第24話 行く理由と行かない理由が全部正しかった
結論から言えば――
全員、同じ答えではなかった。
それが、この話し合いを一番きついものにした。
◇
場所は、学園の中庭。
人の少ない時間帯。
監視は、ある。
だが、聞き耳は立てられていない。
(……ここなら)
俺は、三人を見渡した。
「……正式な返事、三日後までです」
誰も驚かなかった。
もう分かっている。
答えを出す時間だ。
◇
最初に口を開いたのは、セラだった。
「私は、行く」
即答。
迷いがない。
「強い奴が必要なんだろ」
「だったら、行く」
(……分かりやすい)
「理由は、それだけ?」
俺が聞くと、
セラは少しだけ黙った。
「……ここにいても、
次はもっと面倒な形で外に出される」
(……核心突くな)
「だったら、
自分で選んだ方がマシだ」
(……覚悟、決まってる)
◇
次に、リーナ。
彼女は、すぐには答えなかった。
視線を落とし、
少しだけ考える。
「……条件次第」
(予想通り)
「情報が足りない」
「任務内容が曖昧」
「帰還保証がない」
淡々と、事実を並べる。
「合理的じゃない」
(……正論)
「でも」
彼女は、顔を上げる。
「断った場合の条件も、
同じくらい不利」
(……そうだな)
「だから、
どちらが不利かじゃなく」
「どちらが制御できるか」
(……なるほど)
◇
最後に、エリシア。
彼女は、最初から結論を持っていた。
「行くべきですわ」
柔らかい声。
だが、断定だ。
「政治的に見て、
これ以上きれいな断り方はありません」
(……身も蓋もない)
「今なら、
“協力的”という記録が残る」
「断れば、
“扱いづらい”という評価が固定されます」
(……怖いのは、そこだ)
◇
三人の視線が、俺に集まる。
(……逃げられないな)
俺は、深く息を吸った。
(全員、正しい)
誰も間違っていない。
だから――
選択が、重い。
◇
「……正直に言います」
俺は、そう前置きした。
「行きたくは、ない」
沈黙。
セラは、驚かなかった。
リーナも、エリシアも。
「危険です」
「保証がない」
「戻れるかも、分からない」
全部、本音だ。
◇
「でも」
俺は、続ける。
「ここに残る選択肢は、
もう存在しない」
(……それが、現実だ)
「断っても、
次は命令になります」
「その時は、
条件はもっと悪い」
誰も、否定しなかった。
◇
「だから――」
俺は、三人を見る。
「行きます」
静かな声。
だが、
それ以上に重い言葉だった。
◇
セラが、拳を握った。
「……よし」
短く、それだけ。
リーナは、少しだけ目を閉じた。
「……なら、準備が必要」
「最悪を想定する」
エリシアは、微笑んだ。
「覚悟、決まりましたわね」
(……その笑顔、怖い)
◇
「ただし」
俺は、続ける。
「条件があります」
三人が、同時にこちらを見る。
(……ここで言わないと、終わる)
「チームで行く」
「誰も、置いていかない」
一拍。
「それが通らないなら、
行きません」
沈黙。
(……強気すぎたか?)
だが、
これは譲れない。
◇
エリシアが、最初に頷いた。
「交渉材料として、十分ですわ」
リーナも、続く。
「チーム前提なら、
制御可能性が上がる」
セラは、笑った。
「当たり前だろ」
(……助かった)
◇
結論は、出た。
だが――
安心は、しなかった。
これは、終わりじゃない。
学園を出るという決断をしただけだ。
その先にあるのは、
安全でも、自由でもない。
それでも。
自分で選んだ分だけ、
まだマシだ。
◇
翌日。
俺は、学園長に返事をした。
「条件付きで、
外部任務を受けます」
学園長は、静かに目を閉じた。
「……そうか」
それだけだった。
もう、引き止める言葉はない。
こうして、
学園時代は――
終わりに向かって、動き出した。
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