表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷に打たれた軍神に拾われた少年、やがて西国無双になる ―立花宗茂戦記― 【完結済/一気読み推奨】  作者: 筑紫隼人
第三章「西国無双」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/70

第31話 柳川

秋。

筑後の風は、柔らかかった。

行軍の足音が、変わる。

山道から、平野へ。

水の匂い。

「……川だ」

兵の誰かが、呟く。

筑後川。

その先に——

柳川。

宗茂は、馬を止める。

見渡す。

水路が、街を縫っている。

水の城。

「ここが——」

十時が、隣で言う。

「立花の領地です」

城門前。

人が、並んでいた。

家臣たち。

城下の民。

そして——

その中央に。

一人。

立花誾千代。

宗茂は、馬から降りる。

歩く。

誾千代の前に、立つ。

しばらく——

二人とも、何も言わない。

誾千代が、先に口を開く。

「遅かったですね」

「……そうだな」

「心配しました」

「した覚えはないだろう」

誾千代の目が、細くなる。

「……少しだけ」

家臣たちの間から、笑いが漏れる。

十時が、小さく咳払いをする。

宗茂は、誾千代を見る。

誾千代も、宗茂を見る。

「ただいま」

初めて、そう言った。

誾千代は——

一瞬だけ、目を伏せた。

「……お帰りなさい」

城内。

久しぶりの屋根。

久しぶりの畳。

宗茂は、縁側に座る。

庭に、水路が見える。

柳が、風に揺れる。

「……静かだな」

誾千代が、隣に座る。

「戦場と比べれば」

「ああ」

「うるさいですか」

「いや」

一拍。

「好きだ」

誾千代は、答えない。

ただ——庭を見ていた。

夜。

宗茂は、眠れなかった。

天井を見る。

戦場では——眠れない夜が続いた。

だが今は。

静かすぎて、眠れない。

廊下に、気配。

「……眠れませんか」

誾千代の声。

「お前もか」

「私は——考え事です」

「何を」

誾千代が、縁側に座る。

月が出ていた。

「柳川のことです」

「領地の」

「はい」

一拍。

「水路が、傷んでいます。矢部川の流れも——農地に水が届いていない場所がある」

宗茂は、起き上がる。

「……調べたのか」

「当然です」

誾千代は、宗茂を見る。

「殿が戦っている間——私はここを守っていました」

宗茂は、しばらく黙る。

「すまなかった」

「謝罪は要りません」

「では——」

「働いてください」

短く。

宗茂は——笑った。

「そうだな」

翌朝。

宗茂は、城下へ出る。

水路を歩く。

民が、頭を下げる。

「立花様——」

老人が、声をかける。

「此度の戦——ありがとうございました」

宗茂は、立ち止まる。

「島津が退いて——やっと眠れます」

その顔に、皺が刻まれている。

長い戦乱の、跡。

「……待たせた」

宗茂は、頭を下げる。

老人が、目を丸くする。

「殿が——頭を」

「当然だ」

宗茂は、顔を上げる。

「この地を、守れなかった時間がある」

夕刻。

誾千代と、水路沿いを歩く。

二人だけで。

「矢部川の分流——工事を始めます」

誾千代が言う。

「花宗川、と名付けようと思います」

「いい名だ」

「殿が考えましたか」

「お前が決めろ」

誾千代は、少し間を置く。

「……では、花宗川」

「ああ」

水が、流れる音。

柳の葉が、揺れる。

「誾千代」

「はい」

「……ここは、いい場所だな」

誾千代は、前を見たまま。

「そうですね」

一拍。

「だから——守らなければ」

その言葉が。

宗茂の胸に、刻まれた。

夜。

今夜は——眠れた。

だが。

夢の中で。

秀吉の声がした。

「立花よ——まだ終わりではないぞ」

宗茂は、目を開ける。

天井。

月の光。

水の音。

「……分かっています」

静かに、呟く。

柳川の夜は、深く。

穏やかだった。

それが——

続く保証は、どこにもなかった。

(第32話へ)

最後までお読みいただきありがとうございます!

次回は**【本日18時】**に更新予定です。

ついに朝鮮半島に向けて出兵……!という展開になりますので、ぜひお見逃しなく。

面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたら、

下の**【☆☆☆☆☆】をポチッと評価、

または【ブックマーク】**をいただけると、執筆の大きな励みになります!


【お知らせ:新作戦記ファンタジーも連載中!】

史実の武勇を描く本作とは別に、魔剣を手に戦う王女の復讐劇も始めました。

戦記物としての熱量はそのままに、ファンタジーならではの逆転劇を描いています。


『魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜』

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n9418lx/

王女セリスと魔剣ノイエジールの戦いも、あわせて応援いただけると嬉しいです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2日で500PV突破!】西国無双・立花宗茂、その圧倒的武勇と義理を貫いた生涯を描く本格戦記。雷神・道雪に拾われた少年が、乱世を駆け抜ける!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ