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赤ん坊から始まる最適化無双 〜気づいたら学園も世界も管理対象になっていました〜  作者: 蒼井テンマ


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第7話 赤ん坊、将来の進路を勝手に決められる

決定は、いつも当事者不在で行われる。


それは前世でも、今世でも変わらないらしい。


「……学園への推薦状が、正式に下りました」


教会の使者が、淡々と告げた。


「入学は、十年後」


(……ずいぶん気の長い話だな)


だが、意味は重い。


(十年“確保”された、ってことだ)


父親は、書状を受け取りながら、眉間に皺を寄せている。


「……拒否権は?」


「ありません」


即答だった。


(潔いな)


母親が、思わず声を上げる。


「まだ、この子は……」


「分かっています」


使者は、俺を見る。


その視線は、

もう“赤ん坊を見る目”ではない。


「ですが――この子は、特別です」


(またその言葉か)


前世で何度聞いたことか分からない。


「特別だから残業」

「特別だから任せる」

「特別だから評価が厳しい」


(ろくな思い出がない)



使者が去った後、家の中は静まり返った。


「……学園、だって」


母親が、ぽつりと言う。


「貴族の子ばかりの……?」


父親は、頷いた。


「……ああ。平民じゃ、普通は入れない」


(普通、じゃないからな)


「……危険じゃない?」


「危険だ」


即答だった。


だが、それでも父親は続ける。


「だが……拒めば、もっと危険だ」


(正論すぎて反論できない)


俺は、揺り籠の中で天井を見つめる。


(十年後か……)


長いようで、短い。


(その頃には、歩けるし、喋れるし……)


(たぶん、いろいろやらかしてる)


未来の自分が、容易に想像できた。



数日後。


村に、また別の客が来た。


今度は、教会ではない。


馬車。

装飾。

明らかに、金がかかっている。


(……貴族だな)


「この子が……」


男は、俺を見て、目を細めた。


「噂以上だ」


(噂、どこまで広がってるんだ)


「我が家で預かる、という案もあります」


母親が、息を呑む。


「そんな……!」


父親は、一歩前に出る。


「……それは、できません」


貴族は、驚いたように眉を上げた。


「条件は、破格だが?」


(条件で釣るタイプか)


父親は、首を振る。


「……息子は、物じゃない」


その言葉に、胸の奥が、少しだけ熱くなった。


(……ありがとう)


貴族は、しばらく俺を見ていたが、やがて小さく息を吐いた。


「……そうか」


「だが――」


声が低くなる。


「守れるかな?」


その一言が、重く落ちた。


(……正論、やめてほしい)



夜。


俺は、考えていた。


(……このままじゃ)


(周りが勝手に、ルートを決めていく)


学園。

教会。

貴族。


(どれも、面倒だ)


だが、拒否できる立場でもない。


(だったら……)


(“選ばされる側”じゃなくて)


(“選ばせる側”になればいい)


そのために、今できることは――


泣くこと。

黙ること。

少しだけ、反応すること。


(……調整だ)


翌日。


教会の使者が、また来た。


「……最近、少し落ち着きましたね」


母親が、頷く。


「ええ……夜泣きも減って」


(減らした)


使者は、俺を見て、少し首を傾げた。


「……不思議だ」


(不思議で済ませてくれ)


俺は、赤ん坊らしく、指を口に入れた。


(今はまだ、何もしない)


(でも――)


(学園に行く頃には)


(“向こうが困る側”になってる)


それだけは、確信していた。


――こうして俺は、

まだ歩けもしないうちから、

将来の進路を“確定事項”として扱われる存在になった。


……前世より、スタート地点が早いだけで、

やってることは、だいたい同じらしい。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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