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断捨離とマフラー

 断捨離しよう。


 最近は彼氏に浮気され、喧嘩に発展し、クリスマスの予定もキャンセルとなった。仕事もイマイチだし、ここで何かアクションを起こしたいと考えた時、断捨離がピッタリだと思った


 そんな敬子はアラサー。一応一人暮らしはしているが、実家の近所のアパートに住んでいる。あまり「子供部屋おばさん」を笑えない立場だ。断捨離を頑張ってみようと思う。


 まずは要らないものから捨てていく。使ってないコスメとか見ると心がチクチクしてくる。逆に初ボーナスで買った時計なんかを見ると、やる気も出てくる。


 部屋は心の状態を表すというが、ゴミを捨て初めてから、ちょっと楽しくなってきた。完璧に「ときめくもの」だけでは揃えられないが、空いたスペースにクリスマスの飾りつけでもしてみようか。最初は憂鬱だった敬子も掃除をしながら笑顔が増えてきた。


「これは、なんだ?」


 最後は洋服の整理だ。着ていないシャツやコートなどをどんどん捨てていくが、衣装ケースの奥にマフラーがあるのに気づく。


「わあ、懐かしい……」


 緑と赤のマフラーだった。数年前のクリスマスに元彼から貰ったものだ。彼はなぜか手芸好きで、こういったハンドメイドのものが好きだった。趣味は女性的だったが、性格はむしろ男っぽい。編み物をしていると無心になるから好きだと言っていた。敬子と付き合うぐらいなので性的な傾向もノーマルだった。


 最近の性的な傾向の問題はよく目にする。何だか逆に「女らしさ」「男らしさ」にこだわっている感じもする。あの元彼が何か誤解を受けている様子は、想像できてしまった。


 とはいえ、このマフラーには何の罪もない。だからと言ってとって置くのも微妙だ。


 考えた末、写真だけ撮って現物は捨てる事にした。


 触ると暖かく、まだ役目を果たしそうなマフラーだったが。


 思えばこんなプレゼントを貰う事は、後にも先にも無いだろう。子供の頃に両親や祖父母から貰ったプレゼント、大人になってから友達や上司から貰ったプレゼントを思い出す。


 最近は不運で、悲劇なヒロインのような気分になっていたねれど。思い返してみたら、自分は幸せだった。恵まれていた。


「ありがとうね」


 最後にお礼を伝え、マフラーをゴミ箱に送る。触ると暖かいが、今は別れを告げる時だろうと思う。


 少し寂しい気持ちはあったけれど、心は軽くなってきた。


 まずは彼氏と仲直りしよう。自分も少し言いすぎた面もあると気づく。


 今年のクリスマスは優しい気持ちで迎えられそうだ。

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