第14話 学園の序列に組み込まれなかった結果、揉めました
学園には、暗黙の序列がある。
成績。
家柄。
魔力量。
そして――教師からの扱われ方。
入学初日で、それはほぼ決まる。
(……まあ、どこの世界も同じだな)
俺は、そのどれにも属していなかった。
◇
「……あいつ、どこの貴族だ?」
「知らない。名簿に家名がなかった」
「平民? なのに特別枠?」
ざわつきは、主に貴族席からだ。
平民側は、遠巻きにして様子見。
近づかない。
(……賢明)
最初の授業は、魔法理論。
教師は、入学式の水晶騒ぎを知っているらしく、
俺を見る目が、最初から慎重だった。
「……今日は、基礎確認だ」
板に書かれる初歩理論。
(……懐かしいな)
分校でやった内容より、少し整理されている。
(……だが、やっぱり回り道が多い)
俺は、ノートを取るふりをして、最低限だけ書いた。
目立たない。
それが、今日の目標だ。
――だが。
「先生」
前の席の生徒が、手を挙げた。
金髪。
自信に満ちた顔。
(……来たな)
「その説明、効率が悪いと思いますが」
教室が、静まる。
教師が、眉をひそめる。
「……君は?」
「アルベルト・フォン・グラディス」
(はい、上位貴族)
「我が家では、もっと洗練された理論を――」
(ああ、マウントの入り方が完璧だ)
教師は、少し困った顔をする。
(……これは)
(誰かが“基準”になる流れだ)
嫌な予感は、当たった。
「……では」
教師が、俺を見る。
「特別枠の君は、どう思う?」
(……やめろ)
全視線が、集まる。
(今日は目立たない日だ)
だが、無視もできない。
俺は、少し考えてから答えた。
「……どちらも、合ってます」
ざわり。
「ただ……」
(言わなくていい)
(言わなくていいが……)
「状況次第、です」
沈黙。
アルベルトが、鼻で笑う。
「逃げだな」
(……来た)
「才能があると聞いたが、その程度か?」
(……ああ、これは)
(序列確認だ)
◇
休み時間。
アルベルトが、取り巻きを連れて来た。
「特別枠」
(名前で呼ばれないの、嫌だな)
「序列に入らない生徒は、困る」
(お前が決めるな)
「模擬実技で、立場をはっきりさせよう」
(……テンプレだな)
俺は、内心でため息をついた。
(断っても、絡まれるだけだ)
「……分かりました」
その返事に、周囲がざわつく。
◇
模擬実技場。
教師立ち会いのもと、簡易戦。
条件は、非殺傷。
魔力制限あり。
(……ありがたい条件だ)
アルベルトは、堂々と前に出る。
魔力量。
詠唱速度。
(……優秀だ)
普通なら、上位。
「行くぞ!」
魔法が放たれる。
直線。
威力重視。
(……読みやすい)
俺は、一歩横にずれた。
それだけ。
魔法は、空を切る。
「……なっ!?」
次の瞬間。
俺は、地面に指を置いた。
整える。
流す。
――空気が、変わる。
アルベルトの魔法が、散った。
威力が、霧散する。
「……何をした!?」
(何もしてない)
教師が、息を呑む。
「……魔力干渉?」
「いや……魔力“調整”だ……」
(……やっぱり、言語化されると厄介だな)
勝負は、それで終わった。
攻撃が、成立しない。
「……終了」
教師が、そう告げる。
◇
沈黙。
アルベルトは、歯を噛み締めている。
「……勝った気でいるな」
(気ではなく事実だが)
だが、俺は首を振った。
「……勝負じゃ、ないです」
それが、逆効果だった。
「……は?」
(あ、地雷踏んだ)
「立場を決めるため、でしたよね」
「……」
「なら――」
俺は、静かに言った。
「僕は、序列に入りません」
一瞬の沈黙の後、
ざわめきが爆発した。
◇
その日のうちに、噂は広がった。
特別枠は、序列拒否
上位貴族が止められた
教師も介入できない
学園は、混乱していた。
だが、学園長は一言だけ言ったらしい。
「……想定内だ」
俺は、その言葉を聞いて、少しだけ安心した。
(……少なくとも、追い出されはしない)
ただし。
序列に入らないということは――
敵も、味方も、自由に作るということだ。
学園生活は、
早くも“静かではいられなくなった”。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




