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味が変わるシュトレン
十二月中旬に食べかけて放置していたシュトレン。
イブの朝、このシュトレンに気付き、朝食がわりに食べてみた。
温かい紅茶も淹れる。
シュトレンはなぜか紅茶とよく合う。
「あれ? 前食べた時より美味しくなっているというか、風味が良くなった気がする。お酒の香りも甘やかになったというか……」
シュトレンはナッツやドライフルーツもたくさん入った発酵菓子でもある。表面の粉砂糖が防腐剤の役割もしていると聞く。
長く持つ分、味も変化していくという事か。
もう私は五十近い。決して若くはなく、更年期障害もあり、毎日が楽しいわけでも無い。両親の介護などの現実もある。
それでも味が変わっていくシュトレンを噛み締めながら、人生が熟していくのも悪くない気がしてきた。
「あなた、メリークリスマス。シュトレン食べる?」
「えー、朝から?」
「血糖値上げて元気に行きましょう」
いつになく元気な私に夫は首を傾げていたが、なんだか楽しくなってきた。
クリスマスは始まったばかり。今日一日ぐらいは心の底から楽しみたいと思う。