赤い百合の花言葉
鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?
そう問いかけくなるぐらい、有紗は鏡を見つめていた。
「自分で言うのもなんだけど、私って綺麗よね」
うっとりしてしまう。
実際、他人から美人だと言われる事も多く、モテていた。有紗はこの自分の美しさが誇りだった。整形も何もしていない天然というのも、自尊心をくすぐる。
今の時期はクリスマスが近づいてきた。何か知らないけれど、ファンの人からクリスマスコフレをいっぱい貰い、余計に嬉しい。有紗の周りにはファンクラブのようなものができていた。
だからと言ってモデルや芸能界を目指すつもりはない。あそこまで高みを目指すと病みそうだ。この美貌を一番活かせる庶民的世界にいるのが、最善だと思われた。
たまにストーカーみたいのや嫉妬してくる中途半端なブスはムカつくが、やっぱり恵まれた容姿は嬉しいものだ。
ファンの一人に有紗様は女神と言われたが、自分でもそう思っている。こんな美しい容姿は神じゃないの?
そう思うと、有紗の自尊心は限りなく満たされていく。
何枚も自撮りを撮り、SNSにあげるといいね!もいっぱいきた。本当に私ってすごい。女神よ。私を見て。そんな思いに胸がいっぱいになった。
そんなクリスマスも近づく12月中旬。ファンの一人から花束をもらった。
真っ赤で美しい百合だった。これは、自分に相応しい美しい花だ。有紗は満足して甘い百合の花を飾る。
しかし、ファンも有紗もこの花言葉の意味は全く気づいていなかった。
赤い百合の花言葉は「虚栄心」だという。
クリスマスの主役であるイエス・キリストが十字架にかけられた時、赤い百合だけは自分の美しさを誇っていたらしい。しかし百合はキリストに出会い、自分が思い上がっていた事に気づき、真っ赤になって俯いたという逸話がある。
そんな逸話からその花言葉は「虚栄心」と言われているのだが、有紗は全く気づいていなかった。
「私を見て!」
有紗は再びSNSに自撮りをアップしていた。