第21話 勝ったはずなのに居心地が悪くなりました
変化は、はっきりとした形では現れなかった。
だが――
確実に、空気が変わった。
◇
合同演習の翌日。
教室に入った瞬間、視線が刺さる。
(……増えたな)
好奇心ではない。
賞賛でもない。
もっと湿った――
評価が終わった後の目だ。
「……あいつら、運が良かっただけだろ」
「教師が甘すぎる」
「特別枠がいる時点で、反則だ」
聞こえるようで、聞こえない距離。
(……分かりやすい)
◇
特に顕著だったのは、
演習で二位以下だったチームだった。
彼らは、勝てなかった理由を探す。
そして一番楽なのは――
“自分以外”に理由を置くことだ。
「ユウトがいなければ――」
「調整役がいなければ――」
「貴族が付いてるのも不公平だ」
(……全部、事実ではある)
だが、
それを理由に敵視される筋合いはない。
……と言いたいところだが。
(立場的には、仕方ないな)
◇
昼休み。
食堂で、露骨な事件が起きた。
俺たちのテーブルの前に、
別チームの生徒が立った。
貴族二人。
平民一人。
編成的に、
「実力はあるが、勝てなかった」チームだ。
「……少しいいか」
声は、低い。
セラが、即座に立ち上がる。
「何だ?」
(……待て)
俺は、軽く手で制した。
「……要件は?」
貴族の一人が、俺を見る。
「お前じゃない」
(……来たな)
「特別枠がいなければ、
結果は違った」
(正論でもあり、暴論でもある)
「学園の評価が歪んでる」
周囲が、静まる。
(……教師、見てるな)
◇
リーナが、静かに言った。
「歪んでいるのは、評価じゃない」
「前提」
貴族が、眉をひそめる。
「何だと?」
エリシアが、柔らかく微笑む。
「公式行事は、編成も含めて評価対象ですわ」
(……刺す言い方)
「納得できないなら、
来年も同じ結果を出せばよろしい」
(……完全論破)
だが――
それで終わらないのが、人だ。
◇
平民の生徒が、一歩前に出た。
「……あんたたちが強いのは分かる」
「でも――」
視線が、俺に向く。
「ユウトがいる限り、
俺たちは“正当に評価されない”」
(……これが本音か)
空気が、重くなる。
(ここで言い返すと、完全に敵になる)
俺は、少し考えた。
そして――
否定しなかった。
「……そう思われても、仕方ないです」
場が、凍る。
セラが、驚いて俺を見る。
リーナも、僅かに目を見開いた。
◇
「でも」
俺は、続ける。
「だからと言って、
手を抜くつもりはありません」
「勝った結果は、変わらない」
沈黙。
「それが、不公平だと思うなら――」
一拍、置く。
「次は、
僕抜きで勝ってください」
ざわつき。
(……言ってしまった)
だが、これは挑発じゃない。
選択肢を渡しただけだ。
◇
相手は、何も言わずに去った。
その背中は、
怒りよりも――
焦りを帯びていた。
◇
その夜。
リーナが、ぽつりと言った。
「……敵、増えた」
セラは、腕を組む。
「上等だ」
エリシアは、微笑みを崩さない。
「予想通りですわ」
俺は、ベッドに腰掛け、天井を見る。
(……これが、反動か)
勝った。
評価された。
その代わりに――
居場所が、少しずつ削られていく。
学園は、
安全な場所ではなくなり始めていた。
そして、
この空気を一番正確に理解しているのは――
間違いなく、教師たちだ。
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