クリスマス限定ココア
クリスマスだが、今日も勉強だ。
僕は大学生だが、周りのように遊びたい気分はない。しっかりと堅実に生きたい。今は簿記二級やトイックの資格試験準備の為に頑張っていた。
今日はショッピングモールの書店に行き、資格関連のテキストを買う。書店もクリスマツリーやリースで綺麗に飾られていたが、気を緩めてはいけない。漫画やライトノベルコーナーを無視し、資格本コーナーへ直行した。
「メリークリスマス。今日はフェアでチョコを配っているので、どうぞ」
書店の店員から小さなチョコをもらう。
「ありがとう」
しかし、クリスマスだからといって浮かれるわけには行かない。気を引き締めなければ。
こうして書店を出ると、フードコートへ向かった。少し喉が渇いたので、一休みしよう。
フードコートという庶民的な場所でも、カップル率が高い。書店はそれほどカップルはいなかったが……。
「たっくん、私幸せ〜」
「うん、俺も」
フードコートでも人目を無視しイチャイチャしているカップルがいた。ガムみたいにベタベタしている。見ているだけでゾワゾウしてくる。
二人はファストフードの甘いココアを実に美味しそうに飲んでいた。その表情は、悪意もなく幸せそうだ。
「まあ、今日ぐらいいいか」
普段だったら街中のカップルにイライラするだろうが、今日ぐらはスルーしてもいいかもしれない。
僕もファストフードの方へ行き、ココアを頼む。クリスマス限定でカップにサンタクロースのイラストがついていた。
フードコートで甘いココアを啜りながら、カップルの幸せそうな表情を見る。
僕は資格勉強の方が大事だし、クリスマスだからって浮かれる気はしないが。
それでも今日ぐらいはいいか。今日だけは不思議と懐も広くなっていた。
甘いココアを再び啜る。身体もすっかり温まってきた。
さあ、今夜から資格の勉強も頑張ろう。皆んなが遊んでいる時こそ、差がつけらるというものだ。やる気も出てきた。
クリスマス限定のカップのサンタクロースと目があう。彼の笑顔を見ながら、背中を押されている気がした。