。
「立花は弱い男はいりません」
統虎は少し笑った。
「では」
「試しますか」
庭だった。
二人は槍を構える。
誾千代の槍は速い。
鋭い。
だが統虎は受ける。
三合。
五合。
やがて統虎の槍が誾千代の肩先に止まった。
誾千代は少し驚いた顔をした。
そして槍を下ろす。
「……強いですね」
その日の夕方。
小さな宴が開かれた。
統虎の家督を祝う席だった。
家臣たちが酒を飲み笑っている。
そこへ襖が開いた。
広間の声が止まる。
誾千代だった。
だが鎧ではない。
白い小袖。
紅の帯。
長い黒髪が肩に落ちている。
統虎は思わず見つめた。
家臣たちも言葉を失う。
槍の女城主ではない。
絶世の美女だった。
誾千代は眉をひそめる。
「何ですか」
統虎は言った。
「きれいですね」
誾千代は一瞬止まった。
そして顔をそむける。
「当たり前です」
だが耳は少し赤かった。
夜。
統虎は部屋の前で立ち止まっていた。
襖の向こうには誾千代。
夫婦となって最初の夜だった。
統虎は襖を開ける。
誾千代は小袖姿で座っていた。
昼の誾千代とは別人のように静かだった。
しばらく沈黙が続く。
誾千代が言う。
「……何か言ってください」
統虎は笑った。
「戦より緊張します」
誾千代は少し笑った。
「私もです」
しばらくして誾千代が言った。
「一つ約束してください」
「立花を守ってください」
統虎は迷わず答える。
「もちろん」
誾千代は小さく頷いた。
そして言った。
「それなら」
「夫でも許します」
その夜。
立花の夫婦は
少しだけ近くなった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
岩屋城の戦いは戦国時代でも屈指の壮絶な戦いとして知られています。
わずか数百の兵で三万の島津軍に立ち向かった高橋紹運の最期は、九州戦国史でも非常に有名な出来事です。
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