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赤ん坊から始まる最適化無双 〜気づいたら学園も世界も管理対象になっていました〜  作者: 蒼井テンマ


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13/22

第13話 入学式で静かに座っていただけなのに騒ぎになりました

十歳になった。


王立魔導学園は、本来なら五年制だ。

十歳で入学し、十五歳で卒業する――それが、想定された進路。


もっとも、

その「本来通り」に進む前提が、俺に適用されるかどうかは怪しい。



入学式当日。


石造りの大講堂には、百名以上の新入生が集まっていた。

華やかな貴族服。

緊張した平民の顔。

空気は、期待と優越感と不安が入り混じっている。


(……懐かしいな、この感じ)


前世の入社式を思い出す。


違うのは――

俺が、最初から「評価対象」だという点だけだ。


「新入生は、席に着きなさい」


教員の声に従い、俺は端の方の席に座った。


目立たない位置。

柱の影。

完璧だ。


(……これで、しばらくは大人しくできる)


そう思った、その瞬間。


――空気が、揺れた。


(……あ)


分かる。


これは――

俺が何かしたわけじゃない。


“俺がここにいる”だけで起きるやつだ。


講堂の奥に設置された魔力測定用の水晶が、低く唸り始める。


「……?」


「今の音、何?」


生徒たちがざわつく。


教師の一人が、水晶を見る。


「……誤作動か?」


(違う)


俺は、深く息を吸った。


(……抑えろ)


(今日は、何もしない日だ)


だが、水晶は言うことを聞かない。


光が走る。

だが、数値は出ない。


波紋だけが、静かに、均一に広がっていく。


「……またか」


誰かが、小さく呟いた。


(知ってる人、いるな)


教師たちが、互いに目配せをする。


「……新入生の中に、例の特別枠がいる」


「……始まる前から、これか」


(始まってすらいないんだが)



式は、何とか続行された。


学園長の長い挨拶。

伝統。

誇り。

責務。


俺は、静かに聞いていた。


本当に、静かに。


動いていない。

魔力も流していない。

考え事すら、していない。


(……完璧だ)


――なのに。


「……あれ?」


前の席の生徒が、振り返る。


「なんか……落ち着かない」


(……それ、俺のせいだな)


周囲の魔力が、俺を基準に整い始めている。


歪みが、減る。

ムラが、消える。


結果。


「……魔力濃度、均一化してないか?」


教師の一人が、青ざめた。


「講堂全体が……?」


(……知らん)


(勝手に整うな)



式が終わった直後、俺は呼び止められた。


「ユウト・――特別枠生徒」


(フルネームで呼ばれないの、逆に怖い)


案内されたのは、別室。


中には、学園長と数名の教師がいた。


全員、疲れた顔をしている。


「……君は、座っていただけだね?」


学園長が、確認する。


「はい」


「魔法は?」


「使っていません」


「……だろうね」


溜息。


重たい沈黙。


「本来、この学園は五年かけて教育する場所だ」


学園長が言う。


「だが――」


視線が、俺に向く。


「君の場合、その前提が成立するかは、正直分からない」


(ですよね)


「飛び級か」


「特別課程か」


「あるいは――」


教師の一人が、言葉を濁す。


(……放逐)


俺は、内心で頷いた。


(まあ、どれでも想定内だ)


「一つだけ、約束してほしい」


学園長が、真剣な目で言う。


「……学園を壊さないでくれ」


(それ、俺に言うことか?)


だが、口には出さない。


「……努力します」


学園長は、苦笑した。


「その“努力”が、どこまで通用するかだね」



部屋を出た後。


廊下で、視線を感じた。


好奇。

警戒。

嫉妬。


(……始まったな)


俺は、静かに歩く。


本当は――

五年間、ここで過ごす予定だ。


だが、

その予定が最後まで守られる保証は、どこにもない。


学園生活は、始まったばかりだ。


そして同時に、

終わりへのカウントダウンも、もう始まっている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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