表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷に打たれた軍神に拾われた少年、やがて西国無双になる ―立花宗茂戦記― 【完結済/一気読み推奨】  作者: 筑紫隼人
第三章「西国無双」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/69

第36話 碧蹄館・後

小丸山。

立花勢が、移陣する。

疲れた体で——丘を登る。

宗茂は、頂上に立つ。

眼下に——高陽原が広がる。

明軍の旗が、無数に揺れている。

「……多いな」

十時が、隣で言う。

「何度見ても」

「ああ」

「怖いですか」

宗茂は、少し間を置く。

「怖い」

十時が、目を見開く。

「珍しい」

「怖くない人間は——死ぬ」

一拍。

「怖いから——考える」

兵たちが、丘の森陰に集まる。

座り込む者。水を飲む者。傷を押さえる者。

宗茂は、その顔を、一人ずつ——見る。

疲れている。

痛みを堪えている。

だが——

誰も、逃げていない。

「……よく戦った」

小さく、呟く。

誰にも聞こえない声で。

「殿」

立花成家が、近づく。

「鉄砲隊——二百挺、準備できています」

「よし」

「いつ動きますか」

宗茂は、高陽原を見る。

小早川隆景の先鋒——粟屋と井上が、明軍を牽制し始めた。

「……今だ」

宗茂が、兵たちに向かう。

「聞け」

静かに。

だが——

全員が、顔を上げる。

「一人に——三本の旗を持て」

兵たちが、顔を見合わせる。

「敵に見せる。大軍だと——思わせる」

十時が、頷く。

「……なるほど」

「それだけではない」

宗茂が、続ける。

「金の兜を——日に当てろ」

「日光を」

「反射させる。敵の目を——眩ませる」

準備。

一人が、三本の旗を背負う。

金の兜が、朝の光を受ける。

輝く。

眩しいほどに。

「成家」

「はい」

「鉄砲隊——三連射」

「承知」

「その後——」

宗茂は、刀に手をかける。

「全軍で、突く」

鉄砲が、火を噴く。

一射。

二射。

三射。

煙が、上がる。

「今だ!」

立花・高橋勢——突撃。

金の兜が、光る。

旗が、無数に揺れる。

明軍が——動揺する。

「大軍だ!」

「どこから——」

宗茂が、先頭を走る。

長槍を、構える。

敵将が——向かってくる。

一人。

また一人。

槍が、空を裂く。

斬る。突く。止まらない。

「殿!」

十時の声。

振り返る間もない。

横から——騎馬が来る。

宗茂は、身を捻る。

刃が、空を切る。

そのまま——馬の首を、叩く。

騎馬が、倒れる。

将が、地に落ちる。

「……」

起き上がろうとする将を——

宗茂は、見る。

一瞬。

「退け」

低く、言う。

将は——宗茂の目を見て。

動けなかった。

前へ。

また前へ。

敵将、十五人——討ち取る。

馬が、血にまみれる。

刀が——曲がり始める。

鞘に、戻らない。

「殿!」

成家が、叫ぶ。

「安東が——」

金備え先鋒隊長・安東常久。

李如松と——一騎討ちしていた。

李如松を——落馬させた。

だが——

李如梅の矢が、安東を捉えた。

安東が、倒れる。

宗茂は——それを、見た。

「……安東」

走る。

間に合わない。

安東は——地に伏したまま、動かなかった。

宗茂は、立ち止まる。

刀を、握り直す。

「……行くぞ」

前を向く。

泣く時間は——ない。

戦が、まだある。

明軍の副総兵・楊元が——火器部隊を率いて、現れる。

「……火器か」

十時が、息を飲む。

「宇喜多の戸川と——挟む」

「連携できますか」

「やる」

戸川達安の部隊と——挟撃。

楊元の火器部隊を——撃破。

追撃。

恵陰嶺を越え——坡州へ。

虎尾里まで——六ヶ所、破る。

やがて。

明軍が——退いた。

完全に。

戦場に、静寂が戻る。

宗茂は、立ち尽くす。

血にまみれたまま。

刀は——曲がって、鞘に入らない。

馬の両側に——敵の兜首が、二つ。

「……終わったか」

十時が、隣に来る。

その顔も——血だらけだった。

「終わりました」

一拍。

「生きていますか、殿」

「……生きている」

「よかった」

十時が、その場に座り込む。

「私も——生きています」

「知っている」

「報告しておこうと思って」

宗茂は——

笑った。

声を出して。

久しぶりに。

小早川隆景が、近づいてくる。

馬上から、宗茂を見る。

しばらく——

黙っていた。

「立花」

「はい」

「おぬしの三千は——」

一拍。

「他家の一万に、匹敵する」

宗茂は、頭を下げる。

「……勿体なきお言葉」

「褒め言葉ではない」

隆景が、続ける。

「事実だ」

隆景が、去る。

十時が、立ち上がる。

「……聞きましたか」

「聞こえた」

「他家の一万、ですよ」

「ああ」

「すごいですね」

「……死んだ者には、届かない言葉だ」

十時が、黙る。

宗茂は、戦場を見渡す。

倒れた兵たち。

安東。池辺。

名もなき兵たち。

「……よく戦った」

風が、吹く。

草が、揺れる。

秀吉からの感状が、届いたのは——それから間もなくだった。

「日本無双の勇将たるべし」

宗茂は、その紙を——

長い間、見ていた。

「父上」

小さく、呟く。

「道雪殿」

一拍。

「……見えていますか」

朝鮮の空に——

風が、吹き抜けた。

(第37話へ)

最後までお読みいただきありがとうございます!

次回は**【本日12時】**に更新予定です。

36話で碧蹄館の決着。37話は——戦の後の話です。

碧蹄館から第二次晋州城攻防戦まで。戦闘の合間に、宗茂が朝鮮の地で何を見て、何を感じたか。誾千代への手紙、死んだ仲間への想い、そして長引く戦への疲弊。

戦闘回が続いたので、37話は”静”の回にしますので、ぜひお見逃しなく。

面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたら、

下の**【☆☆☆☆☆】をポチッと評価、

または【ブックマーク】**をいただけると、執筆の大きな励みになります!


【お知らせ:新作戦記ファンタジーも連載中!】

史実の武勇を描く本作とは別に、魔剣を手に戦う王女の復讐劇も始めました。

戦記物としての熱量はそのままに、ファンタジーならではの逆転劇を描いています。


『魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜』

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n9418lx/

王女セリスと魔剣ノイエジールの戦いも、あわせて応援いただけると嬉しいです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2日で500PV突破!】西国無双・立花宗茂、その圧倒的武勇と義理を貫いた生涯を描く本格戦記。雷神・道雪に拾われた少年が、乱世を駆け抜ける!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ