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赤ん坊から始まる最適化無双 〜気づいたら学園も世界も管理対象になっていました〜  作者: 蒼井テンマ


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第10話 教会分校に通った結果、授業が成立しなくなりました

六歳になった俺は、村の外にある教会分校へ通うことになった。

表向きは教育のため。

実際には、集団の中に置いた時に何が起きるかを見るためだ。


教会分校は、思ったより普通だった。


石造りの小さな建物。

簡素な教室。

木の机が並び、子供たちが座っている。


(……まあ、こんなもんか)


前世の学校と比べれば、設備は劣る。

だが、教育の目的は同じだ。


「知識を、均等に配る」


――その時点で、破綻するのだが。



「では、今日は“魔力の流れ”について学びます」


教師が、板に円を書く。


「魔力は、外から内へ――」


(逆だな)


俺は、反射的にそう思った。


正確には、

外と内を循環する。


一方向に限定すると、必ずロスが出る。


(……まあ、聞くだけ聞くか)


だが、問題は周囲だった。


「先生、魔力ってこうじゃないの?」


隣の子が、俺のノートを覗く。


(……見るな)


無意識に描いた図。

循環構造。

最短経路。


「……何、それ」


「分かりやす……」


(やめろ)


教師が、こちらを見る。


「……君、それはどこで習った?」


(来た)


俺は、少し考えてから答えた。


「……考えた」


教室が、静まり返る。


教師は、俺の図を見る。

眉が、わずかに動く。


「……説明してみなさい」


(……詰んだな)


だが、逃げられない。


俺は、言葉を選んだ。


「……無駄が、少ないです」


それだけ言って、指でなぞる。


「ここ、戻りがあるから……安定します」


沈黙。


教師が、板を見て、また俺を見る。


「……授業を、少し変更します」


(やめて)



その日から、授業が変わった。


教師は、最初に俺を見る。

説明する。

俺の反応を見る。


(……やめてくれ)


俺が首を傾げると、説明が止まる。

俺が頷くと、次に進む。


結果。


「……先生、よく分かる!」


「今日の授業、早い!」


(……俺、基準点にされてる)


他の子供たちは、喜んでいる。


だが――


(これ、教育として正しいか?)



問題は、魔法実習だった。


初歩魔法。

光を灯すだけ。


「力を入れすぎるな」


教師が言う。


(……力、いらないんだが)


俺は、指先に意識を集中する。


流す。

整える。


――淡い光。


安定。

揺れなし。


「……え?」


教師の声。


次の子が、真似する。


失敗。


(そりゃそうだ)


「……どうして、できない?」


教師が混乱する。


(前提が違う)


だが、説明できない。



三日目。


教師が、会議に呼ばれた。


その間、俺は別室に移された。


(……隔離、か)


部屋には、司祭と、見知らぬ男。


学園の紋章。


(……もう来た)


「――君が、ユウトだね」


男が、穏やかに言う。


「学園から来た」


(でしょうね)


「分校の授業が……成立しなくなっている」


(事実だな)


「理由を、説明できるか?」


俺は、少し考えた。


(正直に言うと、余計面倒だ)


だから、こう答えた。


「……僕が、いるからです」


沈黙。


男は、しばらく俺を見てから、笑った。


「……自覚、あるんだね」


(ある程度は)


「安心していい」


そう言って、彼は続けた。


「君は、ここで“学ぶ”必要はない」


(知ってる)


「だが――」


声が、少しだけ重くなる。


「ここに“いない”のも、困る」


(つまり)


(扱いに困ってる)



その日の夕方。


父親が、難しい顔で言った。


「……分校は、週に二日だけにしよう」


(妥当)


「残りは……自由学習、だそうだ」


(放置とも言う)


俺は、頷いた。


(……これで、少しは楽になる)


だが、分かっている。


これは――


学園側の“事前観察”が始まった合図だ。


――こうして俺は、

教会分校という「集団教育の場」で、

存在するだけで基準を壊す子供になった。


そして、

学園は正式に俺を――

「例外枠」として記録することになる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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