二回目のマンデルン
子供の頃、両親と祖母と一緒にドイツへ旅行に行った事がある。もう遠い昔の事なのでほとんど忘れてしまっていた。それでもマーケットで食べたお菓子は三十年以上もたった今でも覚えていた。
マンデルンというアーモンド菓子だ。クリスマスのマーケットでよく売られているらしい。確か私はドイツ旅行したのもその時期だった。
マンデルンは、一言でいえばキャラメリゼしたアーモンドのお菓子。見た目は茶色い石みたいで地味だったが、食べるとシナモンの風味もし、やみつきになった。カリカリ食感も後を引き美味しい。
クリスマス時期になるとあのマンデルンの味を思い出すが、日本には売っている所は見た事がない。
似たようにピーナッツをキャラメリゼしたものは食べた事があるが、ちょっと違う。そもそもピーナッツとアーモンドは別物なので仕方ない。
だったらドイツに行けばいいと思うが、私には夫がいる。夫は持病もあり、旅行に行ける状況でもなかった。
クリスマスが近づく十二月。何とかしてマンデルンを入手できないかとインターネットを調べていると、動画サイトに作り方が掲載されていた。
動画を見る限りは、難しい菓子でもない。家にある調理器具で作れそうだった。
さっそく作ってみる事にした。砂糖やシナモンパウダーでキャラメリゼを作り、アーモンドに絡めていくだけだが、案外火加減が難しい。
フライパンに焦げ付く恐怖を感じながらも、何とかアーモンドに衣がついてきた。甘い香りに、つまみ食いしたい衝動を堪える。
「何とかできた?」
火加減は難しかったが、何とか焦がさず完成したようだ。
クッキングシートに出来がったマンデルンを広げて、冷やす。これで全て出来上がりだ。
「何だこれ、やみつきになるな」
出来上がったマンデルンは、夫と二人で食べた。正直、ドイツで食べたマンデルンとは違う味だったが、夫はとても喜んでくれた。
二回目のマンデルン。あの味の再現は難しかったが、それでも嬉しい。
三回目は、クリスマスイブにでも作ろうか。夫はすっかりマンデルンの虜になってしまったようだから。夫の為にマンデルンを作るのも楽しそうだ。