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神様とキャンディケイン

 毎年、クリスマス時期が近づくと憂鬱だ。


 夫はイブも仕事が入ってしまった為、二十ニ日に一緒に食事をしていた。


 結婚前、二人でよく行った小さなイタリアの店でピザやパスタも最高の味だ。店員からも丁寧に接客を受けるが、店内に飾ってるツリーやクリスマスカードを見ていると気分が沈む。


「春香どうしたよ? もしかしてあの事気にしてる?」

「いえ、そうじゃないけど」


 夫は私の表情を見て誤解した。最近、病気が見つかり、子供を望めないと医者に宣告された。夫はその事を気にしているようだっが、それは勘違いだった。


 そもそも幸せな子供に育てる自信もない。大学生ぐらいになる頃には、もう子供を作りたくないとも思っていた。


 正直結婚もしたくないので、看護師の資格をとりバリバリ杜仕事をしていたが、夫と出会ってしまい、三十で結婚してしまった。二年前の話だ。


 夫婦二人での生活は幸せだったが、子供の頃の記憶は消せない。


 両親はとあるカルト教団にはまり、子供時代はろくでもない記憶ばかりだった。キリスト教系にカルトだったので、教団でもクリスマスを祝ったが、子供同士でいじめに発展した事もあった。それでも両親は「罪があるからいじめられるんです。小遣いもお年玉も献金しなさい」などと言われ、貯金箱の中見を全部とられた。


 そんな事をしても特にいじめは終わらなかった。逆に祈りが足りないからそうなったと難癖もつけれた。


 両親も何千万と献金し、家計はいつも酷い状態だった。


 そんな事も思い出し、クリスマス時期は憂鬱になる。つい先日もカルト被害者が政治家を暗殺した事件もあったが、同じような被害者から同情の声も多いらしい。私はそんなニュースを見てさらに憂鬱になった。


「ごめん、ちょっと気分悪いわ」


 憂鬱の心ともに身体も気持ち悪く、頭痛もしてきた。一人、店を抜け出し、夜風にあたる。


 店から少し歩くと光に彩られた街があった。この時期の街はいつも派手だ。大きなツリーも飾ってあり、キラキラと光で輝いている。


 子供の頃のことを思うと憂鬱だが、本当に神様はいるのだろうか。


 カルトでは献金と祈り、断食をしなければ地獄に落ちると脅されたが。結局宗教というものは、良い行いを強制されるもの。金持ちや良い行いを出来る精神が強いものだけが得できるようで不公平だ。そこに救いがあるのかわからない。


 そんな事を考えずっと輝くツリーを眺めていたら、幻を見た。夜だったが白昼夢のようだった。


 幻の中の私はずっと暗闇を彷徨っていた。その目の前に光るキャンディケインが現れ。


 藁もつかむ思いでキャンディケインについくと、暗闇から脱出する事ができた。


「え、なにの幻……? 夢?」


 こんな幻に呆然としていると、夫が追いかけてきた。


「なに? 何があった?」

「信じて貰えないと思うけど」


 私はこの幻について説明していた。


「そのキャンディケインって神様じゃね?」

「えー?」

「キャンディケインってアルファベットのJに似てるじゃん? Jesus Christを意味してるって説がある」


 夫はツリーに飾れているキャンディケインを指さす。心なしかさっきよりキャンディケインは輝いて見えてきた。


「西洋の神様のイメージがあるけど、全知全能の神だ。春香の事も見捨ててないって事じゃないか? うん、本当の神様は、良い行いとかお金とか求めないんだよ。ただ助けてくれるもんだよなぁ。大丈夫だよ、子供なんてなくても夫婦で楽しく暮らそうか」

「え、ええ……」


 夫はまだ誤解したままだったが、ツリーのキャンディケインを見ていたら、少し泣けてきた。


 子供の頃の嫌な記憶は完全に抜けないけれど、今日だけは隣にいる夫と幸せを感じていた。


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