登場人物の紹介『ソルフーレン編〈1〉』
今作の主人公、名を『ソラ・ヒュウル』。出身は『ソルフーレン・フーシュ村』
サラサラとした茶髪を吹く微風で揺らし、その瞳は大自然を幻視させる濃緑色。
なんの変哲もない『人族』の男性。歳は16。身長は174センチ。割と高身。
誕生日は『人歴、千○二一年』の『四月二日』
世界的にも極々少数である神の寵愛——『風の加護』をその魂に宿している。
大好き『家族』『動物』『心地良い風が吹いている野原での昼寝』
好物『味の濃いもの全般』『カッコイイもの(少年心を忘れていない故)』。
苦手『強すぎる甘味』『しつこい女性』『爺ちゃんのゲンコツ(花壇を飛び越えていった僕が悪いんだけどさ……)』
大嫌い『魔族(なぜ嫌いなのか。その理由をソラは知らない)』
街中を移動中にエルフ族の異性から『好みの女性のタイプ』を聞かれることがしばしばあるものの、性欲が薄すぎるせいで「そんなものは無いです」としか言えない。
居なくなった母を探す旅を始めたのに、母探しに関係ない寄り道ばかりをしている。特に買い食い癖がヒドイという印象甚だしい。
薪割りくらいしか目立った鍛錬は行っていないものの、身体能力が常人より高い。
周囲の人達(爺ちゃんやエリオラさんなど)が強すぎて目立っていないのだが。
ジョブ『しがない旅人』
武器『折れた短刀(バックの底に眠る)』
ランク『F−〈性能F−・希少F−(破損しているため、評価査定が大幅に減少している)』
爺ちゃんから旅の助けになればってもらった大切な物だから、捨てたくないんだよな。どこかで修理をできればいいんだけど……。
防具『爺ちゃんからのお下がりコート(帝国の巨匠・ブリンゲッツ作の防弾仕様)』
ランク『C〈性能D・希少B〉』
60年近く前に帝国で買った、服職見習い謹製の物らしいけど、何処のなんなんだ?
爺ちゃんは嬉しそうに「これはブランド物だぞぉ?」とか言ってたけど、本当かなぁ?
装飾『銀の指輪』
ランク『X〈性能X・希少X〉』
これには不思議な力を感じるんだよなぁ。ていうか、なんで紫色の光を発してるんだ?
攻「E」守「E」速「E++」精神「F+」魔力「S++〈量X・質S」加護(風)「X」
筆者の感想。
「これからも頑張ってね、ソラ君」
* * *
ソラの母親、名を『フーシャ・ヒュウル』。出身は『ソルフーレン』
薄緑色の長髪と瞳。人族。女性。
ソラの母親になったのが21歳の時であるため、推定年齢は37歳。
身長は166センチ。常に無表情で何を考えてるか分からない不思議な女性。
滅多に感情というものを表に出さないため、彼女が「加護」のことで突然の涙を流したのは、ソラにとって甚だしく衝撃的な出来事であった。
大好き『家族』『動物』『蒼天に見下ろされながら、自然を駆け回ること』
好物『味の薄いもの全般』『タンポポ(風に舞う姿が自由そのものだから)』
苦手『辛い物(ヒリヒリするのが苦手)』『しつこい男性(超モテるせい)』
筆者の感想。
「今はなにも語れない謎多き女性ですが、ちゃんとソラ君と食卓を囲みますよ」
* * *
ソラの祖父、名を『バレル・ヒュウル』。出身は『ソルフーレン』
人族。男性。推定年齢は76歳くらいか。身長は186センチ。背が高い。
元は薄緑色だったが、加齢と共に白髪に。瞳は変わらない薄緑色。
元冒険者で今でも滅茶強い、いい漢。還暦を超えても『心』は少年のままだぜ!
大好き『家族』『甘いもの』『ひっそりと自室に連れ込んだ猫を愛でること』
好物は『カッコいいもの全般』『筋トレ(すぐに腰が逝くせいでソラから止められて、今は全然できてない……。まあ、ソラが見てないところでやるがなァ!)』
苦手『辛い物(唇が腫れるからなぁ)』『説教してくる人(サチ』
村の男連中と共にソラに『猥談』を語ってみたり、ひっそりと性知識を吹き込んだりして、カカに下剤を盛られて一昼夜の地獄を経験した(全然懲りてないがな?)。
ジョブ『村長(元戦士)』
武器『研ぎまくった鉄斧』ランク「E〈性能E・希少F〉」
防具「圧殺する鉄の鍋蓋」ランク「E〈性能E・希少F〉」
攻「C+」守「C+」速「E(走ると腰がなぁ)」精神「C+」魔力「E(質E・量E」
筆者の感想。
「偶にお小遣いを忍ばせてくれるような、いいお爺ちゃんです。長生きしてちょ」
* * *
カカー・エリュオール。出身は『緑の国・エルムフット』
エルフ族。女性。年齢は秘密?(100歳以上)。身長は156センチ。
青と紫と黒色が混じっている『肩ラインのボブ』カット。瞳は青と紫色の混合。
普段は真面目ぶった『薬師』だが、その本性は調子の良い、只のおばさん。
子供のソラに言葉を教え、知識を与え、学問を解いた、超重要な教師でもある。
ソラが「マジか」「イェーイ!」「サンキュ」と言うのはコイツのせい。
大好き『風の加護を宿している、顔を突っ込みたくなる茶髪で、舐め回したくなる深緑の瞳を見せてくる、凪いだ水面の様に物静かで、故郷のエルムフットにある永遠の花園のように広大で美しい優しさを持っている、笑顔の可愛い現在16歳の男性』
好物『ビスケット〜蜂蜜をその上に)』『ミルクティー』『にゃんこ』『酒酒酒酒酒』『トオサゲンボウ(竹みたいな植物。熱を吸う効果があり、知恵熱の時にいい)』
苦手『ハジケンダケ(効能のいい薬の材料になるくせに、ちょっと指で潰しただけで爆発すんじゃねえ!)』
『ハジメンキョウ花(この香りを吸えば……やる気が満ち満ちてくるぜえ!!)』
『シュウキョク木(擦っても炙っても放置してても臭い! 触るとくっさい樹液が手につく! マジで鼻が曲がるのよコレ!)』
『オドロオドロ(なんでこんな恐ろしい見た目をしているのか。あぁ、口に出すのも恐ろしい。でも、肝臓に良いから製薬が止められないのぉ。酒が、お酒がぁ!)』
『フンシュウクサダケ(シュウキョク木の完全上位互換。もはや殿堂入り。これは比喩抜きでヤバい。死ぬぞ、これ)』
大嫌い『大好きな男性以外の男。特に猥談を吹き込むような下衆』『虫虫ムシムシむしむし!!』
はっちゃけているが超貞淑。武器『毒物』ランク「?」
筆者の感想。
「彼女のおかげで、本当に助かってます(作者が)。間違いなく今作のMVP」
* * *
エリオラ・カミュ・リギュ・ドラムンダ。出身は『バルバトス北・カクシャザ』
人族。女性。22歳。身長は172センチ。で、女性の中では高身長が目立つか。
赤薔薇のように鮮烈な紅色のミディアムボブ。確かな烈火を宿している同色の瞳。
百戦錬磨の凄腕冒険者であり、冒険者の間ではとてつもなく有名な『魔法剣士』。
長年の鍛錬のおかげで腹筋が六つに割れている。親しい間柄なら触らせてくれる。
彼女が8歳の日、事件は起こった。宝の行方を笑い聞く、槍振るう魔人の襲撃が。
あの日、あの時、あの場所で、彼女は最愛を失った。そして誓う。仇を。復讐を。
大好き『家族』『庇護欲を刺激してくる弟属性の少年』『欠伸が出るような平穏』
好物『甘い物』『鍛錬』『乗馬』『人助け』
苦手『性的な目で見てくる人』『苦すぎる物』
大嫌い『魔人』『悪人』『蝶々(バルバトスには『死蝶』という、息絶えた生物の血液を吸って生きる蝶がいる。エリオラが嫌いなのはそれ。なぜ嫌いなのかと言うと、殺された家族の亡骸に集っていた光景がトラウマだから)』
ジョブ『魔法剣士』
武器「誓いの荊の真銀剣」ランク「B〈性能B・希少B〉」
その荊は害悪を縛し、悪の命をもって罰を成就する。これは誓い。だから刻む。
防具「繋ぐ真銀の胸当て」ランク「B〈性能B・希少B〉」
その守護は装備者の命を繋ぎ、瞋恚の烈炎を燃料とした『復讐』を続けさせる。
武器と防具、その素材は全て『真銀とも聖銀』とも呼ばれる『アルナヴァース』。
素材の希少度は『B』ランクと高位。武器一つ『数百万ルーレン』はするはず。
使用魔法『炎魔法・中位』。炎魔法を使用した技「↓」
『炎威(最大量の炎を腕等の部位に纏いて、その熱量で敵を威圧する)』
『炎集(拳や武器防具等に炎を纏わせて、破壊力を大幅に増幅させる)』
『炎進(炎を直線方向に飛ばす。威力と範囲は充炎度により比例する)』
攻「C+++」守「C+++」速「C++」精神「B」魔力「C」(質C+・量D+++)
筆者の感想。
「絶対にブラコン。潜在的なド変態で、認めた相手には堂々と裸体を晒す。しかもニヤニヤしながら。自分も親しくなりたいけど、絶対に避けられるだろうなって」
* * *
アミュア・フロンリーセス・エリオン。出身は『エルムフットの東部のド田舎村』
エルフ族。女性。25歳。身長は137センチ。見た目は少女。中身はクソガキ。
日差しを浴びて成長した柑橘類のような橙色の頭髪を、ふんわりとしたツインテールにして側頭部から垂らしている(実は癖毛)。瞳は蜜柑を埋め込んだような同色。
エルフは平均寿命が300年ほどである(死因のほとんどが病死か事故死であるため、本来の寿命はもっと長い。しかし疎ら)ことを加味すれば、人族換算だと25歳は少女になるか? ガキっぽい性格だが、魔法使いとしては二級という。
彼女が故郷にやって来た『エリオラ・リップの冒険者パーティー』に加入したのは自分が暮らしている田舎にコンプレックスがあったのと、全員が7〜10も年下である弟達と妹達の世話に明け暮れていたせいで、自分の趣味であるお洒落ができなくなったことが原因か。まあ、都会に行きたかったというのが起因の『九割超』だろう。
『エリオン』という家名は、エルムフットではありきたりで、『フロンリーセス』という周りにはない家名が数少ない誇りであり、自慢であった。後者の特異な家名を持っている理由は、彼女の先祖が外国の未亡人エルフと婚姻関係を築いたからだろう。
愛用の杖は『クラウディア聖王国』の魔法店でへそくりを全て叩いて購入した高級品であり、それを勝手に触るとプリプリと怒る。ソラは触れるのを許されていた謎。
趣味は人形集めだが、定住していないので集められない。それが若干のストレス。
大好き『甘いもの』『可愛いもの』『小動物(ニャンコが一番)』
好物『酸っぱい物(柑橘類の栽培が故郷の主な収入源だったため、いつも食べていた)』『自分を好きな人(チヤホヤしろ』『自分に都合のいい奴(褒め称えろ』
苦手『苦い物』『怖いもの』
大嫌い『毛虫(弟の一人が悪戯で服に張り付けてきたのがトラウマ)』
ジョブ『二級魔法使い』。
武器「蒼宝玉の杖」ランク「C〈性能C・希少D〉」
杖に取り付けられている蒼宝玉は、深海国シィナイトの近辺に存在している虹海、その青部に生息している『とある種類の貝』から採取した自然魔力の結晶である。
自然魔力は人間の魔力との融和性(生物の魔力にある個性が無いため)が高く、杖を介することによって蓄えられている自然魔力の一部を流用し、魔法を強化できる。
つまり、魔法発動(術者の魔力が9)、魔法を体外放出する際に杖を介する、そこで『杖に取り付けられている蒼宝玉の自然魔力』を自身の魔力に外付け、そうして放出された魔法は術者の魔力が9・自然魔力が1の『計魔力10』の魔法になるわけ。
防具「お気に入りのロリータファッション(可愛いでしょ)」ランク「F」
「これを見つけた時、それは偶然ではなく『運命』だと思ったわ(本人の談)」
使用魔法「見たら大体のことはできちゃうのよ、ほら、私って天さ——」
……失礼しました。彼女は感覚派のため、見たら割となんでもできちゃうんです。
彼女にはマイナスの経験がないため『呪術』は使用できません。使用魔法「↓」
『武創魔法。爆破魔法。照射魔法。上記の魔法は全て中位。その他、全て下位』
『スコピア』は高密度の魔力を一点に向けて発射する超攻撃型の魔法。
開発者は『スコルピア・ヴェリィガム』という、かなり好戦的な女性。
『マギア・ブレード』は魔力を刃状に硬質化させて、それに斬性を持たせたもの。
開発者は『マギアーネ・マリアンジュ・セブンスハンズ』という令嬢的な女性。
マギア・ブレード自体は『マギア・ウェポンズ』という総称の一端でしかない。
『ボマーズ』はクラウディオ帝国が開発した『ダイナマイト』という採掘用の爆薬から着想を得て開発された、掘削魔法。主に『岩の国・ガングリオ』で使用されていたのだが、近年では戦闘に用いられることが多いという印象を受ける。
開発はガングリオの鉱夫と、魔導国・ルフの魔法士との共同であるため、名称は個人名を基にしていない。開発されてからの歴史は二十年未満と浅く、かなり最新鋭。
攻「B+++」守「C++(防御展開。強化。治癒を下位ながらも扱える故の評価。素の耐久力は『F』評価)」速さ「F+++」精神「E+」魔力「B+++〈量B++・質A」
筆者の感想。
「ソラ君とあのまま一緒に居たら、彼の悪友みたいになってたと思います。一、二年一緒にいたとしても『恋仲』にはならないと思います。彼女がソラに好意を寄せたとしたら押せ押せドンドンだろうなって。まあ、生き遅れになりそうだったら、突如として現れて、同棲しそう。あと、めっちゃ強くね? 見てない間に数値弄ったか?」
* * *
リップリュー・ファルユソス。出身は『アリオン諸国の中央・ミューゲアス』
人族。女性。もうすぐ20歳になるよって感じの19歳。身長は163センチ。
気怠げな表情は長時間、太陽光に当たっているせい。できるなら引き篭もりたい。
ソラより色素が薄い茶色の髪と瞳。ボサボサの長髪を一括りにしたポニーテール。
生粋の恥ずかしがり屋ではあるものの、意識の切り替えでなんとかやれている。
仕事が終わり、安息の屋内に帰還した場合は『外モードのスイッチ』がオフになり、素の自分(人見知り。無口。趣味に生きたいだけの引き篭もり)を曝け出す。オンオフの差が激しくて、知らなかった人は驚く。慣れちゃえば無視は容易。
運動はしないが過労気味で痩せている。戦闘能力は皆無だが、裏方としての能力は上位。穴掘りが得意で、なんもない日の趣味は魔道具や帝国産の品々を撫でること。
趣味の話をしだすと止まらない、生粋のオタク。自分の長ったくて難解だろう話をしっかりと聞いてくれていたソラが一部の話に賛同してくれるのは心底嬉しかった。
大好き『最新技術(魔導国の空と陸を自由自在に走れる魔力機関の二輪車。帝国を周回する蒸気機関車など)』
『最新の道具(魔道国産の魔導具や、帝国産の火薬兵器など)』
『道具の分解と構築(戻せなくなった結果、ガラクタになることが多い多い)』
好物『パパッと食べられる携行食』『趣味の話ができる人』『辛い物』『麺類』
苦手『触られること』『騒がしい人・場所』『性的に見てくる男性』
大嫌い『犬。特に大型犬(幼少期に追いかけられたのがトラウマ)』
ジョブ『サポーター(罠張り。索敵。情報収集にマッピング等で非常に多忙)』
武器「黒鋼の短刀」ランク「E〈性能E・希少F〉」
武器「帝国製・手榴弾(違法持ち出し)」ランク「C〈性能D・希少C〉」
手榴弾は成熟したリンゴより小さい球型。持ち出すときは胃酸等に手榴弾が侵されないよう何かに包んでから飲み込み、胃に収納していた(運び方ガチすぎるだろ)。
防具「魔道国製・ゴーグル」ランク「D」
この魔道具を視覚に介せば、通常では視認できない魔力を可視化できる。
防具「帝国製・防弾ジャケット(合法持ち出し)」ランク「D〈性能D・希少E」
攻「D(一回限定。通常はF+++)」守「E」速「E」精神「D」魔力「F」
作者の感想。
「エリオラに近づきたくて寄ってきた男を逆に惚れさせたりしそうですよね。ヤバイ物を許可なく持ち出しています。見つかったら逮捕されるので完全に奥の手です。あと、エリオラパーティーを知っている人間に一番尊敬されているのはリップです。え、アミュアちゃんは……って? ははっ、あんなのが尊敬されるわけが——……」
* * *
ルナ・オリジナ・フーレウス。出身は『秘境・ミデン』
人族。女性。?歳。身長は140センチ。月のように煌めくブロンド色の髪と瞳。
月そのものを素材にして創り出された人形かのように容姿が頗る整っている、表情があまり変わらない紛うことなき美少女。ソラには可愛らしい笑顔を見せてくれる。
世界に二人いる、全ての魔法を極めている最強の魔法使いの一人。
それ以外は何も語ることができない、謎多き人物。
大好き『??・?????』『妹』
好物『ココア』『平穏』
苦手『戦闘』
大嫌い『原初の神すらも操れぬ、運命という名の呪縛』
ジョブ『零級魔法使い(未登録のため、実際は無名の魔法使い)』
武器『空を求めた二つの星杖』ランク『X〈性能X・希少X〉』
使用魔法『極位・全』。比喩抜きで、現存する全ての魔法を『極位』で扱える。
『転移魔法』、どんな距離をも一瞬で移動する神業。
『光魔法』、現存する魔法の中で『最速』の魔法。絶対不可避の光線。
ルナは魔法に名前を付けないため、そのままの意味での表記。
使用呪術『シン・マルテマルテル・ルエル・ルエルカ』。
効果は『孤独感の付与』。精神力「S+++」以下は発狂し、即死する。
シン→心・身。マルテ→待って。マルテル→待ってる。
ルエル→震える。ルエルカ→震えるから。
攻『S+++(素の場合は『A+++』評価)』守『S+++(前述に同じ)』速『S+++(前述に同じ)』精神『X』魔力『X〈質X・量X』
作者の感想。
「ソラのことを知っていた様子ですよねぇ。なにがあったのかなぁ。過去になにかあったのかなぁ……。まあ、今はなにも言えないし、自分はしらばっくれますけども」
+ + +
ここからは、ハザマの国の改変で渋々に切ってしまった設定を。
『落陽の大災害』
世界的にそう呼ばれている、たった一種の生物の群れが起こした、災い。それは、エリオラの出身国『カクシャザ』を内包しているバルバトス諸国で起こった一件だ。
バルバトス諸国。それは『バルバトス』という名の、中央大陸の西南に存在している広大な大地に密集している、数々の小国家をただ一つに纏めた際の俗称である。
バルバトスはその面積の約六割が、生命というものを一切感じさせない砂漠と化しているために、俗称として『バルバトス大砂漠』とも呼ばれている。
彼の大地は、同じく諸国と纏められた呼ばれ方をしている『アリオン』とは比べ物にならないほど水や緑の資源が枯渇しており、およそ人間が暮らすに適していない。
元々は『バルバトス』という名を掲げている一つの大きな国であったのだが、国内で別の民族同士が繰り広げる死屍累々な内戦が頻発した結果、その度に一国の独立や他国の吸収、二つが一つに纏まったのに、それが三つに分裂してしまった等を繰り返して、今では数々の小国家を一つに纏めた『諸国』という呼ばれ方が定着したとも。
そんなバルバトスの一部を焦土と化させた一件が、先の『落陽の大災害』だ。
落陽——その言葉の通り、人歴1037年から約十年前のバルバトス中央『シャンザス国』に『太陽』と見紛う超高熱の回転する球体が発生した。
光蟲。それは生ける最悪と呼ばれている生物の内の一体。その『最悪』の幾億もの集合体が、突如として『シャンザス国』の上空に発生した『太陽』の正体である。
光蟲は『光を喰らって生きる、体表光源摂食』で、大きさにして直径約3センチメートルの節足動物である。その光蟲は約1000年に一度の集団的交尾の際に、番いとなるやもしれない雌に自己の優秀さの誇示、つまりはアピールとして、幾年も体内に蓄え続けた『光』を周囲に発散して、その光量、熱量、蓄量を異性に見せつける。
世界に生息している『ほぼ全て』の光蟲は普段、ノルマイという国にある『光山』で地を這っている。しかし交尾と交尾のためのアピールをする際にのみ翼を広げて飛翔し、縦横無尽に『ある一定の個体数に種が到達するまで』同じ場所を飛び続ける。
すると、まるでそこに『天上にあるべきはずの恒星』が落ちてきてしまったかのように、光蟲の群れは地上を焼き尽くす『文字通りの極光』となるのである。
それが運悪く、超高熱を浴びても問題ない光山の内ではなく、バルバトスの方へ行ってしまった……というのが、約十年前に起こった『落陽の大災害』の要因だった。
その災禍での死者は推定で『数万人』である。被災地域で最悪の極光を浴びてしまった人間は跡形も無くなってしまっているため、正確な数は未だに分かっていない。




