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雷に打たれた軍神に拾われた少年、やがて西国無双になる ―立花宗茂戦記―  作者: 筑紫隼人
第二章「継ぐ者」

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第16話 犬尾城・竹井城、連撃

筑後の空は重かった。

夏の湿り気を帯びた風が、戦の気配を運んでくる。


高牟礼城を落とした勢いのまま、立花道雪と高橋紹運は次の標的へと兵を進めていた。


「次は犬尾だな」

紹運が地図を睨む。


輿に乗った道雪が低く応じる。

「うむ。だが、ただ攻めるだけではつまらぬ」


紹運は口元を歪めた。

「また何か仕掛けるつもりか」


「当然だ。儂らは数で劣る。ならば、敵を動かして崩す」


筑後の戦は、単なる力押しでは勝てぬ。

周囲にはなおも龍造寺方に与する勢力が残り、さらに秋月・筑紫らも油断ならぬ。


一つの判断の遅れが、戦局を一気にひっくり返す。



道雪は輿に揺られながら、前方の地形をじっと見据えていた。


低い丘陵。

その奥に広がる集落。

そして、その先にある犬尾城。


「紹運」


「なんだ」


「敵は、こちらが高牟礼で足を止めると思っておる」


「だろうな。普通はそう読む」


「ならば、その裏を突く」


紹運が頷く。

「強行軍か」


「そうだ。夜を使う」



その夜。


大友勢は火を落とし、音を殺して進んだ。


兵の鎧が擦れる音すら許されぬ。

ただ、草を踏む足音と息遣いだけが、闇の中に溶けていく。


紹運が低く言う。

「兵がよく持つな」


道雪は静かに答えた。

「ここで遅れれば、次はない。皆、分かっておる」



夜明け前。


犬尾城の眼前に、大友勢はすでに布陣していた。


城兵はまだ半ば眠りの中にある。


「かかれ」


紹運の一声で、前衛が一斉に動いた。


太鼓は鳴らさぬ。

鬨の声も抑える。


ただ一気に距離を詰め、城門へと圧をかける。



同時に、丘陵に潜ませていた鉄砲隊が火を吹いた。


乾いた銃声が連なり、城壁の上で慌てふためく兵を撃ち抜く。


「伏兵、出せ」


道雪の指示が飛ぶ。


林に潜んでいた兵が一斉に現れ、城の側面へと回り込む。


城兵は完全に対応を誤った。


正面に気を取られた瞬間、側面から崩される。



「今だ、押し切れ」


紹運が叫ぶ。


城門へ取りついた兵が、槌で叩き、火を放つ。


内からは必死の抵抗がある。


だが――


遅い。


すでに戦は決していた。



やがて、城内から使者が現れる。


「降る……開城する……!」


紹運は一瞬だけ道雪を見た。


輿の中の道雪が、静かに頷く。


「受け入れよ」



犬尾城は、わずか半日で落ちた。



だが、休む間はない。


「次は竹井だ」


紹運が言う。


道雪も即座に応じる。

「間を置くな。敵に立て直す時間を与えるな」



竹井城。


ここは容易くはない。


地形はやや高く、周囲には支援に動ける勢力もいる。


「正面からやるか?」


紹運の問いに、道雪は首を振る。


「いや。揺さぶる」


「どうやる」


「焼く」



その日の夕刻。


大友勢は城下へと火を放った。


民家、倉、畑――


炎は瞬く間に広がり、黒煙が空を覆う。


城内は騒然となる。


「城を出るか、籠るか」


その判断を、敵に迫る。



「出てくるぞ」


紹運が言う。


その通りだった。


城兵の一部が、火を止めるため外へ出た。


その瞬間。


「撃て」


鉄砲が火を吹く。


前へ出た兵は、一気に崩れた。



「さらに押せ」


紹運が前衛を突っ込ませる。


混乱したままの敵は、統制を失っていく。



道雪は輿の中で目を閉じ、耳で戦を聞いていた。


銃声。

叫び声。

鉄のぶつかる音。


それらが、戦の流れを語る。


やがて――


「城門、破れました!」


報が届く。


道雪は静かに言った。

「入れ。ただし、無用な殺しはするな」



竹井城もまた、陥ちた。



戦後。


焼け残った城下に、静けさが戻る。


紹運が空を見上げた。


「……速すぎるな」


道雪も頷く。


「速さこそが、今の儂らの武器だ」


「龍造寺も、秋月も、もう油断せんぞ」


「それでよい。正面から来るなら、叩き潰すだけだ」



二人は言葉を切る。


その視線の先には、まだ落としていない城がいくつもあった。


筑後は、まだ完全には戻っていない。


だが――


流れは、確実に大友へと傾き始めていた。



次なる戦場へ。


道雪の輿は、静かに前へ進む。

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【2日で500PV突破!】西国無双・立花宗茂、その圧倒的武勇と義理を貫いた生涯を描く本格戦記。雷神・道雪に拾われた少年が、乱世を駆け抜ける!
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