第23話 断れるはずなのに断れない話をされました
正式な打診は、思ったよりも早かった。
◇
翌日の朝。
登校してすぐ、
俺たちのチームは再び呼び止められた。
「……またか」
セラが、露骨に顔をしかめる。
今回は、会議室ではない。
学園長室だった。
(……格、上げてきたな)
◇
室内には、昨日の参謀が一人だけ立っていた。
書類も、武装もない。
だが、立ち姿に無駄がない。
「今日は“正式な打診”だ」
参謀は、そう前置きした。
(……来た)
◇
「まず確認する」
「これは命令ではない」
「断ることも可能だ」
(……建前)
「だが――」
一拍、置く。
「断った場合の選択肢は、減る」
(……本音)
空気が、重く沈む。
◇
参謀は、机の上に地図を広げた。
学園の外。
王国領の端。
「魔力異常が発生している地域だ」
「調査部隊を出したが、
近づくだけで循環が乱れる」
(……嫌なやつだ)
「通常の対処では、
被害が拡大する可能性が高い」
(……つまり)
「君が、適任だ」
視線が、俺に向く。
◇
リーナが、即座に口を開いた。
「“君”というのは、
ユウト個人?」
参謀は、首を横に振る。
「チーム単位だ」
(……そこは評価する)
「危険度は?」
「中」
セラが、鼻で笑う。
「信用できるかよ」
参謀は、即答した。
「信用しなくていい」
(……正直だな)
◇
エリシアが、静かに問う。
「学園の立場は?」
参謀は、少しだけ言葉を選んだ。
「学園は――
“送り出す”方向だ」
(……来た)
◇
学園長が、初めて口を開く。
「正直に言おう」
「この学園は、
君をこれ以上、安全に管理できない」
(……それは、責められない)
「外に出ることで、
危険は増える」
「だが――」
「ここに留める方が、
別の危険が増える」
沈黙。
◇
俺は、ゆっくり息を吐いた。
(……綺麗な追い出し方だ)
悪意はない。
合理的。
正論だ。
だからこそ、
拒否しづらい。
◇
「期限は?」
俺が、そう聞くと、
参謀は即答した。
「三日」
(……短い)
「準備期間も含めて?」
「含めない」
(……容赦ないな)
◇
部屋を出た後、
俺たちは無言で歩いた。
中庭まで来て、
ようやくセラが口を開く。
「……行く気か?」
(……直球だな)
俺は、答えなかった。
◇
リーナが、静かに言う。
「行けば、
学園には戻れない可能性が高い」
「断れば――」
言葉を切る。
「もっと不利な形で、
外に出される」
(……詰んでる)
エリシアは、腕を組む。
「政治的には、
“今行く”のが一番被害が少ないですわ」
(……分かってた)
◇
俺は、三人を見る。
(……選択肢は一つ)
だが、
それを即答するほど、
俺は大人じゃなかった。
「……今日は、考えさせてください」
誰も、否定しなかった。
それが、
答えを急かさないことが、
答えは決まっていると
全員が理解している証拠だった。
◇
その夜。
ベッドに横になり、
天井を見る。
(……学園、短かったな)
五年制のはずだった。
まだ、一年も経っていない。
だが――
ここで留まる未来は、
もう存在しない。
俺は、静かに目を閉じた。
次に開くとき、
俺の居場所は、
もう学園の中ではないのかもしれない。
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