第14話 筑後奪回の算段
【第二章 継ぐ者】
「わしを討て」——父は、刀と共に命を渡した。
⸻
天正十四年、筑後平野の朝霧が徐々に晴れ渡る頃。
立花道雪は輿に乗って本陣に座り、手元の陣図を見ながら高橋紹運と作戦の最終確認を行っていた。
「猫尾城を制するには、伏兵と鉄砲隊の動きを精密にせねばならぬ」
紹運も頷く。
「儂らの連携次第で、敵は自ら油断する。伏兵は丘陵に潜ませ、前衛は川筋沿いに進め」
輿に揺られながら、道雪は平野の地形を目に焼き付ける。丘陵、川筋、集落の位置を把握し、伏兵や前衛隊の布陣を頭の中で整理する。
「前衛には、城壁の搦手を警戒させよ。鉄砲隊は林を使い伏せ、敵の動きを封じろ」
二人の目の前には、伏兵隊と前衛隊、鉄砲隊がそれぞれの位置につき、動きを待つ兵士たちが整列している。
紹運が声を張り上げる。
「伏兵、動け。敵が油断した瞬間を逃すな」
城方はまだ猫尾城の守りに油断しており、平野に小さな動きが生じただけで警戒を強める。
道雪は輿に揺られながら声をかける。
「伏兵よ、丘陵の位置から出て、城兵を攪乱せよ」
伏兵は林から飛び出し、わずかながら城兵を混乱させる。
紹運は前衛隊に号令をかける。
「前衛、城門付近の搦手を抑えよ」
前衛隊が駆け出し、城兵と小競合いを繰り返す。鉄砲隊の連射が城外に響き渡り、城兵は散開し始める。
道雪は輿に揺られながら周囲を観察する。丘陵に潜む伏兵、前衛の動き、鉄砲隊の配置。すべての動きが計画通りに進むことを確認する。
「紹運よ、城将の椿原正治はまだ油断しておる。タイミングを見計らえ」
紹運が頷く。
その日の午後、伏兵と前衛隊の連携が功を奏し、城兵の動きは完全に制圧される。
「開城を求める」
城門からの報告が届く。
道雪は輿に揺られながら静かに呟く。
「よし、計画通りだ」
両将は兵を城内に整え、混乱を最小限に抑える。伏兵隊は城門前で城兵の動きを封じ、鉄砲隊は警戒を緩めない。
猫尾城制圧の後、両将はそのまま高牟礼城に向かう。
道雪は輿に揺られながら平野を見渡し、敵陣の位置を再確認する。
「伏兵は丘陵に残し、敵の動きを監視せよ」
紹運は兵士たちに号令をかけ、城門前の布陣を整える。
高牟礼城の城将も戦況を見て降伏を決める。
「開城する」
城門が開かれ、計略と布陣の勝利が示された瞬間である。
戦いの後、両将は城内に陣を置き、兵士たちを休ませる。
道雪は静かに呟く。
「耳川の敗北を思えば、この勝利は大きい」
紹運も頷く。
「だが、次の戦いもある。油断はできぬ」
夜、両将は次の攻略対象を確認する。犬尾城、竹井城、星野城。まだ奪うべき城は多く、伏兵、鉄砲隊、前衛の連携をさらに緻密にせねばならない。民心掌握の策も考慮に入れ、戦後処理まで見据える。
月明かりの下、筑後平野には戦の余韻が静かに広がる。
道雪と紹運の戦略眼と兵の忠誠心が、筑後奪回作戦を成功に導いた証である。




