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時間耐性者のとある1日~経過時間0秒の物語~

作者: 伝令 鮗
掲載日:2026/06/15


「・・・・・・またか」


 とある人混み激しい交差点の中、ポツンとたった1人の声だけが響く。


 足音や信号の音、果てには車や電車の音ですら、いま彼のいるこの空間には無い。


 また、それらは全て動きを止めていた。


 世界中の時が動いていない。

 そう、ありとあらゆる存在が停止している恒久の空間になっていた。


 彼1人を除いて。


「さてと、すこし長いな。これからどうしようか・・・・・・」


 神楽幸(かぐらゆき)

 彼には、時が止まっていても自由に動くことができるという、不思議な力をもっている。






 ・・・・・・しかし、あくまで自由に動けるだけ。

 自らの意思で時間を操ることは一切できない。

 フィクションの世界みたいに、時間を止めその間を自由に動けるみたいな芸当は無理。


 ということは、だ。


 簡単に言えば、この状態から時間停止を解除する術は持っていないので、この停止世界に閉じ込められてしまっている。


「とりあえず待つかー。突然動き出されたら大変だからね」


 ここで自分が一番気を付けるべきことは、時が突然動き出すことだ。


 このような経験は初めてではない。

 何回も起きているので、流石にもうなれていた。


 この変な能力については、まだ気付いていなかった頃。


 瞬間移動をする少年がいる。

 そうテレビで、それはそれは結構話題になった。


 自分からすれば、ただ普通にそこを歩いていただけだった。

 しかし、他人からすれば、時が止まっている間は当然、自分が動いた軌跡を認識できない。

 結果、瞬間移動しているように見えてしまっていた。


 今後はそういったことが起こらないように、時間停止が発生した際は、基本その場からなるべく動かないようにしている。

 運動会で走っていたり、自転車を運転していたりしても。


「・・・・・長いな。時計は見ておくか、久しぶりに長い停止世界っぽいし。どれだけ時間が止まっているかは、やはり気になる」


 ポケットから懐中時計を取り出す。


 時間が止まっているのに、時間を測る道具なんて何の意味があるんだ。

 そもそも、時間が止まっているのに、どれだけ止まっているかって、矛盾してないか?


 こんな非現実的な能力を持っている自分でも、いつも疑問に思う。


 しかし実際は、頭のなかで1、2、3と数え上げることもできるし、曲を口ずさみ、その長さから時間を測ることもできる。

 フィクションの世界でも、キャラクターが止まった時間を1秒経過、2秒経過と数えるシーンもある。


 止まった時間でも、時間に相当するなにかが動いているのだと思う。


 極め付きは、いま取り出した懐中時計。

 これは5年前程に、とあるフリマアプリに出品されていた。

 秒針が1秒刻みではないし、不定期に針が突然別の場所に移動してしまう欠陥品だ。

 そんな商品説明があったことを、今でも覚えている。


 取り出した時計を見る。

 音は一切しないが、秒針が約1.3秒間隔で動いているのが分かる。


 そう、この時計も自分と同じような力を持っている。


 つまり、この時計の針が突然移動する現象は、その間に時が止まっていた証拠。

 時間の止まったことを、自分以外の人物が唯一確認できるアーティファクトだったのだ。


 これが3000円で買えたのは幸運だった。

 もっとも、自分以外の人には全く使えない謎アイテムだろうけど。

 他人には時計としての意味をなさないからな。


 そして、秒針が1秒間隔で動かない理由は・・・・・・正直わからない。

 

 時が動いていようが、止まっていようが約1.3秒間隔。

 もっというと、時が加速している状態や、遅くなっている状態でも1.3秒間隔なのは変わらない。


 ちなみに、これはあくまで、時間に関して完全耐性を持っている自分だからそう見えるだけ。

 普通の人なら、針が急に瞬間移動したり、加速したり、減速したりする。


「既に50C以上は経過している。想像以上に止まっているな」


 自分が言うのもあれだけど、このアーティファクトはこの世界の理から外れている。

 このアーティファクトをC時計と呼んでいる。

 こういう時のために、買ってからは常に持ち歩いている。


 止まっている時間の中での時間経過を、自分は、時間という名前を使わずにCと呼んでいる。

 そして、C時計の秒針が1回動くまでのCを、1Cとして測っている。


 それにしても、50C以上も止まっているのは、かなり珍しい。

 C時計を買ってからだと、3度目くらいになる。


 まあ、すぐに動き出すだろうし、それまで待ってればいい。


 そうしたら、またいつものように元の日常に戻る・・・・・・




ーーーーーーーーーー




・・・・・・


 C換算で2時間(7200C=120mC=2hC)は経過した。


 おかしい。

 全く時が動かない。

 あきらかに異常事態だ。


 ここまで止まっているのは、人為的な何かを感じる。


 時が止まる原因は、主に自然現象によるものと、何かしらの能力者によるものの2つ。


 自分みたいな能力者や、C時計が存在しているなら、時を止める能力者もいると考えるのは自然だ。


 実際にその者を見たことないが、何人かは知っている。

 矛盾しているようにみえるが、止まっている時間のCがかなり特徴的だから分かりやすい。


 最大で体感150Cほど。


 これは、C時計を買う前に経験したものだ。


 一方、自然現象による時間停止のCは、長くても3C程。

 そして、殆どが1Cにも満たないC。

 これは日に何十回と起こっているから、結構わかりやすい。


 対して、3Cを越える時間停止は滅多に起こらない。

 多いときもあるけど、大体は1週間に1回あるかないか。


 そんな程度の頻度。


 したがって、これは人為的な時間停止だとすぐにわかる。


 自分がC時計を使ってCを測っている理由の1つに、誰が止めているのかを調べる、というものがある。


 止めた人物が同じの場合、止まっているCも大体同じだからね。


 だからこそあり得ない。


 ここまで時間を止め続けられる人物がいるとは、とても信じられない。


「・・・・・・調べてみるか」


 一生時間が止まったまま、自分1人この空間に閉じ込められてしまうのではないか。

 そんな危機感を感じて、この場所から動くことを決意した。


 どうせこの人混みのなかだ。

 人1人が消えたところで、だれも気付かないし、気付いても蜃気楼や幻覚なんかの幻だと感じるだろう。



 とりあえず、いままで来た道を走って引き返す。


 停止時間中はどれだけ動こうが疲れない。

 それに、身体自体の時間は止まっているので、呼吸すらもする必要は無い。


 周囲に違和感が無いか、細かく確かめながら、自宅へと向かう。


  

 ・・・・・・いや、結局家に戻ったところで、何ができるんだ?


 ふと、走ってる最中にそう考えてしまう。


 いまは、荷物も多く持っているし、服も動きやすい格好に着替えたい。


 そういった些細な理由で思考を無理矢理頭の隅に追いやり、走り続ける。




ーーーーーーーーー




 公共交通機関は当然止まっているので、自分の足で約1hCかけて、自宅に帰ってきた。


 周囲を確認しながら移動していたが、特に異常があるような場所や、変化は見当たらなかった。

 時間が止まっていること以外には、普段と変わらない風景。

 当然時間が動き出すことも無かった。


「本当に、これからどうすればいいんだよ」


 ボソッと呟く。

 自宅に着いてしまい、手がかりが一切ない。


 荷物の整理や、着替えなんかも終わってしまい、本当にやることがなくなってしまった。


「やはり、止まっているか」


 まばたきすらも一切せず、その場に停止している母を横目に、今後のことを考える。


 この恒久の世界に、ただ1人自分が何をしようが、状況が変わらないのは分かりきっている。


 だけど、待つのは嫌だ。


 でも、家から出てどこを見れば、どこに向かえば良いのか・・・・・・


 どこを探せば良いのか・・・・・・


 そんなことをずっと考えていた。


 ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと・・・・・・



・・・・・・



「あ、あれ、外だ」


 気付けば、無意識に家を出て外を歩いていた。


 変わらず無心に歩き続ける。


 何かが起きることを信じて。

 何かが変化していると信じて。


 でも、いくら歩いても、歩いても、自分以外の何かが動くことはない。

 自分以外の何かが変化したり、光ったりすることも・・・・・・ない。


 ふと、C時計を見てみる。


「一周、してる・・・・・・」


 針は最初にみた時と同じ位置にあった。


 いつのまにか、時が止まってから1日以上経過していたようだ。

 経過を確認できる手段がこの時計しかないから、今まで全く気が付かなかった。


 今、自分が居る場所も、普段なら通らない見慣れない街中。


 仕方ない、最初の場所に頑張って戻ってみるか。


 そう考え、進む方向を変えようとしたその瞬間。


 ついに変化を見つけた。


「なんだ、あれは」


 視界の右端で、何かが鈍く光っていた。


 普段なら絶対にわからない変化。

 時が止まっていたからこそ、認識できた。

 そんな、微かな光だった。


 慌てて光っている方向を向く。


「やっぱり、そうだ」


 ・・・・・・間違いない。今もうっすら光っている。


 そして、さらに。


「・・・・・・人?」


 そこに誰かが居ることにも気がついた。


 自分と同じような時間耐性持ちか?


 ・・・・・・いや、ちがう。


 こいつだ。


 そこにいる人物こそが、元凶。


 あいつがここに現れたから、光が変化したのだ。


 意を決してそこに近づく。


「あら、珍しい。ここまで動ける者がいるとは」


 向こうもこちらに気づいたらしく、こちらに向かって話しかけてきた。


 な、なんだこいつは・・・・・・


 全く要領が掴めない。

 こんなことは、初めての経験だ。


 さらりとした白くて少し長い髪に、高いとも低いとも言えない中性的な声。 


 男性とも、女性ともとれる顔つき。


 そして、どちらの視点から見ても美しすぎる見た目。


 また、ホクロや傷などが一切見当たらない。


 その完璧ともいえる肌を見れば、他の誰であっても、話しかけてきたその人物が、人間ではないナニカだと理解できるだろう。 


 更にその身体の周囲から、うっすらと紫色の光りを放っており、余計に人間ではない感が出ている。


 人間に擬態するつもりなら、まずはそこを何とかするべきでは?

 そもそも、擬態しようとしているのか。

 全くわからない。


 それでいて、現代でどこにでもいそうな自然な服装をしていた。


 私服、なのだろうか?


 現代人に溶け込もうと、わざわざそうしているのだろうか。

 他の要因のせいで、逆に違和感だけが残ってしまっている。


「へぇ、C時計まで持ってるじゃん。しかも、()()()()()()


 彼女は、珍しいものを見たかのように話す。


 見られているってどう言うことだ?

 他の誰かにこの状況を見られているってことか?

 他にも時間停止耐性を持っている人物がいる?


 それに、なぜ見せてもいないC時計のことを、目の前の存在は認識できている?


「なぜ、C時計のことを知っている?」 

「あぁ、君にはそう聞こえたのね。その時計が測っているものは、私からみても特別なもの」

「特別?」

「そう。この世界にあるとは思ってなかったから、びっくり。あぁそれと、()()じゃないからね?」


 自分が居る場所とは別の方向を向いて、彼はそう話した。


 よかった。


 一応、会話が成立しそうだし、敵意のようなものは今のところ感じない。


「あぁー、だから彼でも無いんだって。おっと、ごめんごめん。名乗ってなかった私が悪かったね」

「さっきから一体何を・・・・・・?」

「こっちの話だから、幸くんは気にしないでね。えーっと、そう。名前だったね。僕の名前はカグラ」


 カグラはそう言い、体をこちらに戻す。


 カグラ・・・・・・自分と同じ名字・・・・・・


「そう、カグラ。貴方の名字と同じなのは、うーんと、まぁ、そうね、偶然って考えてもらって大丈夫」

「随分と含みのある言い方だな。それに、自分の事は一言も話していないのに、なぜなにもかも知っている?まさか思考でも読めるのか?」

「あはは、不快にさせちゃってたらごめんね?思考を読んだって訳ではないんだけど、似たようなことはしてたから」

「いや、別に不快には思っていない。だけどお前は、あ、いや、えっと、あっあなた様はいったい?」

「急にかしこまって、どうしちゃったの?ふふっ、その感じだと、あたしが何者か大体察してそうだね」

「・・・・・・」

「そうね、神って認識で大丈夫。あぁ、別に言葉遣いは変えなくても良いからね。面倒だし。それに、ここにいる神とは別だし、カグラは厳密には神ではないからねー」


 神・・・・・・では何故?


「その様子だと、なんで僕が時を止めているのか、気になっているみたいだね。じゃあ───」


 視界からカグラが消える。


「ちょっと、歩かない?」

「なっ!?」


 次の瞬間には、自分の真横にいて、そう囁いてきた。


「ふふっ、流石にこれには対応できなかったみたいだね。かわいい」

「い、いまのは・・・・・・」

「秘密。そうした方が面白いでしょ?」

「・・・・・・」

「あっ、そうそう。あーしのことは、普通にカグラってよんでも大丈夫だからね。それじゃっ、行こっか」


 カグラに言われるがまま、後をついていく。


 というより、歩かされている、動かされているといった方が正しいのかもしれない。


 足が、別の方向に動こうとしない。


「自力でここまでたどり着いたご褒美。あんたからの質問には、可能な限り答えてあげる」

「えっ、いいのか?」


 カグラにとって、自分から出てくる質問は全てお見通しなのだろう。

 頭の中を、全て覗かれているみたいで、なんとも言えない気分だ。


 しかし、こちらからすれば、願ってもない提案。

 魅力的なことには変わりない。


「じゃあ、早速。どうしてわざわざ時間を止めているんだ?」


 最初は無難に、時間を止めた目的から尋ねてみることにした。


「あー、やっぱそこから聞くよね。えっと、どこから話そうかな。自分はね、もともとここの世界の調査をするために、別の世界、要は異世界からやってきたんだよ」

「異世界・・・・・・」

「そう。それで、時間を止めておいた方が、誰かに邪魔をされることもないし、見つかることもない」


 カグラはそう話しつつ、近くで止まっている男性に手をふる。


「こうやって、認識されることがない。だから、何か調査をするときはいつもそうしているんだ。たまーに、抵抗をもっている人や能力者もいるけど、ここまで長く耐えられる者はまず居ない。普通なら、300C辺りで限界がくるはずなんだけどねー」


 カグラは、ちらっと自分の方を見る。


「それで、自分は例外中の例外だと」


 神からしても、自分が持っている変な力は非常に珍しいらしい。


「そうね。幸の力は本物だよ。その能力を見れただけでも、この世界に調査をした甲斐があったよ」


 カグラは、ふふっと笑いこちらに視線を向けた。


 なるほど、自分のような人を探すのも調査の一環なのだろう。


「自然とこっちの思考を読むのはなんとかならないのか? まぁいい。それより、わざわざ別の世界からここに来てまで、結局何を調査してるんだ?」

「えっと、じゃあ少し見てて」


 カグラがそう言うと、突然2人の目の前に魔方陣のようなものが出現した。

 次の瞬間には画面のようなもの、スクリーンが映し出された。

 

「お主なら気付いていると思うけど、最近この世界で度々1C未満の時間停止が頻発しているよね」

「!、そういえば」


 言われてみれば確かにそうだ。


 幼少の頃に、仮に今の頻度で時間停止が起きていたら。

 確実に誰にも気づかれることもなく、この力を認識したと思う。 


 あまりの時間停止の頻度の多さに、昔の頃をいつのまにか忘れてしまっていた。


「これは私たちから見ても異常なこと。だから調べに来たってわけ」

「そういうことか」

「そして、うちが時間を止めたこと。たまたまこの世界に君がいたことで、ハイランカーたちに気づかれる羽目になったと。こっそり調査をするつもりだったんだけどなー。今もそうだけど、ずっと我々はそれ見られているから」


 やれやれといった表情をみせる。


 ハイランカー・・・・・・初めて聞く言葉だ。


「ざっくり言えば、第4の壁の向こう側の人間。つまり、上位世界の人間ってかんじで大丈夫。詳しく説明すると、────────。っとこんな感じね。他に何が気になることはある?安心して、視点だから、あなたのセリフから同じようにしてあげる」


 カグラは、画面に表示された映像を使って分かりやすく説明してくれた。

 それに、自分が気になった点を質問したら、その内容についてより詳しく、より丁寧に教えてくれた。


 可能な限り答えてくれるという言葉は、嘘ではなく本当だったようだ。


 おかげで、自分が今気になっていた事は大体理解できた。


「もう質問は十分だよ。なんというか、すごく分かりやすい説明だったよ。だけど、こんなのんびりと歩いて自分と話していても大丈夫なのか?」

「というと?」

「いや、なんというか、その・・・・・・自分としては、この孤独な世界で、誰かと会話ができることや、能力のことを誰かと共有できるだけでも、すごく嬉しかった。だけど、カグラはもともと調査するために、この世界に来たんだろ?」


 その疑問は、カグラが答えるよりも前に解決した。


 自分たちの目線の先。

 その上空から、カグラと全く同じ姿をした人物が、宙に浮いていた。

 そして、ものすごいスピードでこちらに向かっていた。


 ようするに、分身ってやつなのか?


 自分と会話をしている裏で、別の体で調査していたのか。


 全く、なんでもありだな。


 ここまでに無茶苦茶なことが起こりすぎて、全てを受け入れてしまっている自分がいた。


「あはは、説明する必要なかったね。いやほんと、我にとっては些細な暇潰しだったから。最初に言わなかった? 神みたいな認識で大丈夫って」

「・・・・・・あっ、ははは。そう、だよな。こんなにも、長時間の時間停止ができる存在だし。当然、だよな」


 自分の隣に居る存在が、いかに異質な存在だったか。


 そのことをなるべく考えないようにしていたが、改めて認識する。


 気づいたら、歩く歩幅が狭くなり、足が震えていた。


「あらら、もうお別れしたほうが良いかも知れないね。それに今回の調査は一段落したから、そろそろ時を動そうかな」


 2人のカグラが混ざり合い、1つになる。

 そして、歩みを止めた。


「そ、そうか。それで、問題は解決したのか?」

「いーや、全然。むしろかなり深刻。一旦Eに報告すべきだね。C由来の原因だと思ったけど、ビューリ由来の可能性がでてきた」

「ビューリ? 確か説明してくれたやつだよな。確かに、自分には理解しきれなかったけど、それ起因ならどうにもならないのでは?」

「それを解決するのが、俺達の仕事だよ。とりあえず、時を動かしてみて、経過観察しようかな」

「じゃあ、これでお別れか。あ、自分が最初にいた場所に戻ってから時を動かしてもらえると嬉しいのだが」

「安心して、うちが元いた場所へ戻しておいてあげるから。時間が動き始めたら、普段通りの生活をしても大丈夫。あぁ、そうそう。次に時を私達が止めるまでは、視点から外してあげる」

「次、か。また会えるのか?」

「勿論。なんなら君にも手伝って欲しいからよろしくね」

「・・・・・・」


 また、とんでもなく長い時間停止がくるのか。


「ふふふ、そうね。それじゃあ、またね」


 カグラがそう言って、ゆ────────



ーーーーーーーーーー



「おっと、またか」


 カグラと出会った日から、しばらく経った。


 カグラの言う通り、自然発生の短い時間停止が日に日に増えていった、


 あの日以前の自分でも、この異常には流石に気づけるだろう。


「というか、あの時は突然元いた場所に飛ばされたから、ちょっとビックリしたんだよな・・・・・・て、あれ?」 


 いつもなら、もう時が動いてもおかしくない。


 ・・・・・・まさか。


「そのまさかだよ。久しぶりだね、幸くん」


 時間が止まっているはずなのに声がする。


 振り返ってみると、カグラともう1人、見覚えのない人物がいた。


 いや、人、か?


 自分の言葉で、最も近しい表現で言うと、美少女のロボットやアンドロイド。


 しかし、現代の技術、もしかしたらこれから先含めて、到底及ばない領域。

 技術の終着点といつべきか。

 あまりにも、自然で完成されていた。


 つややかに光る、彼女の長い黒の髪をみれば、それが生物由来のものではなく、無機的で金属質であることがわかる。


 カグラとはまた違った異質さだ。 


 当然の権利のように、この停止空間で動いている。


「言われた通り、このタイミングで繋げたわ。で、この子が例の子? 本当に連れていくの?」

「勿論。我々が調査を始めたり、原因の解決を始めたりしたら、とんでもなくCがかかるでしょ? 可哀想じゃん」

「あー、そうかも」

「それに、この子の力で原因が分かるかも知れないし」


 やはり、自分はこれから、この2人の手伝いをする流れになりそうだ。


「ふーん、そういうことねぇ・・・・・・あっ、ごめんなさい、君への挨拶がまだだったね。私はエリック。皆からはEって呼ばれてるけど、好きに呼んでくれて構わないからね」


 エリックはそう言って、右手を差し出した。


「ご存知かと思いますが、神楽幸と言います」


 俺も右手を差し出し、握手をする。


 やはり、相手の手は冷たかった。


「普通に話してくれても良いからね? 君が察してる通り、私は機械よ。まぁでも、そこのカグラと同じ感じだから、あんまり変わらないけどね」

「2人の挨拶も済んだことだし、早速始めよっか」


 カグラがそう言い、何もない空間へ目を向ける。


 突然、空間に亀裂が走り、パックリと裂けた。


「じゃあ軽く、1兆Cは止めようか。E、接続よろしくね」


 ・・・・・・え、1兆?


「もう既にやっているわ。入ったら、こっちの繋がりは消して良いよね?」

「うん、ここだけは繋げたほうが良いと思ったから、それ以降はもう大丈夫」

「わかったわ。幸くん、ごめんね。ちょっと長い期間になりそうだけど、これからよろしくね」


 ちょっと?


 とても、ちょっとではない気がする。


「あ、あぁ、こちらこそ」 

「僕からも改めてよろしく。では、そこの裂け目の先に行こうか」


 言われるがまま、二人の跡をついていく。


 1兆、か。


 これから始まる、長い1日を実感し、裂け目の中へと入っていった。




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