第6話 立花の槍
はじめまして。筑紫隼人です。
本作は戦国時代の九州を舞台にした歴史小説です。
主人公は「西国無双」と呼ばれた武将、立花宗茂。
島津・龍造寺・大友が争った九州戦国史を中心に描いていきます。
史実をベースにしつつ、人物の会話や心理描写は創作も交えて書いています。
歴史好きの方に楽しんでいただければ嬉しいです。
立花城の朝は早い。
まだ山に霧が残る頃。
城の庭では槍の音が響いていた。
高橋統虎は槍を構える。
目の前にいるのは
立花誾千代。
立花家の当主であり、この城の主だった。
誾千代の槍が動く。
速い。
統虎はそれを受け止めた。
乾いた音が庭に響く。
兵たちは遠くからその様子を見ていた。
立花城で最も強い二人だからだ。
誾千代が言った。
「遅い」
統虎は構え直した。
再び槍が交わる。
誾千代の動きは鋭かった。
迷いがない。
やがて誾千代は槍を止めた。
「なぜ立花に来たのですか」
統虎は少し考えた。
そして答えた。
「強くなりたいからです」
誾千代は統虎を見た。
「なぜ」
統虎は言った。
「九州は戦になります」
誾千代の目がわずかに動いた。
統虎は続けた。
「その時」
「負けたくない」
誾千代は槍を下ろした。
「島津」
南の覇者の名だった。
誾千代は静かに言った。
「立花は負けません」
その時だった。
背後から声がした。
「その通りだ」
二人は振り向いた。
そこにいたのは
立花道雪だった。
輿に乗っている。
だがその目は鋭かった。
道雪は統虎を見た。
「統虎」
統虎は膝をついた。
「はい」
道雪は静かに言った。
「今日からお前は立花の男だ」
庭が静まり返る。
それは養子として、この家に入るという意味だった。
道雪は続けた。
「お前は立花の槍だ」
「この家を守る槍だ」
統虎は深く頭を下げた。
誾千代は静かにそれを見ていた。
山の霧がゆっくりと晴れていく。
道雪は空を見上げた。
「九州は荒れる」
「島津が来る」
その声には確信があった。
そして統虎を見た。
「逃げるな」
「立花は逃げぬ」
統虎は答えた。
「はい」
短い返事だった。
だが迷いはなかった。
その日。
一人の若者が立花の家に入った。
高橋統虎は、立花統虎になった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
岩屋城の戦いは戦国時代でも屈指の壮絶な戦いとして知られています。
わずか数百の兵で三万の島津軍に立ち向かった高橋紹運の最期は、九州戦国史でも非常に有名な出来事です。
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