クリスマスのブックカバー
物が捨てられないのが、美帆の悪い癖だった。特に保冷剤とか割り箸とか無料で貰えるものを溜め込んでしまい捨てられない。「もったいない」と思う。ケチ臭いのだ。
まだ独身の美帆だが、主婦っぽいところがあった。そういえば母も物を溜め込むタイプだった事を思い出す。今は離れて暮らしている。美帆は一人暮らし中だが、その性質は遺伝されてしまったようだ。
時は年末。クリスマスも差し迫る慌ただしい季節だったが、美帆は掃除をしていた。
ケチ臭い自分を反省し、保冷剤の断捨離から初めていた。
心境の変化があった。マッチングアプリでいい感じの男性と知り合い、自分磨きも頑張りたいと思ったのだ。
その彼とは何も進展していない。クリスマスもデートの予定があるが、今のところは友達以上恋人未満な状態だった。
正直、この時期が一番楽しい。心がふわふわ浮き立ち、前向きだ。
という事で掃除も頑張っていたが。
「な、何でこんな紙袋を溜め込んでたの? 私……」
掃除をしていたら、紙袋はいっぱい出てきた。去年のクリスマスコフレやカフェチェーンの紙袋ばかり。カフェチェーンのは、いつものと違いクリスマスデザインで捨てずに取ってたらしい。
確かにこの紙袋は可愛い。サンタやトナカイ、雪だるまのデザインも魅力的だが、数が多過ぎる。
「捨てるのも何だなぁ。だからって紙袋なんて使わないし……」
何か紙服をリメイクできないものか。やっぱりデザインが可愛いので、全部捨てるのは辛い。
ネットで検索すると、紙袋からブックカバーにする方法が載っていた。良いアイデアだ。さっそくやってみる事にした。
道具は定規とハサミだけでできるので簡単そうだ。実際、簡単にブックカバーは完成し、可愛い仕上がりだ。
こんな風に変身できるになら、リメイクのしがいがあるものだ。
それに久々に手を動かしていたら、楽しくなってきた。
せっかくブックカバーも作ったし、ゆっくり本でも読むか。たまには教養のつく語彙や歴史の本でも読もう。
いつも彼氏がいるモテる女性は、きっと馬鹿じゃないし、あの彼に釣り合いような女性になる努力も悪くない。
さっそくブックカバーをかけた本を開く。
クリスマスまであと少し。こんな風に過ごすのも悪くないはずだ。