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赤ん坊から始まる最適化無双 〜気づいたら学園も世界も管理対象になっていました〜  作者: 蒼井テンマ


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第6話 赤ん坊ですが、監視対象になりました

それは、すぐに分かった。


視線が、増えた。


(……増えた、というか……固定された?)


赤ん坊の視界は曖昧だ。

だが、それでも「同じ位置に、同じ気配がある」ことくらいは察知できる。


家の中。

村の入口。

井戸のそば。


(……見張り、だな)


あからさまではない。

武装もしていない。

ただ、いる。


いるだけで、十分に圧になる。


「……最近、人が多いわね」


母親が、ぽつりと言った。


父親は答えない。

その沈黙が、答えだった。



名付けの儀から数日。


生活自体は、何も変わっていない。

畑に出る父親。

家事をする母親。

俺は、揺り籠。


だが、空気は変わった。


「教会の方が、様子を見に」


「心配してくださってるそうで」


そう言って訪れる男たちは、

決まって俺を見る。


長すぎる。

測るような目。


(……前世なら、完全に人事評価面談)


赤ん坊であることが、唯一の救いだ。


「かわいいですね」


その言葉の裏に、

**「危険かどうか」**が透けて見える。


(……効率、悪いな)


見張るなら、もっと堂々とやればいい。

中途半端だから、余計に神経を使う。


――そんなことを考えている自分に、苦笑した。


(……いや、赤ん坊の思考じゃない)



ある日、父親が村長と話しているのを聞いた。


「……学園、という話も出ている」


(来たな)


「まだ早すぎるでしょう」


「分かってる。だが……囲い込むなら、早い方がいいと」


囲い込む。


その単語が、妙に生々しい。


(……人材扱いだな、完全に)


村長の声が、低くなる。


「教会だけじゃない。貴族も、嗅ぎつけ始めてる」


(でしょうね)


積み木。

壁の文字。

魔物退散。


(この世界でそれやったら、そりゃ注目される)


「……逃げるか?」


父親が、ぽつりと言った。


母親が、息を呑む。


「この村を……?」


「いや……ユウトだけでも」


その言葉に、胸が少しだけ、ざわついた。


(……それは、やめた方がいい)


理由は明確だ。


(今の俺、守られないと即詰む)


赤ん坊の移動。

隠密。

生存率。


(全部、最低だ)


だが、それを伝える術はない。



その夜。


俺は、泣いた。


理由は単純だ。


(……眠れない)


気配が多すぎる。

空気が張り詰めすぎている。


(……調整、するか)


意識的に、声を出す。


「おぎゃ……」


弱め。

長く。

間隔を一定に。


(……これくらいで)


泣き声が、家の外へ流れる。


すると。


ざわついていた気配が、

少しずつ、緩んでいく。


(……効いてるな)


警戒心が、下がる。

緊張が、解ける。


前世で何度もやった。


会議前の雑談。

張り詰めた空気を、少しだけ緩める技。


(……まさか、泣き声で使うとは)


母親が、抱き上げる。


「大丈夫よ……ここにいるわ」


(……ありがとう)


その腕の中で、俺は考える。


(この世界、たぶん……)


(俺を、放っておかない)


それは、確信に近かった。



翌日。


教会の使者が、正式な書簡を持ってきた。


「定期観察の件ですが……」


「拒否は……?」


父親の問いに、使者は静かに首を振る。


「推奨、です」


(推奨=拒否不可)


母親が、俺を見る。


不安。

迷い。


(……まあ、そうなるよな)


俺は、赤ん坊らしく、欠伸をした。


(どうせ、逃げ場はない)


(だったら……)


(利用できるものは、利用しよう)


赤ん坊にできることは、少ない。

だが――


「最適化」だけは、もう手放せないらしい。


――こうして俺は、

村の赤ん坊でありながら、

教会・貴族・学園の視界に入る存在となった。


そして、この頃から――

周囲は、こう呼び始める。


「あの子は、育ち方を間違えちゃいけない」


……随分と、重たい期待だと思う。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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