二人のクリスマスセーター
十二月十二日はアグリー・クリスマス・セーターの日。
この日は悪趣味なクリスマスセーターを競う日だ。悪趣味であればあるほど良い。日本では馴染みが無いが、アメリカではコンテストが開かれているほどだ。日本でもテレビアニメ「ポプテピピック」とコラボグッズがあり、注目されつつある日だった。
これを知った翠は、彼氏の裕也にダサいセーターを競う事を提案。同じ大学に通う二人だったが、先月の十一月に付き合い始めたばかり。お互い初彼氏と初彼女で初々しいというのもあったが。
クリスマス前の十二月半ば、大学の学生食堂で待ち合わせをする。翠はネット通販でダサいセーターを見つけ着ていた。赤と緑のチェック柄で、丈も長すぎる。衿元にゆるキャラのような顔のスノーマンもいて、ダサい。もっとも今の大学生はSNS慣れして冷めている。こんな翠のダサい服装もスルーされていた。
「裕くんどんなダサいセーター着てくるんだろ」
ワクワクしながら待っていると、目の前に裕也が現れた。
想像以上にダサいセーターを着ていた。赤字の生地に緑色の文字で「クリスマスたのしみ」と書いてあり、ダサい。
本当にダサい。ダサいのだが、こんなセーターを着てドヤ顔している彼も可愛いな……?
「翠、意外と可愛いよ?」
「うん、裕くんも意外と可愛いね……?」
お互い戸惑いながらダサいセーターを見つめる。結局どっちがダサいセーターなのか決着はつかず、お互い可愛いという結論になった。
「じゃあ、カフェでも行こうか?」
「うん!」
ダサいセーターを着ている彼も好き。別にイケメンだから好きになったわけでもない。
「裕くん大好きー!」
「俺も!」
イチャイチャしながら歩く二人だが、クリスマス時期ぐらいは仕方がないという事で大目に見られていた。
二人で過ごすクリスマスは、何をしても楽しい。どんなダサいセーターも愛おしかった。