クリスマスの願い事
十二月になった。
陰暦だと十二月は師走だ。仏教の師が忙しく走り回る事に由来するらしい。
クリスチャンでもある私。敬虔な人に師走と言って怒られた事があるが、日本語は案外仏教由来の言葉も多いようだ。
今年のクリスマスイブは、日曜日にあたる。午前中に日曜礼拝、午後からイブ礼拝をする。二本立ては初めてなので今から楽しみ……。
いや、そうピュアに楽しみではない。先月、医療費がかさみ、お金に余裕がない。息子の高校受験も近づき、ソワソワとする。この問題は自分ではどうにも出来ないので、余計にもどかしい。
という事で息子が偏差値の高い私立校に受かる事や年末年始に臨時収入がある事などを祈る。
「できれば三億円ぐらい欲しいです、神様。アーメン」
などと祈ったりしていた。
こうして近所のショッピングモールへ買い物へ出かける事にした。息子の為に電気毛布でも買ってやりたい。
クリスマスに近い為か、モール内もツリーやリースなどで飾られている。雑貨屋や洋服屋もクリスマスセールをやっているらしい。当初の目的を忘れて、クリスマス商戦に乗っかってしまいそうだ。
モールの中央広場では、珍しいツリーがあった。普通のオーナメントではなく、七夕の短冊のようなものが飾ってある。どうやら「クリスマスの願い事を書いて飾ろう!」というイベントをやっているらしかった。テーブルや椅子、ペンも用意され、自由に書いてこのツリーに飾っていいらしい。クリスマス版七夕飾りといったところか。短冊といっても形はメッセージカードのようで、ツリーに飾られても、あまり違和感はなかった。
チラリとツリーに飾られた短冊の願い事を見てみた。
「十億円欲しいです」
「楽して痩せたいです」
「ハイスペ彼氏ください」
「彼が奥さんと別れますように」
そんな強欲な願いが目に入る。
居た堪れない気持ちになってきた。自分がした神様への祈りも思い返す。恥ずかしい。そんな祈りを聞かされた神様の心境を想像すると、さらに心が重くなってきた。よりによってクリスマス時期にする祈りではなかったよな……。
「そうだ」
私も短冊を書いて飾った。
みんなが幸せなれますように。イエス・キリストの御名によってお祈りします。アーメン。
そう書いてみた。
アーメンとか書くのは、少々恥ずかしいが。クリスマスぐらいは、そんな気持ちで祈りたいと思う。