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赤ん坊から始まる最適化無双 〜気づいたら学園も世界も管理対象になっていました〜  作者: 蒼井テンマ


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第5話 名付けの儀でやらかしました

村に、鐘の音が鳴った。


普段なら、祭りか、誰かの誕生か、せいぜい結婚式だ。

だが今日の音は違う。


低く、重く、間隔が正確すぎる。


(……これは、呼び出しの音だな)


赤ん坊の俺でも、それくらいは分かる。

前世で何度も聞いた、「上から降ってくるやつ」の合図だ。


「……司祭様が来るそうよ」


母親の声が、硬い。


「名付けの儀を……正式に、だと」


(やっぱり来たか)


教会。

祝福。

正式な儀式。


(全部、面倒な単語しか並んでない)


俺は揺り籠の中で、静かに天井を見つめた。



司祭は、白かった。


服も、髪も、声の抑揚も。

感情がどこにあるのか分からない、整いすぎた人物。


「――この子が、例の」


視線が、俺に落ちる。


(……品定め、やめてほしいんだけど)


司祭の後ろには、村の長と、見慣れない男が二人。

革鎧。

教会の紋章。


(護衛か。いや、監視だな)


「名付けは、神と魂を結ぶ大切な儀式です」


司祭が、淡々と告げる。


「本来は簡素に行われるものですが……今回は、特別です」


母親の指が、俺の服をぎゅっと掴んだ。


父親は、一歩前に出る。


「……何か、問題が?」


司祭は一瞬だけ、視線を逸らした。


「問題、というより――確認です」


(確認。嫌な言葉だ)


部屋の中央に、銀色の器具が置かれる。

円形。

刻まれた紋様。


(……あ、これ)


見た瞬間に分かった。


(積み木と同系統だ)


魔力の流れを、均す構造。

過剰も不足も許さない。


(……正直に言うと、出来は甘い)


だが、言えるはずもない。


「この器具は、名を刻む際に魂の状態を測ります」


司祭が言う。


「過剰な魔力があれば、光が強くなり……」


(やめろ。その説明はフラグだ)


「不足していれば、反応しません」


(どっちも嫌だな)


司祭が、俺を抱き上げる。


視界が揺れ、器具の中心に置かれた。


(……冷たい)


銀の感触が、背中に伝わる。


「――名を、授けます」


司祭の声が、低く響いた。


「この子の名は――」


その瞬間。


胸の奥が、ざわりと動いた。


(……あ)


前世の感覚。


「処理が走る」前触れ。


(まずい。これ、勝手に最適化し始めてる)


司祭が、名を口にする。


「ユ――」


そこで、器具が鳴った。


――キィン。


高く、澄んだ音。


(……ああ、もう)


光が走る。

円形の紋様が、次々と浮かび上がる。


「……これは」


司祭の声が、初めて揺れた。


光は、強すぎない。

だが、均一すぎる。


まるで――

最初から、この器具用に調整されたかのように。


(……いや、違う)


(俺が、合わせた)


無意識に。


魂の揺らぎ。

魔力のムラ。

全部、「こうした方がいい」に整えた。


「……測定値が、安定しすぎている」


護衛の一人が、喉を鳴らす。


「赤子で、こんな……」


司祭は、沈黙したまま、俺を見る。


視線が鋭い。


(……あ、これ)


(完全にロックオンされてる)


「……名は、ユウト」


司祭が、そう告げた。


器具の光が、すっと収まる。


静寂。


「……儀式は、成功です」


そう言いながらも、司祭の表情は硬い。


「ただし――」


父親が、身構える。


「この子は……定期的に、教会での確認が必要でしょう」


(ほら来た)


「魂の安定は、祝福でもあり……危険でもある」


母親が、思わず声を上げる。


「そんな……まだ、赤ちゃんですよ!」


司祭は、静かに首を振った。


「だからこそ、です」


その言葉に、俺は内心で溜息をついた。


(……名付けでやらかすとは思ってたけど)


(思った以上に、派手だな)


儀式が終わり、司祭たちが去った後。


父親は、俺を抱き上げて言った。


「……大丈夫だ」


その声は、少し震えていた。


「父さんと母さんが、守る」


(……それ、かなり難易度高いと思うぞ)


だが、口には出せない。


俺はただ、

赤ん坊らしく、きょとんと瞬きをした。


――こうして俺は、

正式に“名を持つ存在”として、教会の記録に刻まれた。


それが意味することを、

この時の両親は、まだ正確には知らない。


だが一つだけ、確かなことがある。


――もう、

普通の赤ん坊としては、扱われない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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