表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷に打たれた軍神に拾われた少年、やがて西国無双になる ―立花宗茂戦記―  作者: 筑紫隼人
第四章「義の人」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/51

第41話 天下の風

【第四章 義の人】


勝ち負けより、大事なものがある。——宗茂は、知っていた。



帰ってきた。


柳川。


秋の水路が、光っている。柳が、揺れている。


「……変わっていない」


馬を止める。しばらく——ただ、見ていた。



城門前。


誾千代が、立っていた。


「お帰りなさい」


「……ただいま」


二人は、それだけ言った。それで——十分だった。



城内。


誾千代が、茶を出す。


宗茂は、縁側に座る。


花宗川の水音が——聞こえる。


「……静かだな」


「はい」


「朝鮮とは——違う」


「当然です」


誾千代が、隣に座る。


「露梁の話——聞かせてもらえますか」


「……長い話になる」


「時間はあります」



しばらく——水面を見ていた。


「島津と——共に戦った」


誾千代が、少し間を置く。


「……父上の仇と」


「ああ」


「後悔は」


「ない」


一拍。


「敗軍を討つは——武家の誉れにあらず」


誾千代は、頷く。


「……殿らしい」



夜。


眠れなかった。


天井を見る。


柳川に戻るたびに——眠れない。静かすぎて。


だが——今夜は、違う理由だった。



天下が、動いている。


秀吉が死んで——誰もが、次を見ている。


家康が。三成が。諸将が。


「……どう動く」


独り言。誰も、答えない。


だが——


宗茂の中では。すでに——答えが、あった。



翌朝。


誾千代と、花宗川を歩く。


水が、流れている。民が、頭を下げる。子供が、走る。老人が、笑う。


「……これだ」


「何が、ですか」


「守るべきものが——ここにある」


誾千代は、水を見る。


「はい」


「だから——間違えられない」



誾千代が、宗茂を見る。


「……何かを、決めましたか」


宗茂は、答えない。


水の音が、続く。


「誾千代」


「はい」


「お前は——どう思う」



誾千代は、しばらく——花宗川を、見ていた。


「立花は」


静かに、言う。


「秀吉公に、育てていただきました」


「ああ」


「柳川も——秀吉公から、いただきました」


「ああ」


「ならば——」


一拍。


「答えは、一つです」



誾千代を、見る。


誾千代は、前を向いたまま。


「勝ち負けは——関係ありません」


「……そうだな」


「義のために——動いてください」


「……ああ」



風が、吹く。花宗川の柳が、揺れる。



その時。


使者が、来た。


「徳川家康様より——御書状にございます」



宗茂と誾千代が、顔を見合わせる。


「……来たか」


「はい」


「読むか」


「読まねばなりません」



書状を、開く。


「東軍に——加われ」


そして——「法外な恩賞を、約束する」



宗茂は、書状を閉じる。


「どうしますか」


立ち上がる。


「使者を——呼べ」



使者が、来る。


静かに言う。


「秀吉公の恩義を忘れて東軍に付くなら——」


一拍。


「命を絶った方が、よい」



使者が、青ざめる。


「……よろしいので」


「よい」


「徳川様が——」


「伝えろ」


短く。「それだけだ」



使者が、去る。


誾千代が、隣に立つ。


「……決めましたね」


「ああ」


「後悔は」


「ない」


一拍。


「お前と——同じ答えだ」



誾千代は、少し間を置く。


そして——


「……そうですか」


小さく。その口の端が——わずかに、上がった。



天下が、動いていた。


立花は——義のために、動く。


たとえ——その先に、何が待っていても。



次回、第42話「家康の使者」——西軍か、東軍か。宗茂の覚悟が、固まる。


あとがき


41話は「静」の回として書きました。


露梁から帰った宗茂が、花宗川を歩きながら誾千代と話す。その会話の中で——答えが決まる。「義のために動いてください」という誾千代の一言が、この話の核心です。


誾千代は感情的に「行かないで」とは言わない。ただ——立花としての筋道を、静かに示す。この女の強さが、宗茂の背中を押す。


家康からの書状が来て、即座に断る場面で締めました。迷わない。それが宗茂という男です。


次の42話では、その決断の重さを——誾千代との最後の夜として描きます。



【お知らせ:新作戦記ファンタジーも連載中!】

史実の武勇を描く本作とは別に、魔剣を手に戦う王女の復讐劇も始めました。

戦記物としての熱量はそのままに、ファンタジーならではの逆転劇を描いています。


『魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜』

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n9418lx/

王女セリスと魔剣ノイエジールの戦いも、あわせて応援いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2日で500PV突破!】西国無双・立花宗茂、その圧倒的武勇と義理を貫いた生涯を描く本格戦記。雷神・道雪に拾われた少年が、乱世を駆け抜ける!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ