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赤ん坊から始まる最適化無双 〜気づいたら学園も世界も管理対象になっていました〜  作者: 蒼井テンマ


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第2話 積み木は魔法陣ではありません(結果的に)

目を覚ましたとき、俺は天井を見ていた。


木目。

素朴で、ところどころ軋んだ跡のある梁。


(……生きてる。というか、続いてるな)


死後の夢にしては、やけに感覚がはっきりしている。

体は相変わらず自由が利かないが、前よりは“マシ”だった。


首が、ほんの少しだけ動く。

指先が、意識すれば微妙に反応する。


(……成長、してる? いや、日単位で?)


考えようとしたところで、視界に影が差し込んだ。


「ユウト、おはよう」


(……名前、呼ばれてる)


女性の声。

あの時の、泣き止んだ瞬間に覗き込んできた顔だ。


母親――たぶん。


抱き上げられる。

世界がぐるりと回り、柔らかい感触に包まれた。


(……落ち着く。これは……反則だろ)


そんなことを考えている自分に、軽く引いた。



数日――いや、数週間か。


時間の感覚は曖昧だが、確実に分かることが一つある。


この世界、俺に対して妙に優しい。


泣けば誰かが来る。

手を伸ばせば、察して物を置いてくれる。

眠くなれば、揺れる。


(……赤ん坊って、こんなVIP待遇だったか?)


そして、ある日。


俺の前に置かれたのは、木でできた簡素な積み木だった。


「ほら、ユウト。これで遊ぼうね」


(遊ぶ……? どうやって?)


掴もうとして、落とす。

持ち上げようとして、ずれる。


(……くそ、指が言うことを聞かない)


だが、不思議と「置く」ことはできた。


一つ、置く。

次に、少しだけ位置をずらして置く。


(……安定する位置、ここだな)


理由は分からない。

ただ、置いた瞬間に「しっくりくる」感覚があった。


さらに一つ。

また一つ。


気づけば、俺は積み木を円形に並べていた。


(……なんで円?)


自分でも分からない。

だが、その配置は、どうしても崩したくなかった。


――その時。


ふわり、と空気が揺れた。


「……え?」


母親の声が、間延びする。


次の瞬間。


積み木の中央が、淡く光った。


(……は?)


「え、ちょ……ちょっと、あなた!」


別の声。

父親、だろうか。


「ユウト、これ……」


二人が息を呑む気配が伝わってくる。


(いや、待て待て待て)


俺は必死に状況を理解しようとした。


(光った? 今? 積み木が?)


だが、体は勝手に次の動作へ移る。


――少しだけ、位置を修正。


その瞬間、光が安定した。


「……魔法陣、だ」


父親の声が、震えていた。


「こんな……基礎構造が、完全に……」


(魔法陣? いや、違う。違うはずだ)


俺はただ、

「倒れない」「無駄がない」「綺麗に収まる」

配置を選んだだけだ。


だが。


「……ユウト、笑ってる……」


母親の声。


(え?)


意識していなかったが、どうやら口元が緩んでいたらしい。


(いや、違う。それは“達成感”だ)


仕事で資料を最適化したときの、あの感覚。

無駄な工程を削り、全体が噛み合った瞬間。


(……ああ、なるほど)


ここで、ようやく腑に落ちた。


(俺、たぶん……“こうした方がいい”が、分かる)


それが、

赤ん坊の手遊びでも、

この世界では――魔法陣になるらしい。


「……この子、誰にも言わない方がいい」


父親が、低く言った。


「教会に知られたら……」


教会。


その単語に、なぜか胸がざわついた。


(……ああ、面倒なやつだ。これ)


俺は積み木から視線を外し、何事もなかったように欠伸をした。


(とりあえず……今日は寝よう)


赤ん坊に出来る最善の対処は、

深く関わらないことだと、前世の経験が告げていた。


――だがその選択が、

後に「祝福の子騒動」と呼ばれる事件の始まりだったことを、

この時の俺は、まだ知らない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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