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赤ん坊から始まる最適化無双 〜気づいたら学園も世界も管理対象になっていました〜  作者: 蒼井テンマ


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25/25

第25話 まだ席は残っているのに戻る前提がなくなりました

出発は、三日後。


それが正式に決まった瞬間から、

学園は俺たちに対して、妙に丁寧になった。



「必要な物資は、こちらで用意する」


「学園名義の装備も貸与する」


「成績評価は、任務完了まで保留だ」


書類は整い、言葉も穏やか。


(……きれいすぎる)


誰も「戻ってこい」とは言わない。

誰も「無事を祈る」とも言わない。


それが、

答えのすべてだった。



教室に入ると、

いつも通りの席があった。


俺の席。

リーナの席。

セラの席。

エリシアの席。


(……まだ、あるんだな)


だが、それは

「帰る場所」ではなく

「記録として残っているだけの場所」に見えた。



授業は、普通に進む。


教師も、普通に当てる。


だが、視線が違う。


(……もう、生徒として見てない)


評価対象でもない。

管理対象でもない。


一時的に外へ出る存在。


それだけだ。



昼休み。


食堂で、声をかけられた。


「……本当に、行くんだな」


合同演習で二位だったチームの一人。


敵意は、ない。


ただの確認だ。


「……はい」


俺が答えると、

彼は少しだけ笑った。


「なら、頑張れ」


それだけ言って、去った。


(……皮肉じゃないな)



セラが、腕を組む。


「なんか、拍子抜けだな」


「もっと騒がれるかと思った」


リーナが、小さく首を振る。


「騒がれない方が、重い」


(……同意)


エリシアは、静かに言った。


「“いなくなる存在”に、

人は深入りしませんわ」


(……それも、真理だ)



その日の夕方。


俺は、一人で訓練場に立っていた。


誰もいない。

魔法陣も、壊れたまま。


(……最初にここで、目を合わせたな)


セラとの初戦。

序列崩壊。


全部、まだ最近のことなのに、

もう遠い。



「……やっぱり、ここか」


声がした。


振り向くと、学園長が立っていた。


(……珍しい)


「少し、いいか」


俺は、頷いた。



学園長は、しばらく何も言わなかった。


それから、ぽつりと。


「本来なら、

君は五年間、ここにいるはずだった」


(……知ってます)


「だが、

その前提が最初から崩れていた」


彼は、俺を見る。


「君は、生徒として優秀すぎた」


(……褒めてないな)


「管理対象として、危険すぎた」


(……正直だ)



「後悔は?」


学園長が、聞いた。


(……今、それ聞く?)


俺は、少し考えた。


「……ありません」


嘘ではない。


「ただ――」


言葉を選ぶ。


「まだ、学園が何なのか、

分からないまま終わるのは、

少しだけ……」


(……心残りだな)


学園長は、小さく笑った。


「それでいい」


「分からないままの方が、

正しい場合もある」



別れの言葉は、なかった。


握手もない。


学園長は、背を向ける前に一言だけ言った。


「席は、残しておく」


(……戻れる前提じゃないな)



夜。


部屋に戻り、

荷物をまとめる。


最低限。

無駄は、入れない。


(……いつもの癖だ)


ベッドに腰掛け、

最後に天井を見る。


(……ここで、寝るのも最後か)



扉が、軽くノックされた。


リーナ。

セラ。

エリシア。


三人とも、言葉は少ない。


「準備は?」


「……終わりました」


セラが、笑う。


「じゃあ、行くか」


エリシアが、静かに言う。


「戻る場所があるかどうかは、

考えない方がよろしいですわ」


リーナが、頷く。


「前だけ見る」


(……それでいい)



こうして、

俺たちは学園を出る。


正式な卒業でもなく、

追放でもなく。


ただ、戻る前提を失っただけ。


それが、

この学園時代の終わりだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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