2話 落ち着かない食事
「やっとこさ・・・家に着いたわい・・・」
私は壊れてしまった椅子を作り直すために、久しぶりの外出をしていた。
家から一番近いミリオンシティへの道中、草むらで倒れている美しい女を発見する。
女は金属製の鎧を身に着けていたが、そのどれもがボロボロで。
まるで、遂先ほどまで強敵と戦っていたかのような姿だった。
このまま草むらに放置すれば彼女は死んでしまうかもしれない。
そう考えた私は彼女を自らの家まで背負って休ませようと考えたのだ。
「よっ…こらせ!!ぷはーー!!!」
彼女を私のベッドに寝かせた。
人を背負って運ぶのはなんとも骨が折れるものだろうか。
ここまで体力を消耗したのは久しぶりだ。
何かご飯を作るとしよう。
私は、女に布団をかぶせた後ニンジン豚のステーキを作ることにした。
ニンジン豚は体は豚、足はニンジンと言う面白い生き物でこの地方では地面に埋まっているものをよく見かける。動物と言うよりは精霊に近い存在の彼らは地面から引っこ抜くと勝手に加工され姿へと変化するので、下処理要らずの便利食材だ。
熱したフライパンに豚肉とニンジンを並べる。
段々といい香りがしてきた。
反対側もひっくり返して焼いていく。
こんなにお腹がすいているのは久しぶりだ。
疲れている時にとる食事は、きっといつもよりも美味しく感じられるだろう。
「しっかり中まで火が通ったようだ…!そろそろ食べるとしよう!」
香ばしく焼けた豚肉とニンジンに軽く塩を振り、皿に盛りつけた。
テーブルまで持っていき手を合わせる。
「いただきま~!!!」
ガブ。
肉にフォークを刺し口に運ぼうと思った瞬間。
先ほどベッドに寝かせた女がわしのステーキにかぶりついた。
「あーーーー!!!!????わしのステーキーーー!!!!????」
傷だらけの女
「かなり美味い。だがもう少しレアな方が私は好みだが」
人のステーキを食っておいていちゃもんをつけてきおった。
傷だらけの女
「爺さん、食べ物はもうないのか」
「えぇ?食べ物ならそこの冷蔵庫にわしの全食材が入っておるが…」
傷だらけの女
「よぉし!じゃあ今度は私が料理をごちそうしてやる!助けてくれた礼もかねてな!」
女はそう言うとキッチンに走り出しものすごいスピードで冷蔵庫から食事を取り出した。
さらにものすごいスピードで食事を切り、さらには焼き、はたまた煮て、ついには揚げていく。
テーブルからあふれんばかりの料理が次々に並べられた。
しかし料理は味が大事だ。
こんな高速で作っているのだから適当な味付けに違いない。というか…皮もちゃんと向けているのか…?
私は目の前にある肉じゃがを食べてみた。
「お・・・美味しいぃぃ」
それはとてつもなく美味い肉じゃがだった。
傷だらけの女
「そうだろ!私も腹ペコだ!さっさと食っちまおうぜ!」
そういって女はものすごい勢いで料理を食べ始めた。
このままでは私の分がなくなってしまうと焦ったわしもテーブルに広がる数々の料理に手を伸ばすのだった。
傷だらけの女
「あ!それ一個しか作ってないんだぞ!」
「…いいもん!私だってステーキ食われたんだもん!」
傷だらけの女
「っあああああああ!!!」
この家でまぁまぁの時間を過ごしてきたが。
今日はこれまでにもっとも多くの料理が並べられて。
もっとも賑やかな一日となった。