我が家のクリスマス
我が家のクリスマスは一月六日まで続く。リースやツリーもその日まで飾る。そしてその日にガレット・デ・ロワという珍しいケーキを食べるのが我が家の風習だった。
この日は公現説というお祭り。日本では一般的ではないが、イエス・キリストが誕生し、東方の三博士の前に公に現れた事を記念する。
我が家は父がアメリカ人で教会で宣教師をやっている。母も祖母がアメリカ人で、こうした文化が普通だった。両親はもちろん、姉も兄も私も全員クリスチャン。今は日本で暮らしているが、我が家は一月六日までがクリスマスだ。
今年も母が一月六日にガレット・デ・ロワを焼いてくれた。大きなパイ生地の大きなお菓子だ。本場フランスのものとはちょっと違うらしいが、我が家で食べるものなので良いだろう。
このケーキは、ちょっとした仕掛けがあるのも特徴的だ。中にフェーブという小さな陶器の人形があり、これを当ててた人は王様の王冠をかぶる。王冠は紙製だが、一年間幸せになるとも言われていて、今年は私も当てたい。
去年も当てられなかった。今年こそは当てて、紙の王冠をかぶりたい。もう中学生の私。我ながら子供っぽいと思うが、当てたいものは当てたい。
しかし、結果は。
「やった! イエス様フェーブ出たぜ」
兄がフェーブを当て、王冠をかぶっている。
「ずるーい! わたしもイエス様のフェーブ欲しい!」
そのフェーブは、陶器でできた赤ちゃんイエス様で、余計に欲しかった。今まではマリアや羊のフェーブだったので、余計に悔しくなった。
「でもさ、イエス様の愛は不変だ。こんなフェーブじゃ愛ははかれないぞ」
涙目で悔しがっていたが、王冠をかぶった兄に慰められた。
確かに兄の言う事も一理ある。
「こんな風にケーキ食べられるのが、一番幸せよ。それに聖書のぶどう園の例え話を見ると、遅くても良いかなとも思うし」
姉はこの隙にケーキをとり、もぐもぐと食べている。その顔は本当に幸福そうだった。
「だな。家族一緒なのが、何よりだ」
「そうよ。あんただっていつか嫁に行くんだからね」
父と母にまでそんな事を言われてしまい、悔しい気分も失せてきた。
「そうだね。お兄ちゃん、王様おめでとう!」
私も笑顔で祝福する。
確かにイエス様のフェーブも欲しかったけれど、今の時間が一番の神様からの贈り物の気がした。