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第3話「日常と戦争」

モンスターライダー


第3話「日常と戦争」



 研究所。

 その巨大な建物の中に、神里愛の部屋がある。

 愛は戦いの無い間、する事は特にないのでテレビをつけ、景色でも見るように眺めている。

 これ以外に、する事が無い。


 不意に、ドアがノックされた。

「愛ちゃん、居る?」

 北岡真白だった。

「いるよ」

 返事をする。


 真白がドアを開けて部屋に入ってくる。


 真白は、テレビが付いていて、愛がテレビの前のソファに座っているのに気付く。

「あ、ごめん、テレビ見るの邪魔しちゃって」

「ん?ううん、ぼうっと見てただけだから」


 愛は立ち上がり、テーブルの横の椅子へ移動した。

「まあ座りなよ。退屈してたとこだから」

 真白に、向かい側の席を進める。

「ありがと」

 真白はイスに座る。


「で、何の用?」


「愛ちゃん、私はもっと強くなりたい」

「急にどうしたの」

「もっと確実に勝てるように、今からできる事をやりたいの」

「ふうん」

「だから、何か出来る事があったら教えて!愛ちゃんはなんだか何でも知ってそうな気がするから。春菜さんは特にないって言ってたけど」

「つまり、何かトレーニングみたいな事?」

「うん」

「そっか。うーん・・・」


 愛は、考え込んだ。


「わたしは、この間までイメージトレーニングをしてた」

「へえ。どうやってやるの?」

「街の中に出て、その中で実際に戦ってる感じをイメージする。この間までは、戦いがまだ始まって無かったからそれしかする事が無かった」

「じゃあ私も」

「いや。もう実際に戦えるのに、そんな事してもあんまり意味無いでしょ。動くのはわたし達じゃなくてモンスターなんだから」

「でも、戦略の訓練になるんじゃないの?」

「どんな敵がくるのかまだ分からないんだから。それに、真白の場合は【パワード】の能力だって全部は分かって無いのに」

「分かって無いの?」


「モンスターの能力は古代の機械で知る事ができる。でもパワードの能力は、本当はあんなものじゃ無いはず。もっと大きいエネルギーがパワードにはあるよ。感じるから」


「愛ちゃんはどうして、そういうの、わかるの?」


「知りたい?」

「うん。なんか、気になる」


「わたしは・・・」


 その時、真白の携帯電話が鳴った。

「ご、ごめん」

「いいよ。早く出なよ」


 表示に、『手塚春菜』と出ている。

 真白はふたを開け、通話ボタンを押した。


「もしもし」

『真白。わたし。春菜。今どこ?』

「愛ちゃんの部屋にいます」

『お。ちょうどよかった。三人に話したい事があるから、作戦室に来てもらえる?』

「モンスターが出たんですか?」

『ちょっとそれとは関係ないの。厳人君にはもう電話したから、早く来てね。それじゃ』


 電話が、切れた。



 研究所・作戦室。主に作戦立案や会議、ミーティング等に使用する部屋。


 愛と真白。春菜と、浅城真市が集まっている。


 ドアが開いて、浅城厳人が入ってきた。

「すいません、遅くなりました」

 春菜が手を振る。

「いいのよ、急ぎの用じゃないんだし」

「で、何の話っすか」

「ああ、今から説明するから」


 春菜は三人を集めて、その前に立った。


「いい?あなたたちは15歳。そしてもうすぐ、4月になるわね。という事は、高校進学。という訳で、高校を用意しておいたから」


 厳人は驚く。

「え、それって、裏口入学ってことですか!?」

「真白はすでに受験で入ってたから、厳人君と愛は、まあ、そういうことね」


「おれ、高校でやっていける学力無いですよ」

 厳人は文句を言う。

 愛も、言う。

「退屈そうだから、やだ」

「愛。少なくとも、部屋の中にずっといるよりはマシじゃない?」


「そもそも、学校にいる間にモンスターが出たらどうするんですか?」

 と、厳人は言う。

 春菜は。

「学校に設置したワープポイントを使えば大丈夫」

「ワープポイント?」

「使ってみればわかるから」


「春菜さん、私は、いや私たちは、これからずっと契約者として戦っていくんですよね?」

 今度は真白が口をはさむ。

「普通に学校に行っていて、良いんですか?モンスターの事とかの勉強をずっとしてた方がいいんじゃないですか?」

「そうだ。おれは学校行きたくないし」

「わたしも気乗りがしないし」


 3人の抗議。

 対して、春菜は。


「それじゃ、外の社会に出ないで、ずっとここで、ひきこもって暮らすの?絶対に音をあげるよ。すぐに。学校はただ勉強するだけの場所じゃなくて、そうね、一つの社会でもあるから」


「じゃあ、春菜さんたちはどうなんですか?」

 真白は言う。

 春菜も真一も、東条茂も、ずっとここに籠って仕事をしているじゃないか。

「わたし達はいいのよ。大人だからね」


「さて、そういう訳だから、厳人」


 ずっと黙っていた真市がようやく口を開く。

「お前には学校の寮を手配しておいたからな」

「寮?」



「浅城厳人君だね。待っていたよ」

 寮に着くと、初老の男性が出迎えてくれた。

「じゃ、僕はもう行くから」

 ここまで案内してくれた真市は、まわれ右して去って行った。


 初老の、寮の管理人に案内され、部屋までたどり着く。

「佐野ー、入るぞー」

 部屋の前で、管理人は言う。


 しかし、反応は無い。


「どうせまた寝てるんだろう。厳人君。それじゃね。門限とかのルールは壁の紙に書いてあるから」

 管理人は管理人室の方へ戻って行った。


 厳人は、部屋の扉をあける。


 二段ベッドと、机が見えた。


 その机に、頭を載せて寝ている少年。


 厳人と同い年の。ルームメイトで、確か名前は、佐野翔といった。


 厳人はとりあえず荷物を床に置く。

 目の前の少年を見た。管理人のセリフから判断して、いつも寝ているような奴なのだろう。


 少年、佐野翔が突然起きた。


「・・・?」


 寝ぼけているような目で、こっちを見てくる。


 厳人はとりあえず、自己紹介することにした。

「おれは浅城厳人。今日からこの部屋に入ることになった。管理人さんから聞いてるだろ?よろしくな」


「・・・よろしく」


 そう言うと、佐野翔はまた、机に頭を置き、寝てしまった。


「・・・」

 今のは、寝ぼけて一瞬起きただけなのか?

 本当はとっつきやすい奴だといいな。

 とっつきにくい奴とずっと同じ部屋で生活するのは耐えられる自信が無いから。

 厳人はそう思った。


 とりあえず、ルームメイトが再び起きるまで、厳人は荷物の整理をすることにした。ここに来るとき持っていた荷物だけじゃなくて、実家から送ってきた服とかが段ボールに入っておいてあるから。


 大体その作業が終わった頃、佐野翔が起きた。


 厳人は今度こそ話をしようと思って挑戦する。


「俺は田舎の町から来たんだ。お前どこ出身?」

「・・・西の方」

「関西?」

「うん・・・」


 佐野翔は退屈そうに、数学のテキストを取り出す。

 そしてノートも取り出し、勉強し始める。


 ああ、こいつはおれとは合いそうに無いな。

 厳人はそう思った。



 そして学校の初日になった。


 厳人と真白と愛は同じクラスだった。その方が都合がいいから、春菜か真市が学校に掛け合ってくれたのだろう。


 厳人の後ろの席は、ルームメイトの佐野翔だった。


 こいつかよ、と思った。周りの席に、できれば賑やかなやつがいた方がいい。そうじゃなきゃ楽しくない。

 翔は早速、机に突っ伏して寝ている。

 厳人は、左隣りの席でマンガ雑誌を読んでいる少年を見た。


 座っている状態で、相当背が高い。厳人を見下ろせる。厳人の身長は同年代の平均くらいだ。

 座高が高いだけという訳じゃない。足が、机の下で窮屈そうにしている。たぶん身長は、研究所にいる東条茂にもうすぐ届く位じゃないだろうか。

 そして、髪が長い。髪が肩までかかっている。

 首に髑髏のアクセサリを下げている。いかにも不良っぽい奴に見えた。


 だが厳人は不良は怖がらない。厳人は見た目は普通だが、厳人自身も不良だから。


「おい」

 厳人は話しかけた。

「ん?」

 隣のロン毛が、机にマンガを置き、こっちを見る。


「いや、後ろの席のこいつ、寮のルームメイトなんだけど、無口ですげーとっつきにくい奴でな。あんたはどうだ?おれの四方隣りが全員無口ってことは無いよな?」


 ロン毛は笑って答えた。

「はは。なんだそりゃ。安心しろよ、俺はふつーに喋る奴だ」


「よかった。そんなに髪長いのはオタクか不良のどっちかだと思ったんだ」

「オタクじゃねーよ」

「だよな、そんな背高くてそのアクセは。て言うか、めちゃくちゃ背が高いな」

「まあな。あ、そういうお前はどうなんだ?オタクなのか不良なのか」

「おれは地元でチャリンコ暴走族って呼ばれてたぜ」

「・・・さてはお前、田舎者だな!!」

「まあね」



 一方、愛と真白は。


 愛が前の席で、真白はその真後ろだった。


「よかった、愛ちゃんが前の席で」

 愛が、振り向く。

「なんで?」

「え、だって知り合いが席近いと安心するでしょ、新しいクラスの時」

「そういうもんかな」

「愛ちゃんはクラス替えの時とか、不安にならなかった?」

「いや、わたし、学校行った事無かったから」

「え?」


「お二人さん、お知り合い?」


 真白の右隣の席の女の子が話しかけてきた。


「あ、うん」

「知り合い同士で固まらないで、早く新しい友達作らないとだめだよ!!」

「う、うん、そうね」

「という訳で、あたしが友達になってあげよう!!」

「・・・ありがと」


 真白は、なんかすごい強引な人だなあ、と思った。


「あたしは須道美穂。あなたは?」

「私は、北岡真白」

「じゃあ、そっちのあなたは?」

 前の席の、愛を指さして言う。

「・・・神里愛」

「そっか、よろしく!!どこ出身なの?」

「私は、この近くに住んでたの」

 真白が言う。

「へえ。あたしは少し遠くからきてるのよ。ええと、神里、愛ちゃんは?」

「わたしは・・・あっちの方」


 愛は、窓の外を指さして言う。


「それってどこさ!」

「ま、まあまあ須道さん」

「おーっと!」

「?」

「女の子同士なんだから名前で呼ぼう!!」

「え、えっと、美穂ちゃん?」

「うん!」

「愛ちゃんはいろいろ複雑らしいから、聞かないであげてね」

「らしい?あなたたち、昔からの知り合いじゃないの?」

「うん、最近いろいろあって知り合った」

「受験の時とか?」


「いや」


 愛が口をはさむ。

「受験はやって無い」


「愛ちゃん!?」

 真白は慌てる。

 それは秘密にしなきゃならない話だから。


「またまたー、寒い冗談を!裏口入学なんてドラマの中の話でしょ!」

 幸い、須道美穂は冗談と受け取ってくれた。


 教室のドアが開き、先生が入ってくる。


「あ、いやホームルームはまだだからな。ええと、須道美穂は居るか?」


「え、あたし?」

 須道美穂は立ち上がる。


「話があるからちょっと来なさい」


「なんだろ、呼ばれちゃったよ。ちょっと言ってくるね。」

 真白と愛に手を振って、教室の扉の方へ歩いていく。


 美穂がいなくなると、真白は愛に詰め寄る。

「愛ちゃん!!」

「なに」

「何で入学の事言っちゃうの!」

「別にいいじゃん」

「よくないよ、どうやって説明するの」

「めんどくさいし」

「春菜さんにも怒られるし、契約者だって知られたら普通の友達できないじゃん」


「友達なんていらないよ」


「え?」

「戦う仲間がいればそれでいいよ。わたしは」

「・・・私は、友達、欲しいな」

「ふうん」



 それから数分後。


 厳人と、隣の席のロン毛の人物は談笑していた。

「臭くってさあ」

「ああ、あれは臭すぎるよなあ」

 ロン毛の名前は、芝・啓次という。厳人と啓次はさっき互いに名前を知った。


 厳人の後ろの席の、佐野翔はまだ寝ている。


「ちょっといい?啓次」


 須道美穂。愛と真白と話していた後、先生に呼ばれていった人。


 そんな事は厳人は知らない。誰だろう?と思うだけだ。


「美穂?どうした」

 芝啓次は彼女と知り合いらしい。

「実はさあ、さっき先生に呼ばれちゃって」

「ああ、急に先生入ってきたからびっくりしたけど」

「それで、あたし学級委員やることになったの」

「まじで?」

「受験の時の成績がトップだったらしくて」

「お前頭いいからなあ」

「それでね、もう二人の委員長補佐を、他の人の成績は似たり寄ったりだから、適当に選んでって言われたんだけど、男子じゃなきゃいけないとも言われて」

「なんで?」

「なんか委員長があたしだからバランスをとるとか何とか。で、誰か紹介してくれない?」

「紹介って言っても前の学校からの知り合いは一人もいないし。そこで」


 啓次は厳人の肩をつかみ、言った。


「学級委員長補佐をやらないか?」

「え」


「この子は?」

 須道美穂が啓次に聞いた。

「ああ、浅城厳人といって、田舎町から来た奴だ。て言うか同い年の奴に『この子』とか言うなよ」


 厳人は困惑した。

「おれ不良だったっていったじゃん。成績も悪いし無理だって」

「大丈夫だよ適当にやれば」

「啓次、お前がやればいいじゃん。ええと・・・この人と知り合いなんだろ?」

 厳人は須道美穂を指さして言う。


「啓次はだめよ」


 美穂が割り込んでくる。

「これからバイト、しなきゃならないんでしょ?」


「そうなのか?」

「ああ、ちょっと、学費がな・・・。そういうわけで俺はだめだ。どちみち、あと一人必要だしな。頼むよ」


 厳人は考えた。


 断りづらいし。簡単な仕事でいいなら、クラスの連中に対して、ちょっとした優越感を得られるかも知れないな。

 どうせ、勉強やスポーツですぐに皆に追い抜かれ、ここでもおれは劣等感に襲われるんだ。 これくらいの優越感は確かに、あった方がいい。じゃないと、学園生活に耐えられない。


「分かったよ、やるよ」

「お、サンキュウ、それでもう一人はこいつで決まりだな」


 芝啓次は、立ち上がって、厳人の後ろまで歩いた。

 そして、後ろの席で寝ている佐野翔の肩をたたいた。


「・・・?」

 佐野翔は起きる。


「ええ、こいつなの?」

 厳人はあからさまに嫌な顔をした。

「ルームメイトなんだろ?」

「だから、無口でとっつきにくいって言ったじゃん」

「でもなあ、なんか一緒に仕事をするうちに、良い所が見つかったり、とかそんな展開になるかも知れないじゃん!」

「なるかなあ」

「とにかく、」


 啓次は翔の方を見て、聞いてみる。

「お前はどうなんだ?」


 佐野翔は、ぼうっとした顔で二秒ほど間を開て、答える。

「・・・べつに、やってもいいよ・・・」


 何を?


 厳人はそう思った。だって、寝てたんだから今までの話を聞いてないはずだ。いや、実は寝たふりをしていただけで、起きてずっと聞いていたのか?だとしたら不気味なやつだ。


「ありがと、二人とも!!」

 須道美穂が笑顔で言う。

「あなた、名前は?」

 翔の方を向いて言う。

「・・・佐野翔」


「そっか!浅城君、佐野君、これからよろしくね!」


 美穂は二人の手を握った。


 厳人も、翔も、照れてしまう。



 突然、教室のドアが開く。

「席に着けー。ホームルームを始めるぞー」

 先生が入ってきて、教壇の上に立つ。


「それじゃあね」

 美穂が元の席に戻る。



 と、その時、校内放送を知らせるチャイムが鳴った。


『ええ、生徒のお呼び出しを申し上げます。神里愛、北岡真白、浅城厳人の三名は、至急、校長室へお越しください』


「なんだ?お前なんかしたのか?」

 啓次が厳人に聞いて来る。

 

「なに?どうしたの?裏口入学がばれたの?」

 美穂が真白と愛に聞く。


「さー、心当たりがないなあ」


「な、何だろ・・・わかんないや・・・」


 真白と厳人はとりあえず適当にはぐらかし、3人は教室を出ていく。



 校長室に入ると、研究所の、東条茂がいた。

「やあ愛ちゃん、真白ちゃん、厳人君」


「東条さん、校長だったんですか?」

 厳人が言う。

「んな訳無いじゃん。校長は職員室のマイクで放送したついでにお茶を飲んでるよ」


 茂は壁側のロッカーを開けた。

 中は空洞で、人が1人ずつ入れそうだった。

「これを使って研究所までワープできるんだ!」

「すごいですね」

「さあ、レッツゴー」



 三人は研究所の地下の、モンスターを収納する格納庫、モンスターキューブの上にワープした。


『3人とも、悪いわね、せっかく学校に行っていたのに』

 手塚春菜の声がする。

『モンスターが来たのよ。』


 3人の前の壁面モニターに、映像が映る。


 茶色い、蟻のような虫。なにか、鎧を着けているようにも見える体。

 二本足で歩いている。前足は鋭い剣のように見える。足は六本あり、真ん中の二本の脚は、翼のように後ろに向いている。


 蟻はビルとビルの間を通り、研究所の方へ歩いてくるようだ。


「早く倒して授業に出なくちゃ」

 真白が言う。


「真白」

 対して、愛が真白に向かって言う。

「なに?」

「今は、戦いに集中してよ」

 学校の事はいったん忘れて。

「あ、そうだね、ごめん」

「厳人は大丈夫?」

 今度は厳人の方を向く。

「おれ?」

「切り替えが下手そうに見えるけど」

「何だよそれ。大体、まだ授業も受けてないで、ただ話してただけだし」

「なら、いいんだ」


 真下から、モンスターが上がってくる。

 3人は乗り込み、出撃する。


 3体のモンスターは蟻に向かって突進していく。

 だが、スピードの遅いパワードは追い抜かれ、ドラゴンとカメレオンが先を行く。


 蟻は、両腕を、迫ってくる2体のモンスターに向けた。


 蟻の両腕から、光の弾丸が発射される。

「!」

 ドラゴンとカメレオンは、とっさに真横へ飛んで避ける。


 そして蟻は両腕を合わせ、二発を同時にパワードめがけて発射する。

「わ!」

 だがパワードの装甲が光弾を弾く。

「パワード、撃ち返して!!」

 真白の声に応え、パワードは2本の角から光線を放つ。


 光線が蟻の腹に命中。


 しかし、蟻の、鎧のような外骨格が光線を受け止める。

「う、また効かないの?」


 それでも、蟻の力では光線の勢いを打ち消せず、蟻は後ろに滑る。


「やれ、カメレオン!!」

 姿を消していたカメレオンが、蟻の横から爪で切りつける。


 しかし、爪の攻撃も敵の鎧にかすり傷をつけただけだ。

「くっ」

 蟻は、見えないカメレオンを切ろうと、背中に向いていた足を真横へ振り回す。

「!!」

 カメレオンはそれを爪で受ける。


 さらに、蟻は足の感触を頼りに、鋭い腕を突き出そうとする。

「しまった!」


「撃て、ドラゴン!!」

 間一髪、カメレオンが刺される前に、ドラゴンが口から吐いた火球が蟻を弾き飛ばす。

 火球も、鎧を破壊するには至らない。


「カメレオン、奴の足を救え!」

 厳人が叫ぶ。


 カメレオンは、火球で飛ばされ体勢の整わない蟻に向かって、その器用な尻尾を伸ばす。

 蟻の細い脚をつかみ、引く。

 蟻はバランスを崩し、倒れた。


「ナイスだ厳人!!」

 ドラゴンが蟻に、上から襲いかかる。


 ドラゴンの爪が蟻を切り裂こうとする。

 しかしこれも効かず、蟻は両腕と、真ん中の足を使って反撃してくる。


「ドラゴン!!」

 ドラゴンの爪が蟻の、刃物のような腕を受け止める。

 ドラゴンの太ももの、剣のような角が、蟻の、同じく刃物のような中足とぶつかる。


「この距離ならどうだ!発射!」

 ドラゴンは真下の蟻に向かって火炎弾を撃ちまくる。


 効かない。そして蟻のビームが命中し、今度はドラゴンが弾き飛ばされる。


「愛ちゃん!!大丈夫!?」

「平気。ドラゴンにこの程度の技は」


 蟻が起き上がる。


「パワード、もう一回!」

 パワードはもう一度、角から光線を放つ。

 だがやはり弾かれる。


 蟻が、両腕を合わせる。


「?」

 蟻の両腕のエネルギーが、腕と腕の間に集中し、大きな光の球になる。


 その球が、パワードめがけて飛んでくる。

「うわ!?」

 パワードに命中する。

 パワードは傷つかない。だが、後ろに大きく押される。



 パワードが、動きを止めた。


「パワード?」

 

 真白は、何かを感じた。


「どうしたの?」

 パワードは何かを伝えたがっている。


「相手の、あの技と、同じ事が出来るの?」


「愛ちゃん、厳人君、下がって!!」

「え?」

「どうした真白」


 攻撃しようと近付いていたドラゴンとカメレオンは、いったん下がる。

 蟻は、破壊光球をもう一度発射しようと、再び腕を合わせる。


「パワード、お願い」


 パワードは、角と角の間に、エネルギーを集める。

 角の間が、光に満ちてくる。


 その光から、強力な一本の破壊光線が発射される。

 蟻は光球を準備しているため、動けない。


 破壊光線が、蟻の装甲を破壊し、蟻の身体を貫通した。

 蟻は木っ端みじんに吹き飛んだ。

「やった!!」

 

 戦いは、終わった。



 3人は教室に戻る。


 すでにホームルームは終わっていて、先生はいなかった。


 黒板に、委員長・須道美穂。委員長補佐・浅城厳人・佐野翔。と、書いてある。


 厳人が席に着くと、芝啓次が。真白と愛が席に座ると、須道美穂が。

 何をしてきたのかと聞いて来る。


「話すなって言われてるんだよ」

「何だよ。教えろよ」

 どうやってごまかそうか。


「なになに、何してきたの?やっぱり裏口入学なの?」

「そうだよ」

「愛ちゃんっ!じょ、冗談だからね!」


 戦いと学校は、両立できるのか。真白と厳人は、だんだん不安になってきた。



続く

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