第22話 味方が増えたはずなのに逃げ場が減りました
異変は、敵意よりも静かだった。
◇
合同演習から数日。
他チームからの視線は、露骨に減った。
代わりに増えたのは――教師の数だ。
廊下。
訓練場。
食堂の隅。
(……配置、増えてるな)
監視、というほどあからさまではない。
だが、偶然にしては重なりすぎている。
リーナが、小声で言った。
「……警戒、上がった」
「昨日までは、生徒向けだった」
「今日は、大人向け」
(……なるほど)
◇
午後の授業が終わった後、
俺たちは再び呼び出された。
今度は、チーム全員だ。
通されたのは、
前回よりも広い会議室。
(……人数も増えてる)
学園長。
教師数名。
そして――
見慣れない男が二人。
制服ではない。
だが、隙がない。
(……王国側か)
◇
「まず、謝罪しておこう」
学園長が、そう切り出した。
(……珍しい)
「今回の合同演習は、
君たちを“評価”するためのものだった」
セラが、眉をひそめる。
「評価は、終わったんだろ」
学園長は、首を振った。
「いや。評価が想定を超えた」
(……知ってる)
◇
王国側の男が、口を開く。
「王国軍参謀部の者だ」
(……軍か)
「安心してほしい。
今日は命令ではない」
(それ、前置きとして最悪なやつだ)
「ただ――」
視線が、俺に向く。
「君の存在が、
学園の枠を超え始めている」
(……来たな)
◇
エリシアが、自然に一歩前に出る。
「確認させてください」
「本日の目的は?」
参謀は、少し驚いた顔をしてから答えた。
「打診だ」
(……まだ、確定じゃない)
「将来的な、
外部任務の可能性について」
空気が、ぴんと張り詰める。
◇
学園長が、俺を見る。
「誤解しないでほしい」
「これは“処分”ではない」
(……強調する時点で、怪しい)
「だが――」
「学園は、本来、
君を収容し続ける場所ではない」
(……来た)
◇
俺は、静かに聞いていた。
感情は、まだ動かない。
(……予想通りだ)
無双した。
評価された。
その結果――
居場所が、狭くなる。
◇
セラが、苛立ちを隠さず言う。
「つまり、
強すぎるから出て行けってことか?」
参謀は、即答しなかった。
その沈黙が、答えだった。
◇
リーナが、冷静に言う。
「まだ“可能性”の話」
「決定ではない」
参謀は、頷く。
「その通り」
「だが、
準備は必要だ」
(……逃げ道、塞ぎ始めてる)
◇
学園長が、最後に言った。
「今日のところは、ここまでだ」
「だが――」
「君たちのチームは、
今後、学園内での自由行動を制限する」
(……減点)
「代わりに、
特別演習への参加を認める」
(……実質、隔離)
◇
部屋を出た後。
廊下は、妙に静かだった。
セラが、低く言う。
「……面白くねぇ」
リーナは、頷く。
「囲い込みが始まった」
エリシアは、表情を崩さない。
「まだ、優しい段階ですわ」
(……それが一番怖い)
◇
部屋に戻り、
ベッドに腰を下ろす。
(……逃げ場、減ったな)
敵が増えたわけじゃない。
味方が減ったわけでもない。
だが――
選択肢だけが、確実に減っている。
学園にいられる時間は、
思っていたより短いのかもしれない。
そして俺は、
次に来る言葉を、
もう予測できてしまっていた。
――
「君には、学園の外でやってもらいたい」
それが、
命令になるか、
要請で終わるかは――
まだ分からない。
だが一つだけ確かなのは。
もう、
何も起きずに学園生活を続ける未来は、
消えたということだ。
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