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雷に打たれた軍神に拾われた少年、やがて西国無双になる ―立花宗茂戦記―  作者: 筑紫隼人
第三章「西国無双」

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第35話 碧蹄館・前

夜明け前。

碧蹄館。

霧が、低く漂っていた。

宗茂は、丘の上に立つ。

眼下に、道が見える。

狭い。両側に、丘と林。

「……ここだ」

十時が、隣に立つ。

「布陣、完了しています」

「先鋒は」

「十時惟道。五百」

宗茂は、頷く。

「惟道に伝えろ」

「はい」

「——囮になれ、とは言わない」

十時が、顔を上げる。

「戦え。ただし——引く判断は、惟道に任せる」

「……承知」

夜明け。

霧の中から——明軍が現れた。

騎馬。先鋒だけで——二千。

「……多い」

十時惟道が、前に出る。

五百の兵を率いて。

「怯むな」

低い声。

「立花の先鋒が——何をするか、見せてやれ」

激突。

惟道の五百が——明軍二千にぶつかる。

数で、四倍。

だが——

退かない。

鉄砲が、火を噴く。

騎馬が、倒れる。

「押せ!」

惟道の声が、霧を裂く。

宗茂は、丘の上から見ていた。

「……強い」

十時が、隣で言う。

「惟道が、ですか」

「明軍が」

一拍。

「だが——惟道も、負けていない」

先鋒戦。

一刻——続く。

惟道の五百が、明軍を押し込む。

望客峴の小山まで——追い詰めた。

その瞬間。

明軍の側面から——援軍が現れる。

査大受の本隊。

「包囲される!」

声が、上がる。

惟道の部隊が——囲まれた。

「……まずい」

十時が、息を詰める。

宗茂は、動かない。

見ている。

「殿——」

「待て」

「しかし——」

「惟道を、信じろ」

包囲の中。

惟道は——止まらなかった。

鉄砲で応戦。

霹靂砲の砲撃を受けながら——

「中央を、突け!」

手勢を回転させる。

明軍の中央を——突き破る。

だが——

李如梅の矢が、惟道を捉えた。

「っ……」

馬上で、揺れる。

毒矢。

「惟道!」

部下が、支える。

「……下がれ」

惟道が、絞り出す。

「中陣と——替われ」

惟道が、退く。

旗奉行・池辺永晟が、先鋒の指揮を引き継ぐ。

崩れかけた陣を——立て直す。

「持ちこたえろ!」

宗茂は、丘を降りる。

「動く」

十時が、続く。

「本隊を——どこへ」

「左側面だ」

地図を、頭の中で広げる。

「高彦伯の朝鮮軍が——後詰に来る」

「どこから」

「西だ」

「なぜ分かります」

「地形を見れば——そこしかない」

本隊、八百。

宗茂が、先頭に立つ。

弟・高橋統増が、右翼。

「統増」

「兄上」

「左は、任せる」

「承知」

統増の目が、鋭くなる。

「……死ぬなよ」

統増が、笑う。

「兄上こそ」

疾風のように——

左側面へ、突撃。

高彦伯の朝鮮軍数千が——現れた瞬間。

「今だ!」

奇襲。

朝鮮軍が、崩れる。

宗茂が、斬り込む。

一人。二人。止まらない。

「押せ!」

朝鮮軍——撃退。

だが——

戦は、終わらない。

明軍本体が、まだいる。

李如松の本隊が——動き始めていた。

「……来るか」

宗茂は、息を整える。

血が、手に滲んでいる。

「殿」

十時が、言う。

「兵が——疲れています」

「分かっている」

「休息を——」

「越川峠の北だ」

十時が、地図を見る。

「右側に——退きます」

「ああ」

「そこで——」

「待つ」

立花勢が、峠の右側へ移動する。

疲れた兵が、座り込む。

息を整える。

水を飲む。

宗茂は、立ったまま——

戦場を、見ていた。

「池辺が——」

十時の声が、硬くなる。

宗茂は、振り返る。

池辺永晟。

先鋒の指揮を引き継いだ男が——

突撃戦の中で、倒れていた。

静寂。

誰も、声を出さない。

宗茂は——

目を閉じる。

一拍。

「……池辺」

小さく、呼ぶ。

答えは、ない。

「よく——戦った」

十時惟道も、陣に戻ってきた。

顔が、青い。毒矢の傷。

「惟道」

「……殿」

「無事か」

「無事では——ありません」

「そうか」

「ですが——死にません」

宗茂は、惟道を見る。

「……そうか」

一拍。

「後ろにいろ」

「嫌です」

「命令だ」

惟道は——黙って、頷いた。

午前。

小早川隆景の先鋒が——ようやく、現れ始める。

粟屋景雄と井上景貞の旗が、見える。

「……来た」

十時が、言う。

「はい」

「だが——まだ足りない」

「本隊が来るまで——」

「もう一度、動く」

十時が、宗茂を見る。

「疲れた兵で——ですか」

「ああ」

「無茶です」

「そうだな」

一拍。

「だが——ここで止まれば、隆景殿の先鋒が潰される」

宗茂は、兵たちを見る。

座り込んでいた兵が——

顔を上げる。

「……立てるか」

誰も、答えない。

だが——

一人が、立つ。

また一人。

また一人。

全員が、立っていた。

「行くぞ」

短く。

「はっ!」

立花勢が——再び、動き出す。

疲れた体で。

血にまみれたまま。

碧蹄館の戦いは——

まだ、終わっていなかった。

(第36話へ)

最後までお読みいただきありがとうございます!

次回は**【本日8時】**に更新予定です。


36話は——碧蹄館・後半。

午前中の死闘から、午後の逆転へ。金備えの奇襲、李如松との一騎討ち、そして隆景の「他家の一万に匹敵する」という評価で締めます。シリーズ最大の戦闘回の決着!という展開になりますので、ぜひお見逃しなく。

面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたら、

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