待ちきれないクリスマス
テーブルの上にはお菓子のゴミ。それに二十四日まで全部開けられてしまったアドベントカレンダーがある。
お菓子入りのクリスマスのアドベントカレンダーでリビングに飾っていたはずだったが、誰かが中身を全部開け、お菓子も食べてしまったようだ。
これは息子二人の為に買ったものだった。一日一回だけ、中身のお菓子は兄弟二人で分け合う事を約束していたはずだが。
まだ日付は十二月十八日だ。昨日まではそのルールが守られていた。
「一体、誰がこのアドベントカレンダー中身開けちゃったわけ?」
まあ、犯人はやんちゃな次男の可能性が一番高いだろう。小学二年生だが、まだまだ子供だ。
帰ってきた次男にアドベントカレンダーを見せながら問い詰める。
「知らないよ」
「え?」
「本当に知らないって」
次男はやんちゃだが、嘘をつくタイプではない。本当に何も知らない様子だった。
「たぶん兄ちゃんだよ」
「え、そう?」
町内は優等生だ。小学五年生になるが、運動も勉強もそつなくこなす。ただ、少し冷めたところがあり、可愛げはない。「サンタなんているわけない」などと昔から言っていた。クリスマスに関しても「クリスチャンでも無いのに祝うのはおかしい」などと言っていたが。
「これ、もしかしてあんたがやったの?」
町内が帰ってきたので聞いた。すると、長男の目が泳ぎ、下を向く。どう見ても町内が犯人だった。あんなににサンタやクリスマスについて冷めた発言をしていた優等生が顔も真っ赤。
「だってクリスマスが楽しみだったんだ。こんなチマチマしたアドベントカレンダーなんて待ちきれないって!」
ついに長男の口から本音が漏れる。意外な一面び私も次男もニヤニヤしてしまう。
「まあ、兄ちゃん。そんな恥ずかしがるなって。クリスマスはみんな楽しみだ」
「う、うん」
次男に慰めている長男は、もっと顔が真っ赤になる。顔から火をふくという言葉通りだ。
「でもクリスマスを楽しみにしてくれるなんて嬉しいよ」
一応正直に犯行を告白したので、この件は水に流しとするか。
私も家族で過ごすクリスマスが楽しみになってきた。ケーキも予約済みだし、ツリーも綺麗に飾ってある。
アドベントカレンダーは、もうなくなってしまったけれど。
数日後に始まるクリスマスを思い巡らしながら、胸が高鳴っていた。