表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/107

チョココロネのツリー

 騙された。自分は馬鹿としか言いようがない。


 12月初旬、婚活パーティーで知り合った男と付き合いはじめた。もうすぐクリスマスだし、焦っていた。


 相手はイケメンで医者。スペックは最高だった。自分とマッチングした事に違和感がありつつ、そのスペックに惹かれてしまった。


 クリスマスまでは忙しいから会えなかった。その分、メッセージアプリで楽しい会話をしていたが、それは自分だけだったかもしれない。


 クリスマ当日、相手に連れて行かれたのは、投資セミナーだった。単なる投資セミナーではなく、ちょっとカルトっぽい自己啓発もやっていて、怖くなってすぐ逃げた。相手の男もおそらく詐欺目的で自分を誘ったようだ。医者というのも嘘だろう。


 しかし、自分も完全なる被害者とも言えない。相手の表面的なスペックに惹かれた結果だった。要するに欲に逆らえなかった自分にも大いに問題があり、被害者ぶる気になれない。幸い、何も取られてはいないし……。


 そう自分を納得させたが、クリスマスにこの仕打ちは悲しい。自分が悪いとわかっているので、余計に惨めだ。


 街を歩くカップルは幸せそう。家族連れや学生のカップルも楽しそう。


 本当に惨めだ。


 こんな気分ではクリスマスケーキなどを食べる気分にはなれず、チェーン店のベーカリーに入る。


 おそらく冷凍のパンなので、いまいち美味しくない店だが、クリスマスの商品もいくつか売られていた。シュトレンやチョコレートケーキなどが人気そうだが、一人で食べられる文量ではない。


 そこでチョココロネに目がとまる。ツリーのように立たせ、てっぺんには星形のクッキーがデコレーションされていた。小さなツリーだ。手の平のサイズで大きくはない。


 それでも今の自分にはピッタリのツリーに見え、トレイに載せる。


 今は良いが、来年はこのチョココロネのツリーは食べたくないかも。


 その為には、もう少し自分を成長させたい。少なくともこんな風に騙されるのは、今年で最後にしたいと決意する。


 星形のクッキーがキラッと光って見えたような。


 それは気のせいだと思うが、この決意は間違いないと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ