子どものクリスマスケーキ
母の誕生日は、ちょうどクリスマスイブだった。
母に誕生日とクリスマスプレゼントをあげたいと思った私は、ケーキを作る事にした。
といっても小学生の私に火を使う事は、許されていなかったので、スーパーでスポンジケーキ、クリーム、イチゴなどを買い、デコレーションする事にした。もちろん、材料費は去年のお年玉やお小遣いだ。
「あれ? なんか上手くできない……」
お店のようなデコレーションケーキを想像していたが、出来上がりはよくない。クリームはベタベタ塗っただけという感じ。イチゴやチョコレートを飾ってはみたが、雑というか、適当感が滲み出てしまう。
「ママ、ごめんなさい。あんまり綺麗に出来なかった」
その夜、母の誕生日兼クリスマスパーティーを開く。テーブルの真ん中には、不恰好なデコレーションケーキがあり、恥ずかしい。結局、お店にあるようなものは出来なかった。母が用意したチキンやグラタンなんかはお見た目もよく、美味しそう。居た堪れない。
「そんな事ないぞ。俺はこのケーキ好きだ」
父は慰めてくれたが、泣きそうだ。
「私も好きよ」
「どうして?」
信じられない。
「あんたが作ってくれたケーキだから好きなのよ。上手く出来なくても、そうじゃなくても無条件に嬉しいもんよ」
「そうだぞ。そもそもクリスマスで祝う神様だって、無条件の愛のお方だ」
そんなもの?
信じられないが、こんな風に受け入れられた事は嬉しかった。
クリスマスが近くなると、そんな事を思い出す。現在、私は主婦。毎日料理を作る。献立や栄養バランス、味付けに悩まされる。家族から文句を言われる事も少なくない。
それでも、あのクリスマスを思い出すと、頑張って料理もできそうだ。
あの日、無条件に受けられた事が私の支えになっている。
「さあ、ご飯できたわよ」
今日も家族と一緒にご飯を食べる。ありふれた幸せだが、かけがいのない時間だ。