町内のサンタさん達
子供のクリスマス会に来ていた。会場は町内会町さん家。町内会町さんは、意外と金持ちで広々としたリビングがあるので、子供が十数人いても狭くはない。
しかし、退屈なクリスマス会だった。
プレゼント交換は、文房具や手袋や靴下ばかりだし、食べ物も小さなケーキだけ。飲み物はサイダーやコーラもあるが、田舎の子供達で集まっても特に盛り上がらない。
ゲームもやったが、負けてしまった小さな子は泣き出すし、町内会長さんも困っていた。
現在、小学五年の私だが、幼稚園に戻った気分にもなり、さっさと帰りたい……。
しかもクリスマスのビデオも見た。これがキリスト教の神様の誕生シーンのアニメだったのが、退屈すぎて眠い。とりあえず時間潰しに流しているアニメという感じで、面白くない。学校でも時間潰しによくテレビの教材を使うが、あれも退屈だった事を思い出す。
アニメによるとキリスト教の神は、粗末奈家畜小屋で生まれたたしい。神なのに赤ちゃんとどてやって来たのは、人々に敷居を下げる為でもあるらしい。
「社長が平社員の工場へ来るようなものかな?」
隣にいる松本くんは、頭がいいので一言で説明してくれたが、眠い。やっぱりどう考えてもこのクリスマス会は退屈だった。
そんなアニメが終わると、サンタクロースがはってきた……。
誰だかすぐわかる。町内会長さんと、書店屋の橋野さん、それに私の父がサンタのコスプレをしていた。
「みんなクリスマスおめでとう!」
父たちはやたら高いテンションで、クッキーやバームクーヘンを配るが、子供たちはしらけ顔。さっきまで泣いていた小さな子だけがキャッキャと喜んでいるぐらいだ。
「でもさ、大の大人がこんな風に頑張ってサンタさんしてると思うとさ……。空気読んであげよう?」
松本くんは、大人たちに合わせて拍手をし、盛り上げていた。
松本くんの言う事にも一理ある。ここは空気を読み、サンタに喜ぶ無邪気な子供になるのが正解だろう。
頑張って盛り上げている大人達を見ていたら、誰かの為に働くのも悪くない気もしてくる。
とりあえずメリークリスマス。
ちょっと、いや、だいぶしょぼいクリスマスパーティーだけれど、楽しまなくちゃ損だ。私も笑顔でこのクリスマス会を盛り上げていた。