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赤ん坊から始まる最適化無双 〜気づいたら学園も世界も管理対象になっていました〜  作者: 蒼井テンマ


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18/20

第18話 笑顔のまま立場を固定してくる貴族令嬢が一番怖い

彼女と出会ったのは、放課後の図書館だった。


正確には――

出会うように仕組まれていたのだと思う。



学園の図書館は、静かだ。


それもそのはずで、

ここを使う生徒の多くは、成績上位者か、

あるいは「静かに考える必要のある者」だけだ。


(……後者の意味、重くないか)


俺は、資料棚の前で立ち止まっていた。


王国史。

魔法制度史。

貴族家系録。


(……全部、今後必要になるやつだ)


本を一冊引き抜いた、その時。


「――それ、初年度で読む本じゃありませんわ」


柔らかい声が、背後からした。


(……来たな)


振り向く。


金色に近い淡い茶髪。

完璧に整えられた制服。

微笑みは優雅で、隙がない。


(……貴族令嬢、完成形だ)


「失礼」


彼女は、軽く礼をする。


「私は、エリシア・フォン・ヴァルデン」


(……名門だな)


「噂の“特別枠”さんに、ご挨拶をと思いまして」


(噂、広がるの早すぎだろ)



「噂、ですか」


俺がそう言うと、彼女は微笑みを崩さない。


「ええ。

序列を拒否して、

上位貴族を止め、

教師を困らせている、と」


(……だいぶ脚色されてる)


「事実と違う点は?」


「困らせるつもりは、ありません」


エリシアは、くすっと笑った。


「そこが、一番困るのですわ」


(……なるほど)



彼女は、自然な動作で隣の席に腰掛けた。


許可は、取らない。

だが、不快感もない。


(……距離感、完成してる)


「あなた、味方を作るのが下手ですの」


唐突だが、否定できない。


「序列に入らない、という選択は――」


「敵を作らない代わりに、

守ってくれる“枠”も失う」


(……正論)


リーナと違い、

セラとも違う。


彼女は――

構造の話をしている。



「では、どうすれば?」


俺がそう聞くと、

エリシアは、少しだけ首を傾げた。


「簡単ですわ」


「枠に入らず、枠を作る」


(……簡単に言うな)


「例えば」


彼女は、指を立てる。


「序列外の特別枠」

「教師も扱いに困る存在」

「無闇に敵対すると、問題になる生徒」


(……すでに、そう見られてる)


「そこに」


彼女は、微笑んだ。


「“貴族が一人、付いている”」


(……あ)


(それ、効くな)



「安心してください」


エリシアは、即座に言う。


「私は、あなたを支配したいわけではありません」


(逆に怖い)


「ただ――」


「この学園は、力だけでは動きませんの」


「評判、記録、推薦、会議」


「それらを動かせる人間が、必要です」


(……つまり)


「あなたは、力」


「私は、立場」


(……はっきり言うな)



「取引、ですか?」


俺がそう聞くと、

エリシアは、少し考えてから答えた。


「協力、ですわ」


(同じ言葉でも、重みが違う)


「拒否権は?」


「もちろん」


「ただし――」


彼女は、目を細める。


「拒否しても、

私は“あなたに好意的な貴族”として動きます」


(……詰んでないか?)



俺は、溜息をついた。


(……この人が一番厄介だ)


力で測れない。

敵対しても、美しく微笑む。


(……前世で一番苦手なタイプ)


だが――


「……お願いします」


そう言うと、

エリシアは、満足そうに頷いた。


「賢明ですわ」



その日以降。


学園内で、妙な変化が起きた。


露骨な敵意が減る


教師の態度が慎重になる


貴族席の視線が、計算に変わる


リーナが言った。


「……政治、入った」


セラは、眉をひそめた。


「……面倒くせぇ」


俺は、心の中で同意する。


こうして俺の周囲には――

理論、武力、政治

三つの視点が揃った。


そして学園は、

いよいよ“遊び場”ではなくなる。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


次の投稿からは、1日1回の更新になります。


ブックマークをして、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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