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6/魔女と夜

 「そんで、なんで泣いとったん?」


 

クラリスは防音結界はもう無意味だと判断し、静かに解除した。冷静な反面、頭の中はどう言い訳するかでいっぱいである。



 「……泣いてない」

 (嘘、見られてた!?うわぁ…恥ずかしんだが、修正効くかなこれ)


 「いやいやいやいや、服の袖びちょ濡れやん、目も腫れぼったいし」



 間違ってはいないが現在、深夜の森の中、照らす物は仄かな月明かりしかない、しかしルドウィンにはしっかり見えているようだった。



 「……見えてるの?」


 「まぁ…見えてしまったというんか、そういうスキルを持ってるというんかな……何かゴメンな」


 「何で謝ってるの?」


 「泣き顔見てもたから、もしかして嫌やったかなて…」


 「……そこも見てたの」



 これまでのことを踏まえて詳しくは分からないがルドウィンは恐らく物を見通す系のスキルを持っているのだろう。しかし上手く使いこなせて無いようだ。



 「見てしまったんはゴメンやけど、アルマが泣くんはよっぽどな気がすんねん!この短期間で何がわかんねんて思うかしれんけど」



 やめて欲しい、本当に心配そうに喋りかけてくるもんだからうっかり素が出てきそうだ。きっとルドウィンはお人好しだから泣いていた私を心配してくれているのに、私は自己中な事しか考えられていない。本当にこんな自分が嫌になる。



 「…だ、大丈夫、ありがと、気にしないで」


 「ほんまに?頼りないかもしらんけど悩み聞くぐらいやったらできるで?」


 「本当に大丈夫、歳のせいで涙腺崩壊してただけだから」



 これも理由の一つで嘘では無い…はず。



 「歳て、おばちゃんみたいなこと言うんやなぁ、一体アルマーていくつなん?」



 自然な流れで年齢の話にすることが出来た。我ながら上手くやったと思う。しかしこれはこれで説明が難しい。なんせ寿命が見えないのだから。



 「………多分400と、少し」


 「ん?よんひゃくとすこし……よ、400と少し!?……いやいや流石に嘘やろ、見た目ほとんどワイらと変わらんやん?てかアルマー冗談言えたんやな?見た感じだと20ぐらいか?けど魔女言うてたしな〜40歳やろか?アルマー正解は?」



 確かに、魔女としてもここまでの年齢は異常だ。冗談だと思われても仕方ない。自身でも年齢は常にうろ覚えなのだ。しかし正確に分からないでもない。



 「えっと……ルドウィン、この国できて何年目?」


 「急に?まぁ、ちょっと前に建国祭あって確か444年て言うてたけど、どしたん?」



 クラリスの予想より年数が過ぎていた。やはり生きすぎると時間感覚が狂ってくるのだろう。



 「そう、じゃあ444歳だ。ごめん少しじゃなかった」


 「?少し、え?謝るとこそこなん?てかなんで謝ってん?……しかも冗談無しで、444歳、国と同い年?信じられんウケるっ、涙腺もそりゃ崩壊ーッッひっ、国と、ひぃっ、息できっ、ふっ、くくっ…どんな、パワーワードやねんっ、ふっ、ひぃーw」


 「……受ける?ぱわーわーど……?」



 お楽しみのとこ悪いがここに来て初めて聞く単語だったので聞き返してみたがルドウィンの笑いが加速していくばかりだった。

 その後、笑い声で起きてきたグレンがルドウィンを回収して行った。 お陰様で陰鬱な気分は無くなったが……なんかモヤッとした。



 ❖ ❖ ❖ ❖



 翌朝、無事魔法陣は完成し、いつでも近くの町まで送れるようにはなった。あとは、グレンとルドウィン次第だ。


 「おはよーさん」

 「おはよう、アルマー話があるんだがいいか?」


 「…分かった」



 どうやら皆考えることは大体一緒のようだった。



 「俺たち戻ろう思うんだ。お陰様で怪我も治ったしな。本当に世話になった。」

 

 「ホンマにな、命の恩人やわ」



 ここまで礼を言われることは無かったので、慣れないクラリスは何だか全身がゾワゾワする感覚がした。加えて自身のために助けただけで、死んでしまっても羨ましいとしか思えない罪悪感もある。



 「……別に善意で助けようと思った訳じゃないし、約束も別に期待してない」


 「理由が何であれ助かったんだ、約束も果たせるよう善処する。」


 「約束ってなんや?」


 「ルドウィンに言ってないの?」


 「悪い、言うの忘れてた。その、約束の内容は、アルマーを倒す事だ。」


 「はぁ?アルマーを倒す?何で?」



 ルドウィンの言う通りだ。グレンは会話の流れで出来なかったのもあるが、普通いきなりそんな事言われてもね受け入れ難いものだ。少し面倒臭いが説明も必要だろう。

 


 「そういえば2人に殺して欲しい理由、話してなかった。大体で良ければ話すけど」


 「聞いてもいいのなら俺は知りたい」


 「ワイも知りたいけど無理はせんでな」


 「そう」



 クラリスは2人の気遣う優しさで泣きそうだった。


 

次回、過去編

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