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クリスマスのお弁当

 一人での食事がつまらない。


 貴子は旦那を亡くし、息子も独立したので、一人暮らしだった。


 年金暮らしだが、最近膝が痛く病院へ通っていた。


 幸い、他の健康問題はないが、老いは身近な問題だった。認知症なんて言葉は、かなり身近。友達や親戚でもなった人がいる。


 料理は一応毎日やってるが、そのうち出来なくなる日が来るかもしれない。


 そんな事を考えながら食べる食事は、美味しくはなかった。


 生きてる間は夫と色々あったが、やはり寂しい。それに今日はクリスマスイブか。年寄りにはクリスマスなんて関係ないが、街中の煌びやかな様子は嫌いではない。


 少し散歩でもしてみる事にした。今日は膝に調子もいい。医者からも家にずっと籠るのは良くないと言われていた。


「さむ」


 外に出ると十二月の空気が頬に刺さる。さっそく散歩に出たを後悔したが、サンタのコスプレをした子供達とすれ違った。


「おばあちゃん、ハッピークリスマス!」


 近所の子供だろうか。そんな事を言われてしまうと、少し嬉しくなってしまう。


「ええ。ハッピークリスマス」

「じゃあね!」


 子供は親に方へ走って行ってしまった。その方角を見ると……。


 スーパーがあった。新しくできたスーパーのようで、貴子は行った事がない。


 さほど大きなスーパーではなく、一階建。大手チェーン店でもなく、聞いた事がない名前だった。


 特に買うものはないが、新しい店は気になる。貴子は、ゆっくり歩きながら、そのスーパーへ向かった。


 初めてくるスーパーで、ちょっと迷いそう。入り口のサービスカウンターでチラシや地図などをもらう。


 チラシを見ていると、このスーパーは本社は外国にあるらしい。独自な品揃えやサービスもやっているという。確かにパッと見た感じは、輸入食品系も多いようだ。クリスマスイブなので、チキンやピザ、ケーキなども目立つところで売られていたが。


 また、イートインスペースが広く、カフェのようなおしゃれな雰囲気だった。食事だけでばくおしゃべりをしている客も多いようだ。チラシによると、このスーパーでは高齢者の為にイートインスペースで傾聴サービスもあるらしい。傾聴はボランティアがやっているようだが、気になる。本社で取り組んでいるサービスのようだが、地域活性化や高齢者の健康に繋がっているという。


 確かに良い取り組みだ。貴子も一人での食事が嫌になっているところだった。


 まず、何か食事を買うか。気づくと時計を見ると、昼に近い。


 クリスマスなので、チキンやピザも多いようだが、お惣菜コーナーはお弁当やお寿司もある。


「これは、美味しそうね」


 クリスマス限定のお弁当があった。ハンバーグとご飯の弁当だが、チーズが星形に切り抜かれ、クリスマスらしい。ブロッコリーやプチトマトの色合いも良いではないか。パッケージにも「メリークリスマス!」という可愛いシールが貼ってあり、久しぶりにワクワクしてきた。


 さっそくこの弁当をレジで買う。クリスマスイブという事でレジは混んでいたが、お弁当を食べる楽しみな時間が増えたと思えば、心は軽くなる。


 レジでの会計が終えると、イートインスペースへ行き、傾聴サービスを頼んで見る事にした。


 初対面の人と話すなんてドキドキするが、悪い刺激ではなかった。むしろ、脳が生き返ったよう。


 ボランティアは女性で、大学生ぐらいだ。正直、その若いエネルギーに飲み込まれそうになるが、いい刺激になっていた。


「貴子さん、そのハンバーグ美味しい?」

「ええ。何だかとっても美味しい」


 星形のチーズを食べながら言う。


 こんなクリスマスの過ごし方も悪くない。近所のスーパーだが、ちょっとしたアトラクションがあるような場所にも見えてくる。


 貴子の心は、ふわりと軽やかになっていた。クリスマスだからかもしれないが。またスーパーにまた来よう。新たな楽しみが出来たようだ。

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